目覚めてから聞かされた、眠っていた五年間のこと。
まず、私の状態は普段通り、刀を使用したことによる代償であることが検査で分かったそうだ。眠る期間については恐らく使用時の力の総量に影響されるのだろう、と、三番隊隊長で私の能力に詳しい市丸隊長が申し上げた。それにより、私については様子見となっていた。
他について――
一、技術開発局の状況。追放されていたはずの浦原(元)隊長が戻ってきており、局長の座についたそうだ。おかげで涅隊長のワンマン体制が崩れ、大変憤慨している。……が、そもそも涅隊長を見い出したのは浦原隊長なので、そこのところはあまり強く言えない立場らしい。十二番隊の隊長は相変わらず涅隊長なので、今後はトラブルを避けるためにも、浦原隊長と呼ばない方がよさそう……間違えないように気をつけよう。
二、同じく現世へ出ていた(元)二番隊隊長の夜一さんも戻ってきた。私はほとんど関わりがなくて、話した記憶が……正直ない。隠密部隊だし、何より、四楓院家は四大貴族なのですすんで関わりを持ちたいと思わなかった。彼女の人柄はよく知らない。戻ってきたと言っても、夜一さんは特に何かの役職につくことはないらしく、四楓院家に戻って気ままに過ごしているそうだ。
三、最後に仮面の軍勢について。
実は、これについては、浮竹隊長の治療を終えた後、現世での活動を繰り返し、彼等との接触を果たした後に、山本元柳斎重國様に話をしていた。その際には、藍染隊長の……藍染惣右介という人物についても話を済ませている。
そのときの山本元柳斎重國様の表情は堅く、『藍染惣右介は無害である』という私の陳情について、大変遺憾であるとおっしゃられていた。…………当然だ。彼は、尸魂界に多大な損失をもたらしており、事実――海燕隊長を筆頭とした多くの死神を殺した。ただ殺すだけではない、彼は……魂魄を削り取り、酷い場合はその存在を消した。そんなことをやった人物なのに、罰せないで欲しいと願ったのだ。…………当然のことだろう。
「わしは、お主のことを買いかぶりすぎていたかのう」
「………………どうか、どうかお願い致します」
私に出来ることは頭を床に擦りつけ、何度も何度も願うことだけ。
「わしがどれだけの想いをしたと思っておる……」
「っ、」
炎がうねりを上げて部屋の中を横断する。全身が焼けるように痛い。決して炎に触れているわけでもないのに、肌が焼かれているようだった。
「お怒りはもっともです。ですが、彼はもう私の斬魄刀の力によって封じられております。それどころか、その力は今後の尸魂界に多大な貢献をもたらすことと存じます」
「…………そんなことはどうでもよい。おぬしは海燕のことを何とも思っておらんのか」
「…………」
「ルキアがこれを知れば、お主のことを恨もうぞ」
「……覚悟しております」
「…………」
必死の説得も虚しく、色よい返事をもらうことはできなかった。その後はそれに関して一切連絡がなかった。隊の状況については何の変化もなく。……最悪の状況を考えもしたが……でも、もしも本当に山本元柳斎重國様が『否』と判断なされたのであれば、藍染惣右介という男は即刻排除される運びとなり、すでに事は起こっていたのではないだろうか。もちろん、私も――でも、今はそうなっていない。……かと言って、直接に何かを告げられた訳でもない。不安が思考を支配する――正直、生きた心地がしなかった。
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体調がすっかり良くなって、明日には退院出来るというとき、病室に山本元柳斎重國様がご訪問なされた。ベッド脇で、荷物の整理をしていたときで、完全な不意打ちだった。あまりに突然の出来事で私は頭を下げることも忘れ、呆然と敬愛なるそのお方を見つめていた。……今日も大変素敵である。
「おぉ……元気そうじゃの、みょうじ副隊長」
「や……山本元柳斎重國様っ!! い……一体どうしてこちらへ!?」
「なに、浮竹の命を救った功労者を労ろうと思ったのじゃ。このくらいはしてもよかろう」
「っ、光栄の極みでございます!」
そこでようやく頭を下げることを思い出す。
「みょうじ副隊長」
「ハッ――!」
「わしは、お主の言葉を信じることに決めた」
…………え?
にっこりと、優しい微笑み。ここに入ってきたときの厳格な表情ではない、隊の話から逸れた、季節の話をするときのような、柔らかな顔をされていた。
「このわしを失望させてくれるでないぞ」
「はっ、……はい!」
なんて、なんてことだ! 山本元柳斎重國様に認められたということは、護廷十三隊に認められたに等しい。――つまり。
「喜ぶでない。藍染惣右介について、罪状は保留とする。今後、怪しい動きがあった場合、処分は免れ得ない。いいな」
「はい! もちろんです!」
「くわえて、その時は、お主も責任を取らざるを得ないじゃろう」
「承知しております。覚悟しております故……」
「あい、分かった」
力強く頷いた山本元柳斎重國様が、前へ歩み出る。私の目の前に立たれた。顔を見上げるのも失礼かと思い、そのまま頭を下げる。でも、ぽんっと肩に手を置かれて、反射的に顔が上がった。
「…………よくやってくれた」
何を――とは言われなかった。……だけど、その労りの言葉は、ここ最近ささくれ立っていた私の心に染み渡っていく。…………辛かったのだ。支えてくれる人がいたとしても、この逃げ場のない状況が、一人で抱え込み、どうすることもできない状態が、怖かったのだ。それを、分かってもらえたような気がして、頑張ったと慰めてもらったような気がして、とても――とても嬉しかった。
「っ、」
一筋の涙が落ちていく。それを目で追った、山本元柳斎重國様がふっ――と柔らかく笑う。とんとん、肩を二回叩かれて、また涙腺が緩みそうになった。
「……ありがとう、ございます」
「それはこちらの台詞じゃ…………かつての隊長達について、無事に話がついたそうじゃ」
「あ……」
「浦原局長から、詳しい話は聞いておる」
正直、仮面の軍勢の元隊長達は、尸魂界に帰還することについて後ろ向きだったのだが、……どうやら浦原局長がこの五年の間で説得をしてくれたらしい。
「では!」
「あぁ、希望するものについては、尸魂界への帰還を許可しておる」
「あっ、ありがとうございます!!」
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「…………ということは」
山本元柳斎重國様がいなくなった救護室でぽつんと独りごちる。
「鳳橋隊長が帰って来られる……!」
ん……待てよ? じゃあ、市丸隊長はどうなるの……? 副隊長になるとか? そしたら、私は……。副隊長じゃなくなるよね。ん~と、あれ、じゃあもう私が三番隊にいる必要はなくなると…いうこと?

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