Momonga Root 2/2

あのやりとりの時点で気づくべきだった。なぜ中将の相手をした人が泣いてしまうのか、それはすぐに分かった。中将は人が悪いことにとても優しくて、丁寧で、それでいて、なんでも口に出す。どんなに恥ずかしいような台詞でもだ。いざ自分が耳元で言われ続けてみてみると分かる言葉責めの怖さ。綺麗、かわいい、美しい。そんなの当たり前で……もっとすごいことをサラサラと……あぁ、思い出すだけで恥ずかしい。恥ずかし過ぎる。思い出したら恥ずかしくて、思わず顔を両手で覆ってしまう。

「なまえ?」
「中将……あなたはひどい人です」

「おい、お前まで泣くのか……」
「だって、だって……っ」

「頼む、泣かないでくれ」
「っ……無理ですよ」

だって、あまりに中将が優しいから。幸せ過ぎて涙が勝手に出てきてしまうんです。ほら、またそうやって、悪かったなんて言って抱きしめてくれて。もう、優しすぎます……
 
 
 
 
 
 
 
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朝になって正義のコートに続いて甲板に出た。迎えの小舟がこちらに着くまでの間、私と中将は横に並んで海をじっと見つめる。

「なまえ、お前はずっとここにいるつもりか?」
「……はい、今のところはそのつもりです」

「何か事情があるのか?」
「う~ん。そうですね。あります」

「では、その事情が解決することはあり得るのか?」
「……なくはないです。私の気持ちの問題ですから」

「……そうか」

そう言うと、隣に立つ中将がこちらを向いて言った。

「また来る」
「はい。是非、また来て下さいね」

グシャグシャッと私の頭を撫でた中将は小舟に乗り去っていった。

「どうしよう。私あの人のこと好きになるかもしれない……」

だけど、それはまだ先の話。

 
 
 
 
150810 End.
 
 

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