「あのさ……毎回思うけど面倒じゃないの?」
毎回こうやって面倒なステップを踏んで会いに来てくれるのは嬉しいんだけど。ひらひらと自分の服を揺らせば、目の前の人がまぁそうだなと頷く。
「ロー?」
首を傾げれば浮ついた返事が返ってきて、いつもと違う様子に戸惑う。どうしたの? 調子悪いの? と心配すれば、ハッと我に返ったような顔になる。
「あー悪い」
「疲れてるなら無理して来なくていいんだよ?」
わざわざ大金払ってまでこんな私に会いに来てもさ。口には出さなかったけれどそんなことを思えば、ジロリとした目がこちらを向く。ほら、目の下のクマ。また深くなったんじゃないの? 眉間に皺を寄せて睨み返す。しばらく睨み合いが続いた後、ローがフッと笑みを漏らした。
「なによ?」
「そんな格好の奴に睨まれてもな」
クククッと笑うそいつの体をボカボカと殴れば、余計に笑われる。
「あーほんと可愛い」
「ちょっ……」
ムスリ。頬を膨らませる。瞬間、あ、やべという顔になったロー。私の機嫌を損ねたら直すのが大変なことを知っている癖にそうやっていつも意地悪をするんだから。
「悪い。でも、その格好はやっぱり可愛い」
ローが選んだのはウェイターさん。シチュエーションはカフェらしい。……おいおい。カフェでするのか。このシチュエーション、おかしくない? 聞いてすぐに思った。それを選んだローも凄いけど。少しだけフリルのついたエプロン。シャツは上までキッチリと止められている。胸元には赤い小さめのリボンが結ばれている。清潔感のある制服。そんなイメージを受けた。クルリと回れば、膝より少し短いスカートがふわっと浮く。こんな格好なかなかしないから、ちょっとはしゃいでしまう。
「もう1回、回れ」
優雅にイスに腰掛けているローが言う。私は首を傾げながらもフワリと一回転。前を向いて止まれば、ローの眉間に皺が寄る。
「ギリギリ見えないようになっているわけか……」
なにが? 首を傾げれば、ちょいちょいと手招きをされる。何? と歩み寄るとローが超偉そうに言う。
「パンツだよ」
「なっ! 子供か!!」
「パンチラは男のロマンだ」
「なんでそんな偉そうなのよ……」
もう……と息を吐けば、あ! そうかと悪いことを思いついた顔のロー。私が一歩下がれば、ニヤリと口が弧を描く。
バサッ
「――ッ!?」
信じられない! こいつ!!
「始めからこうすればよかった」
「ちょ、ロー! 何してるの!?」
めくられたスカートを慌てて手で押さえれば、ニンマリとした顔で目の前に立っているロー。
「白か」
「ローのバカ!!」
もう知らないと反対に振り向き歩き出せば、後ろから聞こえるシャンブルズと言う声。あ、しまった。ローの能力やっかいだから、海楼石のアイテム渡すんだった。すっかり忘れていた自分を呪いたくなる。
「ロー!!」
人一倍大きな声で叫び、振り返れば、ローがひらひらと持っているものを降りながらこちらをそれはそれは楽しそうな顔で見ていた。
「返してよ!」
ローが持っているのは私のブラジャー。そう、ローは悪魔の実の能力で人のブラを取ったのだ。ホントもう、なんなのコイツ。確か七武海になったんだよね!? おいぃ。自覚はどこへ忘れてきたの!?
「分かった。じゃあ、俺がつけてやる」
掴みかかればあっという間に後ろに回り込まれて、後ろから抱きしめられる。逃げられそうにはない。クククッと喉で笑う声。あぁ、悔しいけど心地良い声。耳にかかる息がくすぐったくて体を揺らせば、ペロリと耳を嘗められる。
「ん……」
スルリ――
布のすれる音が静かに部屋に響く。ローの息づかいが聞こえる。赤いリボンはそのまま床に落ちていく。パチパチと細く長い指で丁寧にボタンが外されていく。その間私はどこを見つめていいのか分からず視線が宙を舞う。経験なんて数え切れないほどある。けれど、やはりこの瞬間は何度経験しても慣れないものだ。胸がバクバクとなり、抑えきれない衝動に駆られる。早く、早く、早く。想いは抑えきれず、ローの袖ををギュッと握れば、クスリと笑うロー。もう少しだと言う声が余計に私を焦らせる。
「ん、ロー……」
最後のひとつを外し終えたローは私をクルリと回す。溜まらず抱きつけば、いい子だと撫でられる。頬を寄せれば、チュッと甘いキス。頬に添えられた手が優しく誘導してくる。待ちかまえていた唇は熱く、熱く。何度も繰り返し重ねられた。
ローのキスが好き。
ローはときどきキスを止めて私をじらす。その時のローの顔は本当に意地悪で、こちらからしようとすれば避けられる。うぅーと唸ろうが、涙目になろうが、この男には関係ない。しばらくすると、まるでふと思い出したかのようにキスを再会する。すると、冷めかけていた熱がまた戻ってきて、私はローに支配される。
だから、ローのキスが私は大好き。

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます