なまえが虚圏に移り住んでからしばらくが経ち、お気に入りの庭園を散歩するのが日課の一つになっていた。そこは藍染が彼女を想って造り上げた場所であり、隣り合う邸宅にもまた、同じ想いが込められている。なまえは地下に用意された一角を殊のほか気に入り、今ではそこを本宅として過ごしていた。
普段は藍染と二人きりだが、その場に建てられている別宅には従者が住んでおり、身の回りのお世話をしてくれている。不便なことはなくとても快適な生活なのだが……。ただ、欲を言えば……。気軽におしゃべりができる相手が欲しいなぁ……となまえが零したところ、藍染が早々に手を打ったらしい。
今日は、その友人が庭園に遊びに来ていた。
「あれ? 惣右介は尸魂界に向かったって聞いたのに……。まさか置いていかれちゃったの?」
池の手前で、白髪の男が一人、棒立ちになっていた。長い髪を高く一つに結んでなお、その髪は腰よりも長く、ひときわ目を引く。どこか寂しげなその背中を見つけたなまえが声をかけると、彼は振り返ることもなく、淡々と答えた。
「…………私は疑いの元だからな」
「……ねぇ、それは惣右介が言ったの?」
なまえが隣に並ぶと、ようやく男は動いたが、返事はない。
「……水月。主だからって、遠慮しなくていいんだよ?」
彼の名は――鏡花水月。藍染の斬魄刀である。その顔立ちは持ち主である藍染に似ているが、体つきや纏う雰囲気はどこか異なっていた。けれど、優し気な眼差しは藍染にそっくりで、なまえはいつも不思議な感覚を覚えていた。
虚圏の地下空間は、特殊な技術によって造られている。その恩恵のひとつが、斬魄刀の実体化だった。その効果はすべての斬魄刀に及ぶため、鏡花水月だけでなく、なまえの斬魄刀――鴻鵠にも与えられている。おかげで彼女は、ふらっと人の姿で出かけてしまうことがあり、なまえは少々困っていた。だが、あまりにも楽しそうにしているものだから、つい目をつむってしまうのだった。
「代わりにならないかもしれないけど……私から謝るよ。ごめんね、水月」
「ありがとう。……だが、主が気にする必要はない」
「そう……?」
「前にも言ったかもしれないが、私は『あれ』」が嫌いなのだ」
「嫌いって……。自分の主なのに」
「仕方がない。あれは強い。私は一度もあれに勝てたことがない。我ら斬魄刀にとって、力こそがすべて。弱き者は主に従うだけだ」
「ふぅん。なんだか、悲しいね。私は鴻鵠の主だけど、彼女のことを尊敬しているし、頼りにしているよ?」
「それは良いことを聞いた」
庭園の松の木の向こう側に、鴻鵠の姿があった。漆黒の髪が艶やかに光る、その姿は美しい。紅を引いた口元がきゅっと上がると、目尻が柔らかく下がる。穏やかな笑みのあと、開かれた青い瞳がシトリを見つめた。歩くたびに、一つに結ばれた長い後ろ髪が緩やかに揺れる。その長さは腰よりも下に及び、肌は陶器のように白い。
――と、そこまで視線で追って、なまえはふと思う。
隣に立つ水月と鴻鵠を見比べながら、二人はまるで表と裏のように、『白と黒』だと。
「…………どうしたのじゃ、なまえ?」
「あっ……ううん。なんでもないよ。散歩は楽しめた?」
「それはもう。長い間、同じ空間に籠りきりじゃったからのぅ……見るものすべてが新鮮でとても楽しい」
「良かった……!」
隣に並んだ鴻鵠が優し気に微笑むと、なまえは鴻鵠を仰ぎ見ながら言う。
「鴻鵠ってこんなに背が高かったっけ?」
「まぁ、こんなものじゃ。わらわよりも、そこの鏡花水月の方が頭一つ高そうじゃ」
「……確かに。羨ましいよ」
「背などに何の意味がある。私の主は、そのようなことを気にしない。主も、同じだろう?」
「うん、そうだね」
――確かにそうだ、とシトリは言葉を飲み込んだ。だが、頭にあったのはまったく別のことだった。
水月とこうして話すようになってから、もう数週間が経つ。……にも関わらず、距離が縮まった気がまるでしない。見えない壁があるような――そんな感覚に、なまえはずっとヤキモキしていた。
「ねぇ……水月、そろそろ『主』じゃなくって、『なまえ』って呼んでくれない? わたしたち、もう十分仲良くなったでしょう?」
「……いや、私は……」
水月が首を横に振ると、くすり、と鴻鵠が小さく笑う。その眼差しに映るなまえの顔には、「今日は絶対に折れない」とはっきりと書かれている。鴻鵠はそんな娘が可愛くて仕方がなかった。
「諦めなされ。今日のなまえは一味違うようじゃ。これは首を縦に振るまで返してくれぬ顔じゃ」
「だが…………っ、それでは私の主が……」
緩やかに首を横に振った鴻鵠は、ため息をひとつ吐く。
「あと一押しかの……」
そう言って鏡花水月の耳元へと歩み寄り、ひとつの悪知恵を吹き込んだ。
「『あれ』の悔しがる顔が見られると思えばよい」
ぱちり、ぱちり――水月がゆっくりと瞬く。ややあって意図を理解した彼は、悪戯を仕掛けた彼女と視線を交わし、どちらからともなく笑みを零した。少し離れた場所でその様子を見守っていたなまえは、親しげに言葉を交わす二人の姿に、「仲良くなってくれてよかった」と満足げに微笑んでいた。
もっとも、その会話の中身までは知る由もないのだが――――
:
:
尸魂界での一仕事を終え、藍染邸に戻って来た。正門を潜り、玄関の扉を開いたところで足が止まる。
「お帰り、惣右介」
妻が――、なまえが――、恭しく出迎えてくれたのである。
「ただいま、なまえ」
なまえを抱き寄せると共に、気配を感じ、視線を後ろに向けた。少し離れた廊下の隅に立ち並んでいたのは、見慣れた二人――白髪と黒髪の男と女だった。
「今日の護衛は、鏡花水月と鴻鵠か……斬魄刀のみでは手薄過ぎると言っているだろう?」
「この虚圏で、鏡花水月と鴻鵠に立ち向かえる人……いえ、破面が存在すると思う?」
「……確かに、と言いたいところだが。滅却師の件がある。せめて、ギン、要、ウルキオラの誰かは付けておくべきだ」
「はぁーい」
「水月、鴻鵠。次からはそのように」
一礼を交わした二人が斬魄刀に戻ろうとしたそのとき、なまえが言った。
「水月、今日は楽しかったよ。またおしゃべりをしようね」
そこで鏡花水月は、鴻鵠から仕込まれた悪知恵をさっそく使う。
「私も楽しかった、なまえ。今度は星空の下で語らおう」
「うん、じゃあまたね」
藍染の瞳孔が真ん丸に見開いたのを確認した鴻鵠が、フッ――――とほくそ笑みながら消えていく。鏡花水月も、藍染の動揺する姿を目にして満足気に微笑んだ。スッ――――と二人は斬魄刀に姿を変え、各々の主の鞘に戻っていく。なまえはそっと鍔をひと撫でしながら、戻った鴻鵠の重さを確かめた。
なまえが顔を上げると、一刀の斬魄刀を手に取った藍染が、真剣な顔で剝き出しの刃横に親指をかけていた。
「ちょっと? 何やってるの……?」
「…………」
「まさか、折るつもりじゃないよね?」
「…………まさか」
フッ――とうすら笑った藍染をなまえは疑い深く見つめる。
「そうだよね。惣右介は大人だからそんなことしないよね?」
「当然さ。斬魄刀如きに嫉妬などしない」
(嫉妬してたんだ…………)
