入り組んだ路地裏の奥に逃げ込んだ。はぁはぁと息を吐き出して乱れた呼吸を落ち着かせる。隣を見るとあの男が壁に張り付いて角の向こうを見ていた。息を潜めていたらバタバタバタ――とまた足音が近づいてくる。
逃げないと! 走りだそうとしたら男が腕を掴んでシーと言った。言われた通り口を閉じて息を殺す。男たちは私たちのすぐ側にある十字路に集まっていた。
「ちくしょあの野郎!!でかい図体の癖にちょこまかと」
「どうするんだよ。始末しねェと俺たちの方がやべェって」
「うっせぇ!!んなこたァ分かってる!!」
「兄貴落ち着いて下せェ」
チッ――
「あの男と一緒にいた女、見覚えがある」
「あぁ、俺も見たことある」
「白いワンピースっちゃぁ……ラルフのじゃねェか?」
「まさか! ラルフを裏切ったってェのか」
「あぁそうだ。間違いねェ。あの女はラルフのだ。一回したから確かだ」
「クソッ!!! あのアマ裏切りやがった!!」
う、そ……でしょ。
最悪だ。これでもう表には出られないことが確定した。今ここで飛び出してこっちは裏切ってないって言ったって聞いてもらえるわけがない。ラルフ自身ならまだしも……(彼はまだ話の分かる人だから)下っ端相手じゃ話にならない。……どうする。私がこの男の仲間じゃないということを証明しなければいけない。そうだ! このままこの男をラルフのところまで連れていけば信じてもらえるんじゃない?
そうこうしているうちに十字路に立っていた連中が4方向に分かれて探索を始めた。当然十字路のうちの一本はこちらの道に繋がっているからして、こっちにも奴らはやってくる。……とにかく今は逃げないといけない。未だに私の腕を掴んでいるあの男の服を強く引っ張る。こちらを向いた男に見えるようにして口を動かし、裏道の方を指さした。
(こっち、こっち)
男はもう一度十字路の方を見て奴らの動きを観察し、掴んでいた腕を放した。どうやらこちらの提案にノってくれるらしい。目を合わせると男が一度頷く。それに頷き返して、足早に、でもできるだけ音を立てないように足を運んでその場を後にした。

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