「マルコさん……」
町中をブラブラと歩いていると急に後ろから話しかけられた。いつもなら警戒しすぐに構えるところだが、その声はあまりにか細く、透き通っていた。構える必要はない。瞬時にそう思った。……とはいえ、今回立ち寄った島に知り合いがいるとは思えない。偶然知り合いの海賊に会うこともなくはないが、あいにく、こんな透き通った声を持った知り合いはいなかった。
結局、一体誰だぃ? という考えに行き着いて、ゆっくりと声がする方へ振り向いた。マルコの捕らえた視線の先には黄色いワンピースをなびかせた少女が立っていた。なぜ自分の名前を知っているのか? まったく心当たりがなかったマルコは額に皺を寄せた。その様子を見た女性が右手を口に当てて、クスッと笑う。その動作はとても落ち着いていて、マルコは思わず目で追ってしまった。
「私のこと、覚えていらっしゃいますか?」
その問いかけに頭をフル回転させる。右手で顎を撫でながら考えたがいまいちピンと来ない。その様子をずっと見ていた少女は5歩前へ出て、マルコのすぐ側に立った。ゆっくりと、マルコの腰の布に手を伸ばす。
「あの時と同じ腰布……」
破れたまま……新しいものに換えないのですか?と彼女は言った。
「なぜ、知ってるよい?」
「それは私がこの布を破かせた張本人だからですよ」
彼女はふふふと小さく笑った後、ワンピースの肩の部分を少しずらした。白い肌が現れる。そこには生々しい傷があり、それを見たマルコの片眉がわずかに動いた。
「……お前、あの時の女の子かい?」
「……はい」

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