「あ、あのっ」
先ほどとは違う人肌の暖かさ。触れられた手が一瞬で熱くなる。恥ずかしいとマルコに訴えても離してもらえない。うぅ~……どうしたものかと唸り声を上げていた。
「なまえ……」
「え、は、はいっ」
初めて名前を呼んでもらえた。顔を上げてマルコを見ると、マルコは少し悲しい顔をした。その顔に私の眉も垂れ下がる。その後にやんわりと優しく微笑みながら言った。
「……ありがとう」
そう言ったマルコの目は真剣そのもので、まっすぐに私を見ていて……
「……」
その言葉の意味を考える。
「……はい」
言い終えると、振り返って再び海に向かっていくマルコに叫ぶ。
「マルコさん。お元気で」
振り返ったマルコはもうすでに鳥になっていて、こちらを見て目を細めるだけだった。
「マルコさん……」
飛び立った青い鳥は私の上を旋回したあと遠くの船の甲板に吸い込まれるように消えていった。
「あなたと出会えて、私は幸せでした……」
自分の体を支えきれなくなった私はその場にしゃがみ込む。流れ続ける涙は拭いても拭いても溢れてきて。どうしようもなかった。私も気持ちもどうしようもないものになっていた。
「――――――ッ」
好きだった。本気で好きだった。初めてだった。人をこんな風に愛したのは。でも、私の愛した人は、普通の人は愛してはいけない人だった。海賊だった。とってもかっこよくて、たくましくて、優しくて、すてきな海賊だった。
「マルコさん……」
止まらない嗚咽を必死で押さえながら名前を呼ぶ。海を見るともうそこには船はなくて、彼とはきっともう二度と会うことはできない。そう分かってしまった。あの日のあの時間のままのマルコさんが目の前にいて、どきどきする胸を押さえて、冷静を装って話しかけて。はにかむ彼が見れて。私はそれだけで幸せでした。
マルコさん……
私の方こそ……
「あり……がとう……」
そして、さようなら――
150211 End.
Afterword
大人の恋を書きたくて書きました。なまえの想いはしっかりとマルコに届いています。でも、マルコは優しいからこの思いには答えません。自分が海賊で、背負っているものは一般の人とは違っていて。恋愛も普通の人と同じようにできない立場にある。生真面目で親父のために生きると決めているマルコは自己犠牲で成り立っていて。自分が幸せになる道は選びません。まして、なまえを巻き込んでしまっては最後になまえを泣かせてしまう結果になる。
マルコは嬉しかったんです。でも、振り向かないと決めているんです。強い志の元に生きるマルコが皆様に愛されますように。
(もちろん、デッレッデレで幸せそうなマルコも大好きです!)

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