50:召使いの無我夢中

「サボっ、さぼ…………、っ……あっ、まっ、」

 

ばちゅんっ――、ばちゅんっ――

 

「なまえ……」
「あ”ぁっ――!!!!????」
「なまえっ、」

 

ばちゅんっ――、ばちゅんっ――

 

ばちゅんっ――、ばちゅんっ――

 

ばちゅんっ――、ばちゅんっ――

 

「っ、~~~~~」
「くっ――」

:
:

「さぼ、だめ……これ以上は、やぁ……だめ、やっ」
「本当に? でもまだまだこっちは……」
「うっ、んんっ――やぁっ、いじわる!!!!」
「なまえ……可愛い」

:
:

「……目、覚めたか?」
「…………ん」

ちゅ――

「なまえ……まだ足りない……」
「…………え?」
「離れてる間が長すぎた」
「長いって……、また会うわけでもなかったのに?」
「……俺は自分が思っていたより往生際が悪かったらしい」
「そもそもどうして私なんかのこと……」
「自分を卑下するな。なまえは可愛い」
「っ、やめてよ、恥ずかしいじゃんか!」
「なまえは可愛い」
「っ、もう! サボ!」
「これでもさんざん夢の中で抱きまくっていたんだが……」
「…………?」
「全然満足できねぇ……」
「ん……ちょ、もう朝だよ……?」
「大丈夫。今日一日の予定を空けた」
「…………さぼの鬼畜〜〜!!」
「でも、応えてくれるだろう?」
「…………」

ちゅ――

:
:

目覚めたら、辺りは真っ暗だった。

「ん……」

シーツが擦れる音がして、ゆっくりと視線を巡らせていく。暗闇の中、私の隣でもぞもぞと動く影。そっと手を伸ばす。想像よりもずっと柔らかだった彼の髪に優しく触れた。

少し、喉が乾いた。あと、お腹も空いた。

今、何時だろう?

ギシリ――と木製ベッドが軋む。

「……なまえ?」

むくりと起き上がったサボが私の横に座った。

「お腹空いてない? 私ペコペコなんだけど……」
「あぁ……腹減ったな」
「よかった。じゃあシャワーを浴びて……」
「じゃ一緒に入るか」
「…………へ?」

待って、待って。この体力馬鹿はもしかしてまだ足りないとかいうのか? ……いや、押しつけはよくない。単純に一緒に入りたいだけかも……

「俺が洗ってやるよ」
「そんな、いいよ。狭いし、1人ずつ入った方がいいでしょ?」
「いいじゃねぇか。俺が洗えば、隅から隅まで綺麗にしてやるし、ついでに最高な気分にさせてやれるぞ?」
「っ、この変態! 貴方の頭の中はどうなってんのよ!」
「俺の頭の中……見たいか?」

まずい、嫌な予感が――

「いいえ、結構です!」
「遠慮すんなって。今から見せてやるから……」
「まって、サボ! ごはん食べないと私死んじゃう!」
「……………………」
「そんな顔してもだめだからね! お腹空いてくたくたなんだから」
「…………ほんとうに?」

サボの手が首筋を優しく撫で上げる。

「やめてってば」

悔しいことに気持ちがいいのは事実なので強く反論はできない。彼はきっとそれに気づいているのだろう。

「なまえ……好きだ。大好きだ」
「っ、」
「愛してる。この瞬間、このひとときだけでもいい。俺の事を見てくれ。この哀れな男のことを――」

眉尻を落としながら、縋るように抱きしめられる。

その後、私はサボの背中に爪を立てながら何度も何度も繰り返される快感の狭間で彼に思いを告げ続けた。サボ大好き――まるで魔法のように、その言葉を聞くだけで彼の熱は持続し続けた。彼の強い執着が私を捕らえて離そうとしない。私は狂ったように続けた。

「好きぃ……サボ、大好きぃ……」
「なまえ、あぁ、俺は幸せ者だな。なまえ、大好きだ。ずっと傍にいて欲しい。離したくない……」

サボはずっと私のことを見ていた。

:
:

明朝、目を覚ましたサボの隣には、彼の腕の上に頭を置いて気持ちよさそうに眠っているなまえの姿があった。

「……夢、じゃないよな」

サボがぼーっとした頭でごちる。試しに……と自分の頬を抓ってみるが、ちゃんと痛かった。視線を戻したところには変わらず無防備な寝姿で横たわるなまえがいる。

――幸せだ。幸せ過ぎて怖いくらいだ。このまま、なまえを連れて帰ることはできないだろうか。

彼はなまえの横髪をくるりくるりと弄びながら、一考していた。

ドラゴンさんなら受け入れてくれるだろう。他の皆も、彼女が能力をうまく扱っているところを見れば納得すると思う。何より、俺のパートナーとして連れて帰るのだ。反対のしようがない。あぁ――「最初はなから私たちの意見なんか聞く気なかったよね?」コアラの声が今にも聞こえてきそうだ。……まったく、その通りだな。

サボは薄っすらと笑みを作った。

――と、

「…………ミホークさん」

彼女の言葉ははっきりとサボの耳に届いた。

彼はそれまで触れていた手を止め、ゆっくりと離していく。

…………そうだったな。なまえにはもう……、他に想っている人がいる。ただ想っているだけじゃない。彼女は困難に立ち向かってでも、その男に『会いたい』と願っている。人はそれを切望という。その気持ち……分からなくもない。俺の場合は、切望を抑え込む方の感情の方でいっぱいいっぱいだったが。

「………遅すぎたんだな」

すぐに追いかければよかった。すぐに奪いに行けばよかった。そうすれば彼女の心を取り戻すことができたかもしれない。

サボは、ぐっと握りこぶしを作った後、しばらくの間なまえのことを見つめ、ある時、吹っ切るようにベッドから降りて行った。その顔は、普段の、周囲に見せる彼の顔に戻っていた。

:
:

翌朝になって我に返った。

すでに先に目覚めて支度を済ませていたサボが、新聞を片手に優雅なひとときを過ごしている。私はまだベッドの上だった。いつもの百万点の爽やかな笑顔を浮かべた彼が「寝坊助だな」と笑う。誰のせいだと思っているのか、と逡巡しそうになって慌ててやめた。ここでこの二日間のことを思い出してはいけない。

「飯、食うだろ?」
「うん! もうお腹ぺこぺこだよ~~」

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