染めたくなる君の唇

本日運命予定日

あの駅での一件以降、あのBarに行っていなかった。……行けなかった。もしに会ったら……どんな顔でどんな風に声をかければいいのか、それが分からなくて行けなかった。我ながら情けない。車の中から外を見ながら取引先に向かう道すがらにそんなことを考え…

道化の滑稽死

昨日はBarでと話をして、のことを色々知った。それも本人から直接だ。その日の夜は帰宅してからというもの嬉し過ぎてなかなか寝付けなかった。自分でも柄じゃないとは思う。これが人を好きになるということなのか、と戸惑いもした。そして今まで恋愛という…

耳を塞いでも心音が五月蝿い

女性にそこまでさせてしまってそれでも帰ると言い切れるほど薄情な男にはなりたくなかった。まして彼女は想いを寄せている相手だ。そんなことできるわけがなかった。「まぁまぁとにかくお座り下さい」と黙り込んでしまった二人の間を取り持つようにしてマスタ…

淑やかな嘘だった

シャワーを浴びてリビングに出てくる。寝室の扉を開けばベッドの上にはが横になって眠っている。どうやら熟睡しているようだ。……どちらかと言えば泥酔が的確かもしれないが。しかし、部屋に入れたはいいがここからどうしたらいいのか。今夜はソファで寝れば…

淫らな視線

いつものように仕事終わりにBarに寄って、いつものようにカウンターに座って一息ついていた夜。との女の友人数人とそれと見慣れない男の客が数人、店内に入店してきた。3人と3人が向かい合うようにして同じテーブルに座る。「初めまして、と言います」「…

背中の爪痕すら艶やかなのに

時々聞かれることがある。人のことなんだから放っておいて欲しいと思うが、ときどきそういうお節介な者はいる。「社長って結婚とかされないんですか?」……とか、とはどういう意味なのか。まぁ深く話すつもりはないからそこは突っ込まないが。「興味ない」そ…

鋭利な感情が融けていく

に好きな人ができたらしい。俺にとって、それはここ数十年の中で一番大きなスクープだった。「へぇ! も恋する歳になったんだなぁ!」カウンター席に座って、ひとり静かにグラスを煽りながら、店の片隅にあるテーブルに座るとあるグループの会話に耳を傾ける…