いつものように仕事終わりにBarに寄って、いつものようにカウンターに座って一息ついていた夜。なまえとなまえの女の友人数人とそれと見慣れない男の客が数人、店内に入店してきた。3人と3人が向かい合うようにして同じテーブルに座る。
「初めまして、なまえと言います」
「はじめまして~なまえちゃん。よろしくね」
会話の出だしはそんな感じ。飲み物を出し終わったマスターがカウンターに戻って来て視線を上げると「どうやら合コンのようですね」と聞いてもいないことを言った。そんなもの入って来たときから分かっていた。
なまえは若い。……おそらく。確かな年齢は知らないが、一回りは違うように見える。だから合コンの一つや二つしてもおかしくない。ただ、なまえは好きな奴がいると言っていた。しかしなぜか合コンの場に来て参加している。なまえは嘘を言うようにも、その好きな人以外と付き合って遊ぶような女にも見えない。つまりだ、友人にしぶしぶ付き合って人数合わせで来ている、そういうことになる。
それはトイレに行く際に席を立ったときに覗き見たなまえの表情でも分かった。いつもあのグループの中で見せている笑顔ではない、控えめに言ってお上品に、まぁ悪く言って苦笑い、つまらなさそうにして笑っていた。
用を済まして席に戻るとまた一段と騒がしくなっていた。あまりにうるさいので今度は遠慮することなくジッとその様子を見つめた。どうやら何かのゲームをしているらしく、負けた奴が飲む、そういうルールらしい。そして先ほどからなまえは負け続けているように見える。
「またですか!」
もうやめたいと言ってしまわない辺りなまえらしい。周りにいるなまえの友人たちは止めることなく見ている。そろそろ誰かが止めてやらねば……それぐらいなまえは飲み過ぎていた。そしてついに、なまえの頭が垂れ、ソファの上へとなだれ込む。
「あちゃーなまえ相変わらず弱いねぇ」
「なまえちゃんダウン?」
「ごめんなさい。少し休ませて下さい」
「あーいいよいいよ。ちょっと休憩したら送ってってあげるから寝かせてあげなよ」
どうも一緒にいる男たちが胡散臭い。なまえと話をして楽しんでいるようには見えなかったのだ。むしろその後のことを考えてたち振る舞っているように見えた。……どうする。なまえの友人たちはそうだねと軽く考えているように見える。おそらく彼女たちもそれぞれこの後誰かと……と考えているに違いない。でもなまえは違う。嫌々来ているのだ。そんな彼女をどうして放っておけるというのか。
机の上に両手の平をおいて立ち上がると側にいたマスターが「ようやく動くんですね」とにっこりと笑った。「余計なお世話だ」そう言い返し、札をおくと、「お気をつけて」と柔らかな笑い声と共に返事が返ってくる。またこれだ、こと恋愛に関しては誰もがそうやって俺のことを見守るようにして見つめてくる。
俺はそんなにうぶな男ではない。そう自分に言い聞かせるようにして、なまえの座るテーブルへと足を進めた。そうして、突然の中年男の登場にあっけに取られている5人を横目になまえの体を抱え上げて、「悪いが先に連れて帰る」とまるで元々の知り合いかのように言ってのけて店を後にした。店から出て、タクシーを拾って、そこまで来て気づいたこと。これでは俺の方こそなまえを持ち帰る機会を待っていたようではないか、と。
「お客さん、行き先はどうしましょう?」
言葉に詰まったのはなまえの家の場所など知らなかったから。今更家はどこかと店に戻って友人に聞くわけにもいかない。おそらくここから遠くはないだろうが、それにしてもスマホを見ようにもロックが掛かっていることだろう。もう、他に案はない。
「駅前にある○○マンションで」
「はい。かしこまりました~」
まさか本当にお持ち帰りする羽目になるとは夢にも思っていなかった。

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