私がサカズキ大将の部隊に配属されてから3ヶ月が経過した。
次に向かうのはクザン大将の部隊だ。
「大変お世話になりました」
深く深く下げた頭の上に添えるように置かれた手のひら。見た目とは反した優しい力加減で撫で付けられて吃驚して顔を上げると目の前に差し出されている何か。紙袋に入っているそれを受け取る。
「あの……これは?」
その場で開封すべきか、迷っていたら「次で役に立つじゃろう」と、そう言った大将に急かされるように追い立てられる。
「では、えぇっと。そのう……」
「同じフロアにいるんじゃから、そんな顔をせんでもええ」
「あっ、ですね!」
今生の別れのように見てしまった自分が恥ずかしい。よく考えれば三大将の部屋は同じフロアにあるので会うことが多いというのに。現にクザン大将の部屋はここから近く、時折すれ違う。
頂いた紙袋を大切に抱えて、今一度を頭を下げる。
「ではそろそろ……お世話になりました……」
それでもやっぱり別れ際は寂しさを感じてしまう。3ヶ月という僅かな間であったけれど、学びの多い密度の高い時間だった。――本当にあっという間だった。
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「これから3ヶ月、お世話になります!」
「ん? あ~はいはい。よろしくね」
打って変わって場所はクザン大将の執務室。クザン大将には何人かの秘書がついているらしく、どなたも忙しく飛び回っているらしい。
「秘書は基本的には傍にいないんでね。専らやりとりは電伝虫か手紙でやっていてね」
「そうなんですね……」
「なまえちゃん」
「はい」
「サカズキのところじゃァ、ナニしてたの?」
「えぇと、書類作成や掃除、あとは議事録の作成、とかですね」
「ん、なるほど。ここじゃあその必要はないな……」
「もしかして私、用済みですか?」
「いいや……使い道は、ある……かな」
意味深な発言に首を捻る。秘書以外に私にできることがある気はしないけれど……一体何をさせられるのだろうか。
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「あのう……本当にいいんですか? ガープさんの許可は取りましたか?」
「……いやァ~快晴快晴! 出航日和だなァ~」
「……」
連れてこられたのはクザン大将が所持している隊の船の上。一体何をするのだろうか、と大将と話し込んでいたらいつの間にか大海原の中にぽつんと一船だけになっていた。
「俺はさァ……」
「?」
「専ら足を使うタイプなんだよね。そこで、だ。さっそくなまえちゃんの力を借りたいと思う」
「…………こんなことしなくても、はじめからそう言って頂けましたら協力しますよ?」
「あらららら~、本当に?」
「えぇ、……はい」
「…………俺の恋人役をやってって言っても?」
「…………はい?」
だからクザン大将はここに私を連れてきたのか。こんな話が隊外部の誰かの耳に入りでもしたら、それはもう大騒動(特に父が)になる。だからこの人は……辺りを見回す。側に控えている隊員はすべてにクザン大将の息がかかっているに違いない。素知らぬ顔をしながらも、意識がこちらに向けられているのが肌の感覚で分かった。
「もちろん断っても…「分かりました」…え、いいの?」
「……はい。あくまで『役』でよければ、お付き合いいたします。これでも海兵ですから……」
「そうこなくっちゃね!」
「……お手柔らかにお願いします」
「大丈夫だよ。絶対に退屈はさせないから」
3ヶ月の間、よろしくね――こうして、私とクザン大将は3ヶ月の間だけ恋人同士になることになった。
「ガープさんにはくれぐれも……」
「当然です。私だって怒鳴り込まれるのはごめんですから……」
「あらららら~。苦労してんのね、君も」
「父親があの人ですよ? 苦労しない方がおかしいです」
「プッ、はははっ!!!! 確かにね!」
改めてよろしくね、と軽い握手を交わす。さてさて、では具体的にどういった話なのか話すから、中に入ってくれる? と船長室に誘導されながら腰に回ってきた手を思いっきり抓る。
「あ・く・ま・で、役なんで。そこははき違えないでくださいよ?」
「お~~こわこわ。でもね、そうも言ってられないかもよ?」
「…………?」

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