憧れというものは時に人を盲目にする。
壇上に据えられた椅子に座るのは、赤青黄――三人の海軍本部大将だった。私にとっては雲の上の人物。それぞれが己の芯を持ち、己の道を進む。その様は筆舌に尽くしがたい。見上げる者たちは彼らを羨望の眼差しで見つめている。
もう一度言おう、憧れというものは時に人を盲目にする――
:
:
私は、ガープさんに言った。「先日の三大将のお披露目、凄かったですね。かっこよかったです。一つ残念だったことがあるとしたら、遠くてあまり見えなかったことですね。本部の広場は広いですから。隅っこから見ていたのが残念でした」と。饒舌に、熱弁した。
そうしたらどうなったか。こうなった――
:
「……はじめまして」
震えているのは私。その目の前に立つのは、”あの” 三大将。隣には私の上役のガープさん。
「なぁに、そんなに恥ずかしがらなくとも大丈夫じゃって。こいつら、こう見えて女の子には優しいからな!」
「…………」
それ、本当ですか……ガープさん。ガープさんにとっては彼らは教え子だから屁でもないんでしょうけど……。
目の前に立つ大男はどの人も大変不服そうな顔をしているように見える。忙しいところを呼び出されたのではないでしょうか。
「センゴクからの呼び出しと聞いて来てみれば……どういうことじゃ、ガープ」
ぶちっと、眉間の血管が張り裂けるんではないか、そう思ってしまったくらいにサカズキ大将の額の血管が浮き出ている。
「だってお前ら、わしからの呼び出し無視するだろう?」
「「「………………」」」
(そんなだからだよ)
と、いう心の声が聞こえてきましたよ、ガープさん!!
まさか下っ端の下っ端の私のような者の軽い一言でこんなことになるだなんて、誰も思いませんよ普通。当人はもちろん、ほら! 見て! 騙されて集まってきたんですよ、大将達! ここで事の発端が私だとバレてたりしたら……。
「悪いの。どうしてもこいつが会いたいって」
「ちょっ!!!!!」
言っていない。微塵も言っていない。会いたいだなんて、これっぽっちも言っていない!!!!! 慌てて訂正しようとしたけれど「本気で言っているのか? この爺さん」という風に三人がガープさんのことをこれでもかと睨み付けて喧嘩を売っているものだから怖すぎて何も言えませんでした。
「この子は、なまえ。わしの隠し子」
「…………え?」
「…………は?」
「…………あ?」
:
「…………あはは」
そうなのである。ガープ爺ちゃん、76歳にして隠し子がいます。あ……私からするとお父さんです。ガープお父さんが54歳のときに生まれた子が、私です。
「なまえはわしの身内で唯一、海軍に残ってくれた子じゃ。他のやつはどいつもこいつも自分の道を行きおったが、この子は傍におる」
「あ~まぁ、それに関しては不憫だと思うよ、ガープさん」
ようやく入った援護がひとつ、クザン大将からだった。
「わしがここにいる間は問題ない……と思う。……じゃがの、この子の存在をあいつ等が知ってしまったとき、どうなるかは分からん」
「どうしてお前のところの一族は、こうあれこれ問題事を……」
毒づくのはサカズキ大将。そして、その通りだと頷くボルサリーノ大将と、苦笑するクザン大将。
「あまりに近くにいたら不自然になる。……そこで、隠れ蓑として、誰かになまえの上役になってもらおうかと、な」
「…………え、ガープさん。嘘ですよね? 冗談ですよね?」
「……いいや?」
っ、――噓でしょっ!?

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます