大人げない自分に腹が立ってきた。

「なぁ……」

「なぁ……って」

せっかく気持ちよく静かに手入れしていたっていうのに。

「なぁあ!!」

急に部屋に入ってきた例の問題児に邪魔された。

「…………うるさいな、もう」
「呼んでんだろ。無視するな」
「生憎、私の名前は”なぁ”って名前じゃないもので」

船にある武器庫は人の出入りが少なくてひとりになるにはちょうどいいところで、今までは誰にも邪魔されずにのんびりできていたっていうのに。

座っていた木箱の側に歩いてきた彼を睨みつけた。

「……悪かった」
「……何、気持ち悪いぐらい素直ね」

彼は黙り込んだ。その様子を横目に見ながら肩を落として、息を吐き出す。止まっていた手を動かして、愛用の銃の手入れを再開させた。トン、とひとつ隣にある木箱に背中を預けた彼が小さく口を開いて言った。

「なまえはどうしてここに?」
「……それ、答えないとダメ?」
「……いいだろ。片手間に答えれば」
「……あんたに言いたくない」
「……んだよ。俺のことは知ってる癖に。俺だって知る権利ぐらいあるだろ。家族になったんだから!」

ムスッと頬を膨らませて拗ねている彼を見て、あぁそうだった。こう見えて彼はまだ……10歳になったばかりだったと思い出した。10歳と言えば、私が海軍に保護された歳で、そういえば私も何かとおつるさんにつっかかっていた気がする。そう思うと、親近感が沸いてきたような…………。

彼は私を真似てか、銃の手入れを始めた。私も彼も銃は使える。……っというか、教わっている。銃の使い方はグラディウスが、格闘技はラオGが、剣術に関してはディアマンテが教えてくれていた。私も彼も戦闘に関してはまだまだで、一緒に修行してる。修行はすごく辛いし、それにちゃんとついてきている彼のことはすごいと思ってる。……ちゃんと認めてる。…………でも。

「ちょっと、それ違う」
「え?」
「その銃は他のと少し違うってグラディウスが言ってたでしょ?……ほら、貸して」
「あ、……うん」

彼から銃を受け取って、間違っているところを直して組み立てて見せる。

「……ね? わかった?」
「……あぁ」

あー私、何やってんだろ。こんな10歳の可愛い男の子に意地なんて張っちゃって。……こんなにも素直でいい子じゃない。ありがとう……、とはにかんで笑う姿を見ていたらなんだか、大人げない自分に腹が立ってきた。

「こんなところをグラディウスに見られていたら大変なことになってたんじゃない?」

口から出ていった言葉は確かに、馬鹿にしたように聞こえるものだったかもしれないけれど、今までの接し方に比べたらだいぶ柔らかいものになっていたと思うし、そんな眉間に皺を寄せるほどのことは言っていないと思うんだけど……。黙り込んでしまった彼をジッと見つめた。

「……俺のこと、嫌いか?」

「…………え?」

「なまえは俺のこと一度も名前で呼ばねェし。お前の方から俺に話しかけてきたのだって、さっきのが初めてだろ」

……そうだっけな。

「…………」

「俺のこと、嫌いか?」

彼はもう一度言った。祈るような視線で私を見つめながら。

「そんなこと、ないよ」
「でも、」
「……ごめん、今私嘘言った」
「え?」

「実を言うとね、私ね。貴方にちょっと嫉妬してたの」

馬鹿なことしてるって自分でも分かっていた。

「――嫉妬?」
「あんな状況でドフィとコラソンに認められた貴方を見ていたらなんかすごく羨ましくって。私は男じゃないから、ドフィたちからしたら跡継ぎ候補にいは入らないみたいだし。……だから、ドフィとコラソンに認められた貴方が羨ましかったの」

でも、その壁はなかなか壊せなくて。

彼の方に向き合って、彼の両眼を見ながら言う。

「ごめんね。私、貴方より3歳も歳上なのに。こんな子供みたいなことして、貴方を不安にさせちゃって……」

一歩、足を進めて彼の前に立った。目をぱちぱちとさせている彼の頬を両手を覆って、言った。

「ごめんね、ローくん」

ぎゅうっと彼を抱きしめた。

「っ、――――」

背中に手を回してしがみついてくるローくんを抱きしめ返してあげると、ローくんはボロボロと涙をこぼした。

「俺、なまえが好きだ。すごくすごく好きだ。なまえはいつも周りを見ていて、ドフィとコラさん……みんなから信頼されてて、訓練だって、俺なんかよりもずっと必死で一生懸命で……!!」
「……だって、年下のローくんにみっともないところ見せるわけにはいかないでしょ?」
「俺、なまえと仲良くなりたくて、」
「…………うん」
「ずっとずっと寂しかったんだ……!!」
「うん。…………私もだよ」

年下の君はすごく不器用で真っ直ぐで。でもかつての私なんかよりもずっと大人だった。寂しいから側にいて欲しい。そう言える、とても強い子だった。

ときどき無意識に見せる笑顔が可愛くって。何度泣きじゃくる君の頭を撫でて、頑張ったねって言ってあげようと思ったことか。でもどうしても素直になれない自分がいて、私は本当に馬鹿だったんだなって、君の顔を見ながら、微笑み返しながら、そう思った。

「だいぶ遅くなったけど、よろしくね。ローくん」
「うん! よろしく、なまえ!!」

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