シャワールームに涙と嗚咽を隠蔽

……べろんべろんに酔っているこのカップルをどうしてくれたものか。

すっかり打ち解けて、バカップルになってしまったカクさんと鈴ちゃんのおかげで会話は弾む弾む。そして弾みすぎて飲み過ぎたらしい。途中までは心地よさそうに飲んでしゃべっていた二人も今や机にうっぷして眠っていた。

……まぁ微笑ましいっちゃ微笑ましいんだけど。

「寝ちゃいましたね、二人とも」
「……ですね」

鍋の残りを器に移していく。さぁて、そろそろお開きにして片づけでもしようか。椅子を引いて立ち上がる。その時結構な音がしたのだけれでも、突っ伏した二人はびくともしなかったから、やっぱりもう二人は朝まで起きないのだろうなとそう悟った。

綺麗になくなった二つの鍋を見ながら、それにしても結構な量があったのによく食べたよなぁと、二回に分けて流し台の隣に置いた。水に漬けて、しばくしたら洗おう。その間にお皿を……

ヌッと差し込んだ影に身が固まる。カチャン――と音がして、隣に置かれたのがお皿で、それを持っている手がルッチさんのものだと分かって、息を吐き出した。

「すみません、驚きましたか」
「すみません。さっきホラー見ていたせいか、なんか過敏になってて」
「大丈夫ですよ。ここは明るいですし、俺もいますから」
「…………ですね」

ルッチさんは安心していいと励ましてくれているはずなのに、その言葉を聞いて私はなぜだか気恥ずかしく思っていた。俺もいる……っていうか、今は他の二人はいないも同然な感じだから……これってある意味二人きりなんじゃない……かな。

水道の蛇口を捻って、スポンジを手に取り、お皿を洗っていく。再びお皿を取って来てくれたルッチさんが隣にならんで「これで全部です」と言う。

「ありがとうございます」と返事を返しながら、ばくばくと鳴り出した心臓にぎゅ、と目を閉じた。…………近い。隣に立ったままの彼の様子が気になってちらりと覗き見るとしっかりと目が合った。近いと思っていた以上に近いところに彼が立っていて、余計に体が強ばった。

「洗った皿を流しましょうか」
「……あ、はい。お願いします」

右側に避けていた洗った皿を、左側に寄せる。それを受け取ったルッチさんが水で泡を洗い流していった。……これって二人の初めての共同作業……ってバカか私は。

すべてを洗い終わったあとは水に漬けていた鍋をごしごしと洗っていく。

「やりましょうか?」

え? と顔を上げると「大変そうですから」と持っていたスポンジに彼の手が重なる。

「あ、えっ、いえそんな!」
「……いいから」

やんわりと手が握りしめられて、スポンジが手の中から抜き取られていく。うわ……、私の手の平を余裕で覆ってしまったルッチさんの手の大きさに驚いた。上から伸びてきた彼の腕の中に自然と納まった私の体が行き場を見つけられなくてその場に固まる。

「あの……えっと、」
「あぁ、すみません」

気まずそうにしている私に気づくと、ルッチさんはすぐに身を引いてくれて、腕の中から出してくれた。でも、半ば抱きしめられたと言ってもいいようなそんな距離で起こったできごとに頭の中は真っ白になっていた。

ルッチさんが二つの鍋を洗い終わる間、その様子を見つめながら、ただただ呆然としていた。

鍋を洗い終われば、洗い物はすべて終了となり、いよいよどうしようか、と今後のことを考えなければならなくなった。

「取りあえず、二人を横にしますか?」
「そうですね」

カクさんはルッチさんが。鈴ちゃんは私が。二人は付き合っていることだし、同じ部屋に――とその時。

「う、やば……吐く……」
「…………え”」

鈴ちゃんがエクストラヒットをかましてくれました。

「運べそう……です、か?」

先にカクさんを運び終えたルッチさんが戻ってきて、その惨状を目にして顔をしかめた。

「やられました」
「……シャワー浴びるといいですよ。後はやっておきますから」
「……すみません。お言葉に甘えます」

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