ルッチさんと出会ってもうすぐ1年が経つ。あの出来事の後、しばらくして私は仕事を辞めた。……なぜなら。
「なまえ」
「おかえりなさい、ルッチさん」
この人がどうしても駄目だというものだから。
「ご飯はもう食べていますか?」
「あァ。風呂に入ってくる」
「はい」
あの後、何度か店に通ったルッチさんはもちろん毎回指名をしてくれて、いろんな話をしてくれた。そして必ず一番最後の時間に予約を取って、ぐっすりと眠って帰るのだ。大抵、その前の時間にはクザンさんが予約で入っているから、クザンさんの施術が少し長引いたときは喧嘩勃発で、もういい加減して下さい、とさすがの私も怒ることになった。
その後は欠かさず家まで送ってくれた。天気が良くて時間に余裕があるときは、あの星空を見た場所に行く。そこでは話し足りなかったことをたくさん話した。そうやって同じ時間を過ごしている内に、ルッチさんのあの泣きそうな顔はすっかり身を潜めていって、彼は徐々に元気を取り戻していった。
ある日のこと。いつかはそうなる日が来るかもしれないと思っていた日が来た。ルッチさんが言った。
「曖昧な関係のまま、続けるつもりはない」
「はい?」
「俺は女に困ったことはない」
「……それ嫌みですか?」
「いや、違う」
「でも、嫌みにしか「いいから聞け」……はい」
「だから、どう言えばいいのか分からない」
「何をですか?」
「断ることはあっても、断られることはなかった。……そもそも自分から誘ったことなどなかったのだが」
「だーかーらー、嫌みですか? って言ってるんですけど」
「なまえ、俺と付き合ってくれ」
「……えっと、」
それから数秒の沈黙。私の様子に眉間に皺を寄せたルッチさんがジッとこちらを見据えていた。
「あの、もう付き合っていたと思うんですけど、これって私の思い過ごしでした?」
この時のルッチさんの顔を私は一生忘れないだろう。
え、そうだったの? と言いたげに目をまん丸に見開いた彼が少し気まずそうにして視線を泳がせていた。しまった、言わなくていい余計なことを言ってしまったと思っているに違いない。……それにしても。
「ルッチさん!!」
パッとこちらに向いた顔に向かって言う。
「もちろんですっ! これからも一緒にいて下さい!」
そう言って飛びかかったらようやく安心したように笑ってくれたルッチさんがとても嬉しそうに抱きしめてくれた。あぁ、私、やっぱり彼が好きなんだなとそう思ったのだった。
:
:
「ルッチさん――?」
いつもならもう出てくる時間なのに。そう思って脱衣所をのぞき込む。あれ、いない? もしかして倒れてたり!? 慌てて中に駆け込む。ルッチさん!? と勢いよく扉を開けたら、そこには気持ち良さそうに湯船に浸かったまま、眠りこけている彼が居た。もう、人が心配しているっていうのに、この人は。
スリッパを脱いで、ロングスカートが濡れないように裾をたくし上げて風呂場に入る。彼の傍に近づいて腰を折り、その頬を優しく撫でた。「ん、」と漏れる声。でも起きる気配がなかった。
「ルッチさん、起きて下さい」
囁くような声でそう言って、ちゅ、と小さく口付ける。そうするとようやく彼の目が開いた。
「あ、ようやく起きましたね。ここで眠ったら逆上せますから、早く上がって下さいよ」
「……ん、なまえは風呂に入ったか」
「え? いいえまだですけど」
「じゃあ、」
「え、ちょっ!?」
クルン、と流れるような動作で私の体は持ち上げられてどっぷりと湯船の中に浸かる。
「る、ルッチさん――!!!」
「あぁ、なまえ。綺麗だ」
「違う。そうじゃなくて!」
すっかりそのモードに入ってしまっているルッチさんは逃げようとする私の体を抱えて自身の股の間に拘束する。何も身に纏っていない彼の体のせいで視線が泳ぐ。少し熱いのか、はぁはぁと耳元で吐き出される吐息が首筋を刺激してなんだか落ち着かなかった。
「ここは風呂だ。お前が脱がないなら脱がせてやる」
「いや、いいですから。私自分で。ッ、んっ」
ちゅうぅと首筋に吸いつく音。ちゅぱ、ちゅぱと音がなり、ぴりりとした痛みがいくつか走った。そちらに気を取られているうちに、器用にスカートを脱がせた彼が今度は上の服の中に手を忍ばせてくる。
「もう準備万端だな」
ホックが外され、胸の突起が刺激される。その前からもうすでに立ち上がっていたことに対してにんまりと悪びれた笑みを浮かべたルッチが、着ていたティーシャツから私の頭を抜き、ブラもショーツもすべてを取り払った。
そうして一度湯船から出ようと、私の体を抱え上げて外に出す。彼の体はもう真っ赤で。とても熱そうだった。
背中を壁のタイルに押しつけられるとひんやりとした刺激。その冷たさに心地よさを感じて、私の体もすっかり火照りきっていることに気づく。
「ん、ルッチさん……」
「なまえ、」
ルッチさんのキスはとても甘くて、深い。そして求めながらも求めてもらうことを望んでいる。甘えるようなそのキスにすっかり夢中になってしまった。離れた唇を追いかけると彼は逃げる。それでも追いかけて、両手で頬を捕まえて口付けると心底嬉しそうに瞳を細めるのだ。
そう、彼は本当に可愛らしい猛獣なのだ。まるで豹のように、私の心を捉えて離さない。
160905 End.
Afterword
リクエストを頂いて書かせて頂きました。リクエストはルッチ、現パロ、眠れないルッチがヒロインとなら安眠できる、純愛、ということで。リラクゼ―ション店員、クザン参戦、カリファの店、というアイディアもそのまま頂いちゃいました。ありがとうございます~!
ルッチって感情をそんなに表すタイプじゃないと思うので、ちょっと分かり難かったかもしれないんですけど、現パロだったらたぶんこんな感じなんじゃないかなぁ?と思いながら書きました。本編とはまた少し違う彼になったのですが、気に入って貰えたら幸いです。
ユキさんリクエストありがとうございました~(*^^*)

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます