狂おしい愛に身を焼かれる 03

three

 

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呼び出されてセンゴクさんのところへ出向けば、追い返される。正確には呼び戻されたんだけど、私からしたら追い返されたようなものだ。先ほどサカズキから伝え忘れたことがあると連絡があった。来て早々で悪いが先にサカズキのところへ向かってくれと。いえ、こちらの用を先にと言えば、急ぎらしいと言われてしまい、すごすごと部屋を後にした。

そりゃそうだ。センゴクさんは知らないもの。さっきの私たちのやり取りを。それにしても、サカズキさんは一体どうしてしまったのだろうか。問題の人の部屋の前に立ち、考える。まさか、と行き着き思い浮かんだ答えはそれはあの人に限ってないとすぐに頭の中から消した。だって、あの赤犬大将だよ。そんなことあるはずない。きっと気のせいだろう。そう自分に言い聞かせて扉を開けた。

「失礼します」
「来たか……」
「サカズキ大将、言い忘れたこととは?」
「まぁ、座れ」
「いえ、私これでも急いでいるんです。立ったままでお願いします」

座り込んでしまったらなかなか解放してくれない気がしたから遠慮した。その答えにあからさまに眉間に皺を寄せる大将。半歩足が後ろに下がった。

「仕方がないのう。ではわしがそちらに行くとするか」

え……、と全力で遠慮したかったが、扉のすぐ前に立っていてこれ以上後ろに下がることはできなかったし、嫌ですだなんて口にすることはまずできそうになかった。だって、後が怖いもん。

「サカズキ大将?」

とても、とても大きな体がいざ自分の目の前に立つとやはり緊張した。大きいし、顔厳ついし、声ドス聞いているし、今何考えているかさっぱり分からないし。取り合えず、それらをすべてひっくるめて怖かった。

「わしは今焦っておる」
「……焦る? 一体何に焦っているのですか?」
「欲しいと感じたものをどうすれば手に入れられるか分からないからじゃ」
「サカズキ大将でもそんなことがあるんですね」
「本当ならもうとっくに気がついてもいいと思っているんじゃがな、どうにも上手く伝わらないようでの」

あの、ええっと?

ジリジリと追い込まれる。トンッと後ろの扉に背中がついた。幸いノブには手が届く。さっきみたいに逃げようと思い手を伸ばす寸前。

「また逃げられてはかなわんわい」
「っ…………」

カチャン――

内側の鍵が閉まる音。私もそこまでバカじゃない。大将を目の前にして、扉の鍵を開けて、ひねって出られる余裕があるとは思えなかった。なら、と大きな体の合間を縫うように抜け出して、壁際へと逃れる。……が、それも無駄なあがきだったようで。

「あの、近いと思うのは私の気のせいでしょうか?」

あっという間に詰められた間に心臓はバクバクと波打った。近い近い近いって! その言葉はさらりと流された。ゆっくりと上げられたサカズキ大将の右手は私の頭に置かれた。小さく跳ねる体と小さく漏れた悲鳴。クククッと喉で笑う大将に視線を向けるとスッと細くなった。

「心配せんでも取って喰うはせんよ」
「そ、そ、それは本当ですか?」
「あぁ」
「ではどういったお考えがあってのことでしょうか?」
「まだ分からんのか」
「すみません。私はあまりこういう状況に出くわしたことがありませんので」

うむと頷きがひとつ。何に納得してのことだろうと首を傾げた時だった。

ぎゅぅううう――

そんな可愛らしい効果音がふさわしい。優しくも力強い包容が私の体を包み込んだ。あわあわと慌てる私はただただされるがままで、なんて言えばいいなんて分からなくて。大将の次の行動を待つしかできなかった。

「なまえ、好きじゃけ、わしと結婚してくれんか?」
「え、?」

ちょ、ちょっと待って。色々つっこみどころがありすぎてなんて返したらいいのか分からないんだけど。好き? 私を、サカズキ大将が? え、結婚? あれ、結婚ってしばらく付き合ってからするものじゃないっけ? 違うのかな?

あれ、あれぇええええええ?

頭には大きなクエスチョンマークが数個。結局、言いたいことが纏まることはなく。しばらく流れた沈黙。ぎゅううっと抱きしめ続ける大将の様子を伺おうと少し体を離す。すると追いかけてくるように腕が回り、体が再びホールドされた。

「あのう、大将?」
「今は離れるな。顔を見られとうない」

顔? 首元に深く埋められた顔は私のところから全く見えなかったけれど、見られたくないということは、そういうことなのだろう。ピトッと右頬を敢えて大将の頬にくっつければ、上がった体温が伝わってきた。

きっと恥ずかしいんだ。

それが分かるとと愛しさがこみ上げてきた。

「でも、いつまでもこのままというわけには……」

もぞもぞと体を動かす。ゆっくりと背中を撫でるように動かすと渋るようにうなった後に体が解放される。にこり苦笑したのは顔を見られないようにすぐに後ろを向いてしまう大将が可愛かったから。

「で、返事は?」
「ううん、そうですね。結婚はまださすがに……付き合うにしてもまず先に言い寄って来られた方へ返事をしてからじゃないと……」
「なら、部屋から出さんぞ」
「はい?」

そんなの横暴だ。前々から思ってはいたけど大将って本当に頑固な人だと思う。

「じゃあどうすれば出してくれますか?」
「好きじゃけ、側にいてくれんか?」

わあああっと顔が赤くなったのは仕方がないことだと思う。だって、真っ直ぐで真剣な眼差しがジッとこちらを見ていたのだから。私の返事を待つ間、普段は自信たっぷりでいる大将の眉尻がどこか不安そうに垂れていた。この人、真剣に私のことを……

「……側にいるぐらいでしたら」

ゆっくりと頷く。なんだかこっちまで恥ずかしくなってきて視線を逸らしてしまった。

「その言葉、忘れるな」
「え?」

わしは離すつもりはないけんのうと嬉しそうに笑った大将は私の前で膝を折る。ん? と首を傾げたら、頬に手が伸びてきて、指で唇をひと撫でされた。

「いいか?」

ぶわっと体全身をかけ巡ったのは恐らく興奮だったと思う。彼はキスがしたい、唇を重ねたいと言っているのだ。ジッと見つめる視線がとても熱くて、早くと答えを待ってくれていた。そんな誘いを断れる人なんているのだろうか、ずるい大将。そう思いながらゆっくりと目を閉じた。

「はい」

優しいキスだった。一回、また一回。こちらの様子を確認するように数回。とても優しかった。それが嬉しくて心が満たされていく。頬をひと撫でされて目を開くと、これ以上どう触れたらいいのか分からないと気を揉んでいる様子の大将が目に映り小さく笑ってしまった。もう、今更です。

「ファーストキスだったんです」
「あァ?」
「私のファーストキス、だったんです。サカズキ大将。……だから」

責任とって下さいねとひと笑い。息を呑むような素振りの後にやってきたのは先ほどとは違う熱いキス。わっと体勢が持っていかれて、その場に倒れそうになる。でもしっかりと支えてくれている腕のおかげでそれもなかった。

「ん、はっ……」
「わしもこの年になってからは初めてじゃけんの」
「えっ?」

ゆっくりと抱え上げられた体はソファの上へ。シャッとカーテンが閉められて、まさかと体には冷や汗が。まさか、いやいやいや。あのサカズキ大将だよ? クザン大将ならともかくさ。……え、あれ、本気ですか大将?

「初めてがここじゃ嫌かのう?」

スッと髪をすく仕草は優しく。まさかこんなにも女性の扱いに慣れているとは夢にも思っていなかったので、なんだか複雑な気持ちになる。

「不安か?」
「大将は落ち着いたものですね」
「まぁ、お前よりは経験はあるからのう」
「……ですね」

なんかこう、胸の中で渦巻くこの気持ちはなんだろうか。チュッと頬に落ちてくるキスに身を任せながらもどこか納得しきれない気持ちのせいで額に皺が寄る。

「どうした? 今更止められはせんが、聞けることなら聞くが?」
「いえ、大丈夫です」

こんな感情、間違っている。

「嘘はつくな。今のお前の顔はそうは言っておらんじゃろう」

見てみろいと全身用の鏡の方を促されて顔を向ける。そこに移ったのはとても醜い自分の顔。分かっている。そんなこと。と自分が嫌になった。

「なまえ……言うてみろ」
「……なんだか嫌で」
「……」
「今まで大将が抱いてきた女の中の一人に成り下がってしまう自分が嫌で。そんなふうに嫌がる自分も嫌で」

本当はこんなにも嬉しい気持ちもあるのに。なのに、それに流されてしまう自分も嫌で。

「そうか……」

ぎゅうと抱きしめてくれる優しさは十二分に伝わって来ているけど、やはり不安だった。

「こんなことでお前が納得するとは思えんがの、わしはお前を最後にするつもりじゃろうて、それで許してはくれんかの? 過去のことをなかったことにはできんけんのう」
「っ、」

素直に自分の行いを認める男らしさは大将らしかった。

「……それではダメかの」
「いいえ、それで充分です」

はい、充分です。私には勿体ないお言葉です。潜められた眉を元に戻して欲しくて、精一杯の笑顔を作った。

「サカズキさん、ありがとうございます」

ほぅ……溶けていく心がゆっくりと染み出して、体を暖かく包み込んだ。気持ちとは反して目から染み出ていってしまう涙はどうしようもなく、でもそんな私を見て焦ることもないサカズキさんはぎゅぅと抱きしめてくれた。

「わしの前で泣くならいい。我慢はするな」
「っ、……はい」

目が届かないところで泣かれるのが一番辛いと、笑うサカズキさんの胸板に頭を埋める。

「抱いて下さい」

下手な口説き文句だと自分でも思う。でもそれが私の精一杯の言葉だった。ハハッと小さな笑いの後、嬉しいのうと抱きしめてくれたサカズキさんが優しいキスをくれた。

「んっ……」

この人本当に中年なのだろうかと疑いたくなるぐらい素晴らしい体にゴクリと喉が鳴った。思わずぺたぺたと触ってしまう。

「なんじゃ?」
「いえ、凄いなと」
「普通じゃろうて」

いやいやいや。そんなことないでしょう? 覆い被さる体にしがみつきながらそう思った。

「思ったより冷静でつまらないのう」
「えっ、なんですかそれ」
「もっと慌てるかと思ったけんのう」
「いや、さすがに私もこの年なので。経験はありませんが、男の体は見慣れております」
「……ほう?」
「え、あれ、サカズキさん?」
「その余裕な態度を崩すのも面白そうじゃの」
「え、ちょっ!?」

すでに開けられていた制服の下に手が入っていく。肌に手が当たるとぞわぞわぞわとした感覚と共に一気に羞恥心がこみ上げてきた。

「やっ!」
「何を今更……」

プチッと外されたホックにドキリと胸が鳴った。ちょ、待って。小さく押し返す力は大きな力の前には無意味だった。

「ん、やっ!!」

スッと細められたサカズキさんの目はとても楽しそうに笑っていて、可愛いのうと笑う。

「あっ……」

すぐに辿りついた先端を何度も弾くように触られて。今まで感じたことがなかった感覚が襲ってくる。なんか体が熱い。むずむずする。この気持ちの逃げ場所がよく分からなくて、逃げるように体をクネらせた。