なまえは少しだけ呆れつつ、藍染に気付かれないくらいほんの少しだけ口角を上げる。彼の愛を一心に受けていたとしても、こうして嫉妬してもらえるのは嬉しいものだと彼女はちょっぴり喜んでいた。だが、それがまずいことに……そんななまえの浮足立った気配が、鏡花水月と過ごした時間によるものだと誤解したのか、藍染の機嫌が急転直下する。
「さて。私が身を粉にして働いている間、鏡花水月とよろしくやっていたなまえ? 君はこれからどうするつもりかな……?」
(…………なんか、すんごい根に持ってる)
「もちろん。旦那様のお傍についてまいります」
なまえがおどけて言うと、藍染は満足気に笑う。言質を取ったのだから彼にとっては勝ったも同然である。
「……では遠慮なく。今夜はしっかり頼むとしよう」
「………………ん?」
遅れて出迎えに顔を出した檜山を見つけた藍染が言う。その声色はとても明るい。
「檜山。今日は奥部屋に泊まる」
「承知いたしました。しっかり準備いたします」
(…………あれ、なんか、惣右介の声が弾んでるんだけど)
「なまえ、夕食は食べたのかい?」
「……え? ううん。一緒に取ろうと思っていたから……」
「では、夕食後にしよう」
(…………これ、まずいのでは?)
深く頭を下げた檜山がそそくさとその場を後にする。その様子を目で追いながらなまえは言う。その顔は僅かに引き攣っていた。
「…………っ、待って、惣右介。私、明日、尸魂界に行くんだよね……?」
「あぁ。そうだよ」
「じゃあ、早く寝ないと……」
「ん?」
「ん、……じゃなくて! ︎︎早く寝て、しっかり備えないといけないでしょ?」
「君は何を言っている? さっき自分で言っただろう? ︎︎私の傍についていると」
「そっ、それはあくまでっ」
「…………嫌なのかい?」
「っ、――惣右介! ︎︎卑怯だよ!」
ぐすんとわざとらしく泣き真似をした惣右介が、悲しげな目で見てくる。……くそう。心にも思ってないってわかってるのに、この目には弱いんだよね……。
「…………分かりました」
「……嬉しいよ。今夜はいつも以上に良くする」
「っ、もうっ! ︎︎ばかっ!!」
ふふっと上機嫌に笑った藍染がなまえの身体を軽々と持ち上げる。なまえの上体がふら付くと、背中に腕が回ってしっかりと支えられた。そのまま、ちゅっと頬に口付けがひとつ。
――それを合図に。
首筋へ、鎖骨へと、唇が落ちていく。ちゅっ、ちゅっ、と夢中に繰り返される熱。慌てたなまえが止める間もなく、着込んでいた着物の襟が引っ張られて大きくはだけた。緩んだ隙間から除く谷間はほんのりと赤く色付いている。こくり――藍染の喉が鳴った。
「…………すまないが」
静かに響く音になまえの意識は集中する。
「……待てそうにない」
そう言うと、藍染は細く長い指先を乳房に沿うように忍ばせる。ぐぃっと襟元が掘り起こされて、ぽろん――片乳がその場に露わになった。
「っ、…………なっ!?」
恥ずかしさの余り、顔を真っ赤に染め上げたなまえが藍染を見ると、彼はにんまりと悪びれた笑みを浮かべてとても楽し気だった。この人って人は……! なまえは足をバタつかせて抵抗するが、藍染は余裕の笑みで、目元を三日月にしてなまえを見返していた。
「心配せずとも、誰にも見られていない」
確かに、近くに他の誰かの気配はなかった。なまえはそこに安堵はしたが、「いや、待って。そこじゃない。そうじゃなくって」と丸め込まれそうになった思考を慌てて切り替え――終わるよりも先に、藍染が露わになっていたなまえの乳房を弄び始めてしまった。玉のように美しく柔らかな肌は触り心地がとても良い。それを堪能するように、藍染の手のひらは優しく乳を揉みしだく。ときおり通り過ぎる乳首の先端が、どんどん固くなっていく感覚を肌で感じながら、藍染はなまえの反応をじっと見て楽しんでいた。
