シネマメランコリー

解放を見た彼女は一瞬だけ動きを止めた。そしてその次の瞬間には、私のことを「京楽隊長」と呼んだ。催眠は成功で(まぁ今までうまくいかなかった試しはないが)、喉から手が出るほど欲していた子が易々と手元に転がり込んできた。

警戒心の欠片もなく隣に並んで、にこにこと笑う姿は京楽に対する信頼を窺わせる。先ほどは「特別親しいというわけではない」と言っていた癖にそうは見えない。深くを知った仲のように感じてならなかった。

座敷の横、木の扉の中、そこは霧に覆われたところで抜けた先に用意されていた部屋に通る。彼女は全く不審に思う素振りもなく素直についてきていて、あまりの信頼の高さに腹が煮えそうになった。

一体、京楽とはどのような関係なのか。

襖を閉めると、「で、話とは?」と首を傾げられる。どうやら本当に話だけあると思っているらしい。……つまり、この子の言うとおり、二人の間には何もないということか。

「あぁ、君はもう知っていると思うが、聞いておきたくてね」

それっぽい言葉を投げかける。二人の間には何かがあるのは感じられた。会話を引き出してその何かを聞き出したい。

「君……? 珍しいですね。いつもなまえちゃんって呼ぶのに。浮竹隊長に名前を呼ぶなとか言われたんですか?」

揶揄い混じりの声。とても楽しそうに笑う彼女の声を聞きながら耳を疑った。……なまえ? それが彼女の名前か。そう、名前を聞き取ることができた。あれほど悩ましく思っていたのに、あまりにもすんなりと名前を聞くことが出来た。……何故かなのか、それは今はいい。

あぁ、もう。……いい、十分だ。あとは、もう……私でいい。

完全催眠で情報を書き換える。ここに居たのは京楽ではなく、私――藍染であったことに書き換えて、目の前の彼女、なまえを見据えた。

「…………藍染隊長?」

本当に不思議そうになまえは首を傾げていた。

「今日は髪を下ろしているんだね」
「あ……はい」

かけたのは、私となまえが恋仲であるという催眠。それを受け入れた彼女がにっこりと微笑む。「似合うでしょうか?」仄かに頬を染めながら恥ずかしそうに声を潜める様子に喉が鳴った。この時をどれほど待ちわびていただろうか。どんなに彼女を求めていただろうか。なまえを啼かせたいと、ずっと願っていた。飢えたような強い欲望をどうにか抑えつける。ここまで我慢したのだ。あと少しの辛抱くらいはできるだろう。己に言い聞かせる。さぁ、どうしてくれようか。目の前に据えられた熟れた果実に舌鼓を鳴らせてゆっくりと顔を寄せる。

「……美しいよ」

耳元で囁くと、なまえの耳が赤く染まっていった。たった一言呟いただけでなまえは顔を俯かせて嬉し恥ずかしと顔を隠す。その様が堪らなく可愛い。後ろにあったかんざしを引き抜いて髪を全て落としてしまうと慌てたようになまえが顔を上げた。その隙に首に顔を埋めて啄むような口づけを何度も何度も繰り返す。なまえは身を震わせていた。思わずというように、私の着物の裾をぎゅっと握りしめて耐えるように身を倒してくる。それを受け入れて背中に腕を回し抱き締めた。あのなまえの体が己の腕の中にある。たったそれだけで滾る血の流れが理性を飛ばしそうになった。……もう少し、まだ早い。それを何とか制して、熱を孕ませたなまえの双眸を優しく見つめ返し小さく開かれている唇に優しく口づけを落としていく。

「ん…………」

時折漏れる小さな声が脳髄を刺激する。あぁ頼むからそんなに可愛い声を出さないでくれ。おかしくなってしまいそうだ。そうは思いつつもどうにかしてなまえを啼かせてやりたいと矛盾した感情が腹の中で渦巻いていく。荒く息を吐き出しながらどうにか理性を保ちながら、だんだんと激しくなっていく口づけに酔いしれていった。

「ん、はっ……はっ……」

必死で息継ぎを繰り返すなまえが愛おしくて堪らない。酸素が足りていないのか、彼女の目の焦点はここではないどこかへ飛んでいた。漏れる声が容赦なく理性を侵してくるなか――ふと、首元の痣が目に付いた。

「……これは?」
「こ、れ……?」

痣を軽く押す。これは真新しい。出来たばかりのものだ。痛みはないらしくくすぐったそうに逃れようと動くなまえの体を取り押さえて続ける。

「ここに痕がある」
「あと、ですか? …………あ、」

どうやら心当たりがあるらしい。この子にはそういう相手が既にいるということなのか。……まぁもう関係ないか。今はもう私の恋人である。さぁ……ここからどうする、なまえ?

「……これは、その……えっと。……あれ、なんで……?」

記憶が錯綜しているらしい。どうしてそうなってしまったのか、鏡花水月の催眠がどのように効いてくるのか、見物させてもらおうじゃないか。……役得だな。

「誰に付けられた?」
「………………」

頭を垂れてすっかり消沈してしまったなまえの頬に手を添える。そのまま顎のラインを進んでくっと顔を上げさせた。視線を彷徨わせるなまえを真正面から見つけて再度言う。

「私のものに痕をつけた者は……誰だ?」
「っ、浮竹……たいちょ、」
「…………浮竹? 京楽ではなく……?」
「ごめ、んなさっ……い」

目に涙を溜めたまま懺悔を続ける愛しいなまえは嘘をついているようには見えない。なまえにとっては私が絶対的存在であるように催眠をかけているからして嘘をつける訳がなかった。……ということは、これは事実か。確かに浮竹はなまえの元上司で関わりはあった。……だが浮竹隊長は病弱なはず。定例会では『浮竹が暴れることになったが、快方に向かっている』とだけ報告があった。あれは……、快方にということは、病気自体が良くなっているということだったのか。てっきり死の淵にいるものだと思っていた。

「私という恋人がいるにも関わらず君は別の男のところへ行ったのかい?」
「っ、」

未だ解放されない拘束の中でなまえは必死に耐えていた。それ程強く押さえているわけでもなかったがただ顎を掬われるという行為が彼女を縛り付けているようだった。必死に縋り付くようになまえの双眸が訴えてくる。違います、私は貴方だけの物です――と。恍惚とした様はまさに私が求めていたものだった。

顔を寄せ耳元で囁く。

「悪い子だ」

小さく身を震わせたなまえのまん丸とした両目から大粒の滴がぽたり、ぽたりと落ちていく。「やっ、やだっ! 捨てないで、お願い……私、何でもするからっ」呟きながら崩れ落ちていくなまえの体を掬い上げる。……本当に可愛い子だ。なまえの姿を見つける度にどうやって啼かせてやろうかと……、あぁ――我慢ならぬ。

「なまえ……」

愛おしくそう呼ぶと、なまえがゆっくりと顔を上げる。彼女の焦点が定まるよりも早くに唇を重ねた。甘い甘い吐息に胸が熱くなる。

「っ、はぁっ…………んっ」
「悪い子にはおしおきをしなきゃならないね」
「んっ、」

着物の帯を解いていく。口づけを止めて慌てだしたなまえを壁際に追いやっていけば綻びが綻びを生んで気付いたときには素肌が露わになっていた。浅い呼吸を続けるなまえが酸素を求めて肩口を強く掴む。それを目に留めながら袖口の方から手を入れて脇腹を触ってやると崩れ落ちるようにして倒れかかってきた。くすぐったいらしい。快感の合間に差し込まれるくすぐったさはもどかしく、一歩違たがえればそれはもう快楽へ変わる。優しい触れるだけの刺激を執拗に続けた。

「……ん、どうした?」
「……ん、やっ、っ〜〜! まって、くださいっ……」

様々な刺激が繰り返されて性急過ぎた行為になまえの体が追いついてきていない。彼女はそれがわざとであると気付いているだろうか。愛おしくて堪らない。それならば……と腕を抜き取る。

「ではそのまま立っているといい」そう言って、一枚、また一枚、着物をすとんと落としていく。いざ立っているだけでいいと言われるとそれはそれで居心地が悪いらしい。震える体が行き場を失って耐えている様もまた……いい。最後の一枚を残して他すべてを落とした後はじっとりと余すことなくなまえの全身を見つめた。鎖骨の横にある小さな黒子も、肌着をずらしながら左右のお尻にある小さな痣も何もかもを確かめていく。指でそっとなぞると声が落ちてきて、下から見上げるとなまえが熱い視線を落としてくる。……わざとだよ、とは口にしなかったけれどなまえはきっともう気付いていることだろう。

「いい子だろう……? 私はちゃんと待っているよ」
「っ、」

なまえは私の視線から逃げるようにして袖口で顔を覆った。こちらはとうに限界を越えているのだがこうして焦らすのも悪くはない。きっと今の彼女は羞恥心で悶えているはずだ。……さぁ、どうする? 時間はあまりない、急かすように露あらわになった脇腹に手を置いた。決して動かすことはなく、ひた、ひたと触れていく。

膨らみの横に手を添えてそっと顔を寄せた。すでに立ち上がっているそこはふるふると震えている。

つん――と先に指先を置く。くに、くに。ほんの少しだけ動かした。たったそれだけで硬くなった先っぽに思わず笑みが漏れて、かりかりかりと夢中になって指を動かした。決して声は上げないけれど小さく震えるなまえの体が時折弾けるように跳ねている。相当良いのだろう。本当はここだけで何時間か責めたいところではあるが今日は見送ろう。

腰を落として着物の裾をほんの少しだけずらして中を覗き見る。そこはもう甘い香りが充満している。早く捏ねくり回してやりたいと衝動に駆られた。太ももにちゅっと唇を這わせるとなまえの腕が伸びてきた。

「まだ『待て』かい? ここをこんなにしているのに?」
「…………見ないでっ」
「嫌だよ。今すぐ食べたい。……早く『待て』を解いてくれるかい、ご主人様?」

すりすりと太ももに頬を擦り付けると、なまえの腰が落ちていった。壁に背を預けたままその場にすとんと座り込んで相変わらず私の頭を腕で制している。

「そんなっ恥ずかしいから……」
「えぇ……? こんなにしておいてそう言うのかい。私はもうそろそろ限界だよ。……でも、おかげでよく見えるようになったね」

膝を立てたまま体躯を曲げたなまえは大事なところがぱっくりと見えている。それにようやく気がついたらしく、慌てて膝を落とそうとするのを両腕で止めた。彼女がどんなに足に力を込めたところでもう閉じることは出来ない。そのままくるりと下に組み敷いて、腰を浮かせてなまえの大事なところがよくよく見えるように整えた。

見るからにつやつやとした透明な液体がしっとりと辺りを濡らしている。触れなくとも求められているのがよく分かる。そっと二本の指で割るとぷっくりとした蕾が出てきた。その下にある穴からはとろとろと愛液が溢れ出てきている。

「ひゃっ、あ……藍染たいちょっ、」
「藍染……? 私のことは惣右介と呼んでくれると嬉しいな」

ちゅっ、と蕾に口づける。

「んっ」
「……惣右介、と」

その横を指で優しく刺激する。

「あっ、」
「呼んでくれたらもっと気持ちよくしてあげるよ」
「っ、」
「これを……」

つん、と蕾を指で弾いた。

「っ、~~~~~」

なまえの腰が逃げるように動く。

「こりこりしてあげよう。……あぁ、それとも、」

その下の穴に2本の指をくいっと差し込む。

「あっ、ん……」
「こっちを捏ねくり回される方がお好みかな?」
「ん、あっ、あっ、」

指を入れたまま腹側を何度も刺激する。蕾を親指で弾いて刺激を与えてやると面白いくらいに腰が揺れる。なまえの顔が快感に耐えるように左右に揺れ動いた。声が漏れないようにと両手で口元を押さえる様子が堪らなくそそる。

「……なまえ」

親指を蕾の下、入り口の上においたまま、腰をぐっと前に押す。

「んああっ!?」

ここ一番の強い刺激だったらしい。顔を寄せたがそれどころじゃないらしく、グッ――、グッ――と押すたびになまえが腰を震わせた。

「……そう、すけ……たいちょ」

ふふっと思わず笑みが零れる。

「そこに隊長をつけちゃうのかい。可愛いね、……ご褒美をあげないと」

ぐぐぐ、2本の指を穴に突っ込んだまま、蕾をこりこりと指で弄ぶ。腹側に指を折ってなまえのいいところを探した。見つけたと同時に甲高い声が上がって『待て』を申しつけられるけれどももうそれを守る気は少しもない。彼女は気付いていただろうか。いつの間にか自分が『待たされて』いたことに。

「そう、すけっ、んっ……きもち、いいっ」
「それは光栄だね」

穴はもうぐちゃぐちゃでなまえの体は充分すぎるくらいにほぐれた。…………そろそろか。腰の紐を解いて、端から猛々しく反り立っていた竿をなまえの下の口に宛がう。今までとは違う感覚にハッ――としたのか、なまえが視線を向けていた。

「ご褒美、欲しいかい?」
「っ、」

そのまま先だけをぐりぐりと動かす。指とは違う柔らかな感覚がなまえを襲う。こりっこりっ、弾くように蕾の上を動かせば、なまえの表情かおはもうそれが早く欲しい、と訴えていた。

「ちゃんとおねだりしてごらん」

瞬間、ゆでだこのように首まで真っ赤に染まったなまえがそれでもなお、顔を隠すことなく必死でこちらを見ている。喉で詰まった言葉をなんとか告げようとぱくぱく開く口が愛おしく、待ちきれない。その声を枯らすほどに快感の渦に溺れさせ、私のこと以外が考えられないようにしてしまいたい。

「どうか……どう、か。入れてくだ、さい……」
「教えただろう……? 何を何処に、どのように、ほら…………」

困ったことに、二人の熱が納まる頃には丸一日が経過していた。

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