「なまえちゃん、今日は一緒に食べられそう?」
「あ~、えっと。今日も約束が……」
そう答えれば、ふーん、そっかぁと振り返って行ってしまうクザンさんの後ろ姿を見つめる。その背中が廊下を曲がるところを確認して振り返り足を踏み出した。
スモーカーさんに初めて昼食に誘われたあの日以降、昼はずっとスモーカーさんと一緒にとっていた。もちろん遠征でいないときは無理だけど、本部にいるときは毎日だ。理由は聞いていない。……し、聞く度胸が私にはない。できれば向こうから言い出して欲しいんだけれど、スモーカーさんがそんなことをするわけがない。彼は、彼はきっと優しすぎるんだと思う。重荷を背負わせないようにと、決して一線を越えようとはしなかった。
「今日はカレーの日ですか!」
「おまえもカレー食うのか?」
「はい! カレー大好きです!」
ふふ、と笑って返し、スモーカーさんの後ろに並ぶ。いつの間にか海軍の食堂の日替わりメニュ―を食べるのが日課となっていた。思っていたよりもメニュ―が豊富で1ヶ月は被らないからとっても嬉しい。
「おまえがそうするなら、俺は……」
「えぇ! いいじゃないですか、一緒! おそろいです、おそろい!」
「……そうか?」
「はい!」
半ば押し切るようにして、強引にそう言い寄れば少したじろいだスモーカーさんが頷いてくれる。こうして話ができることが嬉しかった。まぁ、なんでもいいかと注文を済ませるスモーカーさんの横顔をジッと見つめる。好きです、スモーカーさん。本当に大好きです。
言えない想いは日に日に募っていくばかりだった。
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ある日のこと。訓練を終えて本部に戻る前にベンチで休憩していたときだった。
「なまえさん、訓練ですか?」
「あ、コビー! うん、もう終わったよ」
「お疲れさまです。隣、いいですか?」
「うん、どうぞー」
ふぅと息を吐き出しながら隣に座ったコビーの頬にはうっすらと土がついていた。額には汗。
「コビーも訓練?」
「はは、訓練っていうか、特訓ですかね。ガープさんにがっつりと」
「あー……それはお疲れ様、だね~」
にっこりと笑う。それからしばらくここ最近の海賊の情報だとか、本部周辺海域の話をして、話がちょうど終わったなぁと腰を上げようとしたときだった。
「なまえさん、ちょっと踏み入ったこと、聞いていいですか?」
「踏み入ったこと?」
「……なまえさんってクザンさんの部下ですよね?」
「ん、うん。私の上司はクザンさんだよ?」
どうしたんだろう今更、と思いつつコビーの次の言葉を待った。
「最近、……というか、始めからだと思うんですが。クザンさんと一緒にいる時間よりも、スモーカー中将と一緒にいる時間の方が長くないですか?」
それって、どうなんですか?とコビーがジッとこちらを見つめてきた。
「え、……そんなことないと思うけど……」
「いや、これはちょっと僕ら下の者たちで話題になっているんですけど、なまえさんとスモーカー中将ってつき合っているんですか?」
「へっ!? いや、違う違う違う! つき合ってないよ!」
「でも、端から見たらそうとしか……」
「……」
まぁ、少なくとも私はスモーカーさんのことをそういう目で見ているから完全に否定はできないんだけど。スモーカーさんの方の気持ちは、本人から聞いたことないからはっきりと分からない。でも……。こうして毎日相手をしてくれるということはやっぱり好意を持ってくれている……いうことじゃないの、かな?なんて思っていたりする。
「なまえさん?」
「スモーカーさんと私はつき合ってないよ」
ずきん、と痛む胸。コビーに悟られないように拳を握りしめる。分かってる。それが現実だってことぐらい。
「そうなんですか、分かりました。みんなにはそう伝えておきますね。では」
もしかしたらコビーは、私に気を使ってくれたのかもしれない。私の知らないところで立てられている噂話をきっぱりと否定することでそういう目で見られないように……と、考え過ぎかもしれないけど。
「うん、じゃあね」
軽く手を振ってコビーを見送る。一人ベンチに残された私は考えを巡らせていく。このままじゃ、だめ……なんだろうなぁとぼんやりとそう思った。

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