そうみつめてみて
目の前に立つ大男が深い息を吐き出した。ため息かと思ったが、そうではない。まるで息を整えるように、彼は、呼吸を繰り返していた。そして言った。「もう一度、言ってみろ」「……ここを去ります」今一度、彼のを見つめたまま、静かに答えた。なぜ?には分か…
赤犬_短編原作
感情論
あぁそうだな彼の口から出た言葉は肯定しているにも関わらず、その実、読みとれたのは否定だった。「…………」は読みとったそれを不本意ながらも飲み込んで、眉間に皺が寄る前にくるりと体を回転させた。背後に感じる気配は相変わらず否定一色。そこまではっ…
鷹_短編原作
躊躇いの代償
もしもなんて話はただの言い訳でしかなく。それはみすみすタイミングを逃した己の怠惰たいだを証明するものでしかない。その感情を知らなかった、なんて言葉は言い訳にならない。それこそまさに怠惰だ。今はそう思う。::「ねぇ、ミホークさんはどう思います…
鷹_短編原作
可愛いあの娘は今日も、
世間じゃ彼らは馬が合わないからやり合うなんて言われているけれど、実はそうじゃなくて、ミホークさんとシャンクスさんはとても仲がよい。お互いをよく知った仲だからこそ、敢えて剣を交え、お互いを高めあっていただけなのだ。「お! !」ガヤガヤとごった…
鷹_短編原作
待って、待って、置いていかないで。
― 若い頃の鷹 ― 最近、頭角を現してきた海賊がいる。その男は鷹のように鋭い眼光を持ち、刀ひと振りで艦隊十隻を沈めるらしいと、ここ数日はその噂で持ちきりだった。「ねぇミホーク」「なんだ?」「私、ついていく自…
鷹_短編原作
いつかの人
ここはイーストブルーにある辺境の町。イーストブルーは4つの海の中でもとても平和な海らしい。この島から外へ出たことがないからあくまで聞いた話なんだけれど。「、2番テーブルにお客さんだよ!」「ん、はぁーい! すぐに行きます」そしてここはそんな辺…
鷹_短編原作
この人生には邂逅が多すぎた
「え、と…………お久しぶり、です?」「なぜそう首を傾げる」「それはですね。以前お会いしたのがいつだったかはっきり覚えていないから、ですよ」ふむ、それは一理あるな、と自身の記憶の中を漁る。言われて見れば最後に会ったのはいつのことだったか。「元…
鷹_短編原作
てのひらを結んでは開いて
掴み損ねたあの手をもし、もしも掴んでいたなら、私の運命はもう少しましになっていたのだろうか。……なんて。バカだな、私。そんなこと思うなんて。……きっと、どんなにきつく握り合おうとも、その繋がり、結びつきはいつか必ず壊れる。あの人が相手となれ…
鷹_短編原作
この心臓を引き換えにしたとして
重く深い息を何度も吐き出す貴方。息継ぎの間隔がどんどん、どんどん短くなっていった。俺は死ぬのか真っ青に染まった唇がそう、紡ぎ出した。唇の切れ端からは鮮血が止め処なく流れ出ていく。弱りきった体を引き寄せてその胸に手を置くと鼓動を感じた。弱弱し…
鷹_短編原作
欲情するのは唯一無二のその唇
― 「なぜこうもかぶるのか」続き ― 漆黒の剣士が甲板に舞い降りてくるのを目で捕らえた途端目を見開く。次に逸る気持ちをまったくもって押さえることなく足を動かし突っ込んで行く。そして最後にミホークさんの前でブ…
鷹_短編原作
なぜこうもかぶるのか
「ギャハハハ~!」「それはないだろ!」甲板に響き渡る笑い声。普段は静かな場所にしか行かないミホークが珍しく、四皇赤髪の船に来ていた。ミホークはいつも以上の盛り上がりを見せる船に顔をしかめながら歩き慣れた甲板を歩く。「おお! 鷹の目じゃねぇか…
鷹_短編原作
私のお父さんはね、笑うとすっごく可愛いの
柔らかな日差しが差し込む午後のこと。昼間だというのにまだ起きて来ようとしないところを見かねた男が小さなため息をつきながら重い腰を上げた。コツン、コツン、と白い石の上を真っ黒な靴が行く。コツン、と音が鳴る度に二人掛けのソファの上で布の擦れる音…
鷹_短編原作