あの後、騒動を聞きつけた元帥がやってきて、各大将を一喝。その場は収まった。さすが、トップは違う。それぞれのなだめ方を熟知しているらしく、すんなりと事が落ち着いた。
クザン大将は謹慎処分になった。数ヶ月で復帰とともに、しばらくは潜入するために本部には戻らない――とサカズキ大将から聞いた。
私はといえば、かつてと同じく、サカズキ大将の執務机の隣に置かれた机に座って職務をこなしていた。相変わらず間違いはなくならないけれど、それでも大将は私のことを秘書として傍に置いて下さった。
「お前が被った心身への傷を思うとこの程度どうってことはない」と言われたときの感動と言ったら。思わず「一生ついていきます!」と言ってしまって、サカズキ大将をフリーズさせてしまったものだ。
確かに……クザンさんがつけた私への傷跡は大きい。かつては全く気にならなかった男性に対する欲情というものを知ってしまったがために、私は少し困っている。困っていることがあれば相談するといいとサカズキ大将が最近よく言うようになったのは、恐らくこのせいだ。……確かに困ってはいるけれど、この手のことを大将に話すべきではないことぐらい、私でも分かった。絶対に、気まずくなるからだ。
だって、だって――、その欲情の対象が、『サカズキ大将』本人なのだから。
ふん、と荒い鼻息を吐き出して、正義のコートから腕を抜く背中を見守る。脱ぎ終わったコートを受け取って部屋の隅にあるコート掛けへ向かう。その間に腕の中にある温もり。暖かい。コート掛けに掛ける前に、大将の温もりを堪能して、離れがたい思いを抱えながら、コートを掛ける。『正義』の文字が正面に来るようにささっと手直しを入れた後、被ったままであった帽子はどうするか尋ねて(大抵は脱ぎ忘れているのでここで受け取る)、必要であればそれも帽子掛けに掛けた。
……これって、秘書というよりは、なんてことを思いはしないでもない。
至福の時間が終わった後に待っているのは提出した書類の読み合わせ。私はまだ完璧な仕事はできないけれど、大将ひとりでやるよりはいくぶんか早いらしく、時折「助かっている」発言を頂いては内心ひとりで歓喜している。
最近思うのは、いつも与えて頂いてばかりでお返しが出来ていないなぁということだった。何かプレゼントをする、とか? サカズキ大将ってそういうのは受け取るタイプなのだろうか、全然想像ができない。
差し上げるとしたら……えぇ……と。何が喜んでくれるのか、やっぱり想像ができない。
そんなとき、ふと思い出した過去の黒歴史。
男が喜ぶこと、それは簡単でね――かつてのクザン大将の言葉を思い出して思わず頭を壁に打ち付けた。

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