あのやりとりの時点で気づくべきだった。なぜ中将の相手をした人が泣いてしまうのか、それはすぐに分かった。中将は人が悪いことにとても優しくて、丁寧で、それでいて、なんでも口に出す。どんなに恥ずかしいような台詞でもだ。いざ自分が耳元で言われ続けてみてみると分かる言葉責めの怖さ。綺麗、かわいい、美しい。そんなの当たり前で……もっとすごいことをサラサラと……あぁ、思い出すだけで恥ずかしい。恥ずかし過ぎる。思い出したら恥ずかしくて、思わず顔を両手で覆ってしまう。
「なまえ?」
「中将……あなたはひどい人です」
「おい、お前まで泣くのか……」
「だって、だって……っ」
「頼む、泣かないでくれ」
「っ……無理ですよ」
だって、あまりに中将が優しいから。幸せ過ぎて涙が勝手に出てきてしまうんです。ほら、またそうやって、悪かったなんて言って抱きしめてくれて。もう、優しすぎます……
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朝になって正義のコートに続いて甲板に出た。迎えの小舟がこちらに着くまでの間、私と中将は横に並んで海をじっと見つめる。
「なまえ、お前はずっとここにいるつもりか?」
「……はい、今のところはそのつもりです」
「何か事情があるのか?」
「う~ん。そうですね。あります」
「では、その事情が解決することはあり得るのか?」
「……なくはないです。私の気持ちの問題ですから」
「……そうか」
そう言うと、隣に立つ中将がこちらを向いて言った。
「また来る」
「はい。是非、また来て下さいね」
グシャグシャッと私の頭を撫でた中将は小舟に乗り去っていった。
「どうしよう。私あの人のこと好きになるかもしれない……」
だけど、それはまだ先の話。
150810 End.

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