「…………こういうのも好みだったのかい?」
「っ、そんなわけないでしょっ! もうっ! 変態!!」
「…………変態? じゃあ、ここをビンビンに立てている君はどうなのかな?」
つん、っとはじかれた先端に、なまえの声が上がる。
「――あっ♡」
「「…………………………」」
「えっちぃ声を出して、みんなに見てもらいたいってこと? 僕は、嫌なんだけど…………でも、まぁ、どうしてもっていうんだったら……」
「っ、そんなわけないでしょ! 惣右介の意地悪!」
ふふっ、と笑った藍染の目が笑っていない。
「…………これが意地悪? ほんとの意地悪ってやつ、またやってあげようか」
「まっ……!」
かぷり――藍染が先端にかぶりつくと、固く敏感になったところを器用に舌で舐め回す。
「ふっ♡ はぁっ♡ やだやだそれぇっ♡♡♡」
気持ちよさのあまりに仰け反るなまえの身体を支えたまま、藍染は歩き出すと、手近な部屋に連れ込んだ。もはや止めることはできない。
「布団がないから、立ったまま…………いいね?」
耳元で囁く重低音になまえの全身がぞくりと色めく。
(あ…………やばい、声だけでイキそう…………)
藍染の声はなんだかよく分かないけれど特殊で、時折声を聞いただけで子宮の奥がぎゅんっと縮む。本人はそれを分かっているのかどうかは分からないが、狙ってやってこられたらなまえはほぼ毎日遊ばれる気がするので聞かないようにしていた。
今回も、なまえの子宮はしっかりと反応してしまい、なまえの下半身は疼いて疼いてたまらない。中途半端な快楽で頭はもうぼーっと霞んでいて、思考は鈍っている。藍染の顔と声だけを頼りに、なまえはふら付きながら、藍染にしがみ付いた。足が震えて立っているのも辛い。
「おやおや…………」
「そう、すけ……」
「ん、…………なまえ♡」
見上げるなまえの唇を奪った藍染は目を細めながら喜びを噛み締める。何度も何度も角度を変えながら、なまえの舌を絡め取る。腕の中で必死に答えようとしてくれる愛しい人が愛しくて愛しくて狂ってしまいそうだった。
同時に、なまえに会ったその瞬間から立ち続けている『あれ』の限界が近付いていた。藍染はなまえを前にすると我慢が効かなくなるのはどうにかしなければならないと思っていたが、そう思う度に、「まぁそれは後で考えよう」と後回しになる。もちろん、今回もその例に漏れることはない。
(…………そんなことよりも、今日もなまえが可愛い)
藍染がなまえの帯を解いていくが、解き切るまで待てなかった。緩んだ布地の隙間から縫うように手の平が進む。なまえの素肌――太ももを這い上がり、しっとりと濡れた蜜壺に迷うことなく指を這わせた。
「――――っ♡」
聞かなくても分かるくらいに分かりやすく、なまえの顔は『気持ちいい』と書かれている。それが可愛くて堪らない藍染は耳元で責め立てる。
「えっちななまえが身を捩って啼くところをもっと見たい♡」
「んっ、あっ♡」
慣らしなんてものは必要なく、ずぶずぶに濡れたなまえの蜜壺は、藍染の指を容易く咥え込む。
「…………いい子だ♡」
ぐいっとなまえの片足が上に上げられて、穴が大きく広がる。そして、なまえ の身体は藍染の腕でかっちりと固定された。
「では、遠慮なくイかせてあげよう……あーそうだ! ほんとの『意地悪』ってやつをやってあげないといけないね……?」

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます