ミホークとは幼い頃から一緒で、シャンクスとは最近になって知り合った。ミホークがやたら熱を上げているなと珍しく思いながらその元を突き止めてみたら、その熱の元は彼だったのだ。そう、ミホークに宿敵ができた瞬間だった。
船に戻ってきた熱くたぎるような瞳をしたミホークの横顔。なんだか嬉しくなってくる。
「……なんだ?」
「ううん、なんでもないよ」
「なら行くぞ」
「うん」
その赤い髪の人がどこの誰で、どういう風に知り合ったの? それで彼はどれぐらい強いの? いろいろ聞きたかったけど、その欲をグッと堪えて素直に頷く。船を繋いでいた縄を外し、近くの岩を片足で蹴り勢いをつけて船を出した。
ミホーク自身がどう思っていたのかは知らない。でも、あの赤い髪の人、シャンクスの好奇心というものは計りしれず、ミホークの予想とは反しただろう形で私とシャンクスは出会った。
決闘の日、毎度毎度よくもまぁあきないものだなぁと思いながら、小舟で一人大人しく待っていると、「やっ」と飛び乗ってきたその人。
「俺はシャンクス! お前は?」
「えっと―……なまえ、だけど……」
すぐに分かった。この人がミホークの宿敵だと。その瞳の輝きはミホークの瞳と同じだった。何か先を見据えているような瞳。吸い込まれてしまいそうだった。
「お前がなまえか!!」
シャンクスが足を踏み込むとグラッと大きく船が揺れる。待って、そんなに動いたら船が転覆する! 慌てて船の縁を両手で掴みバランスを保つ。
「ちょっと! 動かない……「俺の仲間にならねぇか!?」…………はぁ???」
意味分からないんだけど! と声を上げると「いいだろ!」と掴みかかるような勢いでこちらに向かってきた。それから逃げるようにしてバタバタと動けば、最悪の結末にたどり着く。
「…………お前等、何をやっている」
「っ、み、ミホーク助けて! 船が……ってか、この人何ッ!?」
転覆してひっくり返った小舟。なんとか水面から顔を出したら丁度そこにはミホークがいた。
「約束の場所に来ていないと思ったら……何をやっている赤髪」
「いやなぁ、お前いっつも女の匂いをさせてっから気になって。こいつお前の女?」
「違うわよ! 同郷の仲間よ!」
「あ、そっか。そうなのか。じゃあいいよな?」
「……いい? 何がだ」
「こいつ俺にくれ」
「はぁっ!? 何それ、意味分からない!」
「俺のところの剣士にする。お前、強いんだろ?」
シャンクスは急に真面目な顔になってこちらを両眼で見つめた。肩をビクつかせ、それでも負けずに睨み返す。なんて突拍子もないことを言う人なのだろうか。どうにかしてよとミホークを見たら、はぁと深いため息が返ってきた。
「俺は止めない。お前の道はお前が決めろ」
「……私は誰にも縛られたくない。ミホークとは利害が一致しているから一緒にいるだけ」
ふん、と顔を背けミホークを見る。
「そういうわけだ。残念だったな赤髪」
ちぇ~と暢気に口を尖らせているこの人は本当にミホークの宿敵なのだろうか、戦っているところが想像……いや、…………両眼に見つめられたあの一瞬、何か……計り知れないものを感じた。ミホークとはまた違う、底知れない力がこの人にはある気がした。まぁ、でも。だからと言ってついていこうとは思わないんだけどね。
しつこい勧誘を振り払い、その日はそこで別れた。それからは決闘の場に行くとその度にシャンクスに勧誘されて、断って断って断って、を繰り返したのを覚えている。
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あれから十数年。
今あの人達はどうしているのだろうか。しばらくして私とミホークは別れた。いや、正確にはトラブルに巻き込まれて、私はある海賊団一味に捕まり、そこをセンゴクさんに助けられ、今や海軍中将となっていた。
正義を背負い戦うなど当時なら考えられなかったことだろう。”恩”とはなんと大きなものなのだろうか。あのとき抱え上げてくれたセンゴクさんに報いること。それが今の私の目標であり、死の間際で誓ったことだった。
時折、鷹のような目をした剣士が海軍の船を一掃したという話を聞く。それはいつも忘れた頃にふいにふってくる。きっとあの人だ。そうは思うものの、未だ行動に起こせずにいた。
そうして過ごしているうちに、”赤髪のシャンクス”という男が四皇になったという情報が回ってきた。配られた手配書。そのうち2枚を取り出す。シャンクス、ミホーク。昔はあんなに青臭かった2人ももうすっかり大人で。当たり前だけど私ももう大人になった。昔みたいに衝動に駆られて動くなんてことなくなった。……なんか、それはそれで寂しいよね。
2人の手配書にそっ、と手を這わし当時のことを思う。
ミホーク。私と別れてからどうしたの? 私のこと、探してくれた? ……ねぇ、少しでも寂しいって思ってくれた? シャンクス。もしあのときの誘いを受けていたら、私は四皇の船に乗っていたのかな。後悔はしていないけど、もう少し、あなたと話してみたかった。
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数週間の休暇を貰ってしまった。今更何をしろというんだろうと思いながら休暇一日目を家で過ごしていたときのこと。ふと、昔の景色が頭に浮かんできた。そして、思い出した。
「エターナルポース!」
そうだ。そうだった。あの決闘の場。あの島に行くためにミホークから貰ったこれがあったんだった。十数年、気がつかないなんて、私は一体何をやっていたんだろう。クローゼットの奥。古くなってあちこちべこべこにへこんでしまっている缶の箱を開ける。そこには数少ない思い出の品々。そこに混ざって入っていたエターナルポースを取り出す。木の部分には”決闘島”と手堀で掘られていた。
…………懐かしい。
自分の立場がどうだとか、2人が私のことをどう思っているだとか、考えることはたくさんあったと思う。でも……今はそんなことよりもただそこへ行きたいという衝動にかられた。懐かしい。こんな気持ち、久しぶりだ。急いで荷物をまとめ、小さな小舟を借りて出向する。海軍の船以外に乗ったのは本当に久しぶりだった。
島は変わらずあった。
そしてそこにはかつてとは違う情景があった。
小舟が岸に着くまで待てなかった。荷物もすべて置きっぱなしで小舟が波に流されてしまうとかもうどうでもよかった。走って走って丘をかけあがって、青い青い空が目いっぱいに広がる。はぁ、はぁと肩を上下させて、その光景を目の前にして立ち止まった。
「ミホ――――クッ!!! シャンク――――スッ!!!」
大きな声でめいいっぱい叫んだ。そうしたらそこにいた全員の顔が一斉にこちらに向いて、シャンクスがゆっくりと立ち上がった。手に持っていた酒瓶が下に落ちて割れる。ミホークときたら笑っていた。シャンクスに続くようにして立ち上がり、叫んだ。
「遅い!!! いつまで待たせる気だ!!!」
「っ、」
弾けるようにして体が動いた。
「ミホーク!! シャンクス!!」
地面を蹴って2人に向かってダイブする。慌てて手を伸ばしてくれた二人ごと一緒になって地面に倒れ込んだ。
「っ、はははッ!!」
「なまえ、お前はまったく……」
「なまえ、元気だったか!?」
「うん!!」
目の前にはかつての2人がいた。あれ、目の錯覚かな。若い頃の2人の姿が見えるや。
「十年、待った」
「……うん、ごめん」
「俺ら、偉くなったもんだろ?」
「……うん。まさかこんなに偉くなるなんて吃驚したよ」
「なまえはどうしてたんだ?」
「私は……」
私は…………
「なまえ?」
「その話は後でしよ! 今は飲もうよ。再会を祝して!!」
この良き日に乾杯――――
囲う人はシャンクスのとこの船員らしい。ミホークは変わらず一匹狼やってるんだって。それでね。私はね、海軍の中将になったんだって言ったらすげぇじゃねぇか! ってシャンクスがね。ふふ、ミホークったらじゃあ七武海の話を受けるか、って。
それでね、それでね。あぁ、駄目だね。話したいことが、この十年間の想いが溢れだして来てうまく言葉にできないや。
「っ、ミホーク。シャンクス。会いたかった。…………ずっと、ずっと会いたかった」
ついに泣き出してしまった私に、泣き虫の癖によく我慢したなって笑いながらミホークがグシャグシャッて頭を撫でてくれた。「なぁ、それでなまえは俺の仲間になる気はねぇのか?」って相変わらずシャンクスはしつこかった。もうおかしくて笑ってしまったよ。
止まっていた時計の針がようやく回り出した気がした――
160121 End.
Afterword
前サイトで数ヶ月だけやっていた企画song!song!song!に格納していたものを短編に移動させました。Image of DAYS of DASH(鈴木このみ)というわけで、青空に向かって走る!という気持ちを込めて書いています。
今回はミホークとシャンクスは親友です。恋人とかじゃなくて、2人とも大好きなんだけど、そういう感情はなくて……という感じです。ミホークは純粋になまえと旅をすることを楽しんでいるし、シャンクスはなまえの強さを認めています。2人とそうやって認め合って、一緒に笑い合って過ごすのも悪くないよなぁ、なんて。

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