まじわる・またたく・まもる

 

― SECTION 6 < 鷹と笑顔 > ―

 

 

「……と、まぁこんな感じですね」

長い長い物語でした。めでたしめでたし。と軽い口調でそう言うと、眉間に深い皺を作ったローくんが不満そうに口を開いた。

「結局、お前の記憶はどこからどこまであったんだ?」
「……さぁ? そんなの私も分かりません。今のが覚えているすべてです。はい、嘘偽りはありませんよ?」

ふふ、と笑って見せる。

もう一人の方には目を向けることができなかった。

「徐々に記憶が蘇ってきたのか?」
「そう、ですね……だんだん、だんだん蘇ってきました」

思い出さない方が良かったのかもしれない。彼は思い出す必要はないと言っていたぐらいなのだ。思い出さないことを望んでいたんだと思う。

「それで、本部のその後はどうなったんだ?」
「えっと、ですね。私はそれからしばらくして目を覚ましたんですが、その時はドフィに貰った薬の副作用のせいか、一時的に記憶が混乱していて。しばらくはミホークのことが分からない状況でした」
「……それから?」
「この島に移って、何ヶ月か経ったときにどうやら薬が切れたようで、私の記憶は復活したというわけです」

「……なるほどな。お前はスマイルともう一つ他の薬も飲んだことがある、というわけか」

「少し時間が必要だ」そう呟いたローくんは早々に部屋から出ていってしまった。どうやら、頭の中はもう薬のことでいっぱいらしい。

部屋に残された私とミホーク。ミホークは無言で、微動だにしなかった。そのうち、その空気に耐えられなくなって私が口を開いた。

「あの、ね。だから、聞いて欲しくなかったんだ」
「……だから? そう言うということは自分自身の過ちについて理解しているということでいいのか?」

鋭い眼光が射抜く。その瞳に見つめられてしまってはそれ以上口を開くことも、動くこともできなかった。ゆっくりと組んでいた両腕を降ろし、壁に預けていた背中を浮かす。こちらに向かってくる彼の姿を目で追った。

「ドフラミンゴとそういう関係だったということを俺は聞いていない」

低い声はミホークの静かな怒りを帯び、攻撃的に私の胸をえぐった。

「ごめんなさい。言う必要はない、と思っていて。もう終わったことだったら……」

ぽろり、と一粒の涙が落ちた。あれ、私なんで泣いているんだろ。怒られたから? 悲しいのかな。

涙がこぼれ出た右目を手で拭い、顔を上げてミホークを見て言った。隠していてごめんなさい、と。そうしたら、ハッとしたような素振りをしたミホークが一度瞬いた。

次に彼の眉間には皺が寄り、切なく眉が寄せられた。

「すまなかった……」

そう言って彼はベッド横にあった椅子に座った。

「ミホーク?」
「俺があのとき目を離さなければ、このようなことになることもなかった。俺のせいだ。その責任をお前に押しつけるところだった。悪かった」

そう深々と世界最強の剣豪に頭を下げられてはこっちがどうにかなってしまいそうだった。

「え、いやいやいや! いいから! 私が悪かったんだって! ほんと、ごめんね。ミホーク!!」

ようやく顔を上げてくれたミホークに目を合わせてにっこりと笑って見せたら、彼は目を細めて笑ってくれた。

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