「やだやだやだ!」

起こされた上半身から丁寧に服が脱がされていく。抵抗空しく裸になった体にソッと添えられた手。優しい手つきに喉がなった。優しすぎる。もう少し乱暴でもいいぐらいだと。

カリッと先端を噛まれて意識は目の前の人へと戻る。うわ、今サカズキさんが私の胸を……そう思うだけで一気に体の熱が上がった。

「ん、サカズキさん……っ、もうやぁっ」
「もう我慢できないのか? しようのないやつじゃの」

クククッと笑うサカズキさんに首を捻りつつ、その行動を目で追った。ミニスカートに遠慮なく手が進入してくる。太股に触れた手に思わず声を上げてしまった。

「ちょ、ちょっと待って!」

捲り上げられたスカートの下から白い太股が露わになり、すぐにショーツに手が伸びてくる。確認するようにやんわりと触る手がまた何ともいえない刺激でどうせならもっと強くと……あれ、私今なんて?

「なんじゃ、もっと強いのが好みか?」

あ、しまった。口に出して……

グィッとショーツの隙間から入って来た指がダイレクトに刺激してくる。

「んっ、はっ……」

頭がぼうっとする。

「や、もっと……」
「もっと?」
「もっと触って」
「っ、おいおい。どこでそんな言葉を覚えたんじゃ、お前は」

苦笑しているサカズキさんの顔はは呆れながらもボウッと瞳に炎を灯していて、あぁ、今きっと彼の心に炎がと灯ったんだと感じた。グィッと滑り込むように入って来た指に体が飛び跳ねた。

「あぁっ、ま、私初めてで!」
「知っておる。だからこうして慣らしておる」

これが慣らしているだって? グィッ、グィッと入ってくる指はゆっくりと動き続ける。それがまたなんとも絶妙な力加減で。サカズキさんはきっと心の底から意地悪な人なんだと思った。一本、また一本と増えていく指に悶え続ける体。早く、早く。もっと強い刺激が欲しいと脳が言っていた。

「サカズキさん、早く……」

目を見開いた彼がゴクリと唾を呑んだのが分かった。煽ったのを後悔するでないぞと急に性急になった行為にドキドキと胸が高鳴った。やっと、やっとだと。

「一気にいく」
「……はい」

ものは見ないようにした。だって、見たら一気に怖くなる気がした。だから、優しく髪をかき上げて、力を抜けと言ってくれるサカズキさんの顔だけを見ることにした。汗ばんだ額、頬に手を伸ばしにこりと笑う。大丈夫ですよと言った。

「ッ~~~~~~」

痛みが走った。ギシリ、ギシリ。指とは比べものにならない大きさではないかと驚いた。

「っ、あ…………」

痛い、痛い。……けど、頬に添えられる手で閉じていた目を開けると、力を抜け、体をわしに預けろと心配そうにこちらを見る顔。ほうっと体の力が抜けた。そうすると、ズシンッと体に来る衝撃が徐々に痛みから別のものに代わり始める。

「ちょ、ま……」

まじか……これが、快感かとその感覚に軽く絶望した。だって、目の前の人はもう年とはいえ、大将で。私の感覚が快感に変わりつつあるのを感じ取った彼はにやりと笑い、余計に奥まで付いてくるようになった。それが数分続くのだ。体が持つわけがなかった。

「っ、あっ、あっ……ん~~」
「そんなにいいか?」
「っ、や、だめ。ストップ! 動いたら……」
「そう言われて止まってやれるほど、わしももう若くない。悪いが耐えてくれ」
「んんっ、サカズキさんの、意地悪! この腹黒!!」
「なっ……」
「好きなら始めからそう言って下さい! 回りくどいんですよ。分からなかったじゃないですか!」

快感に負けないように、叫んだ。もう部屋の外に聞こえようがどうだっていい。私の思いだって聞いて貰わなくちゃ不平等だ。

「それは、悪かったの!」

より早くなったスピードになんとなくそろそろかなと感じた。自分の限界もサカズキさんの限界も。そんな時にふと沸いてきた感情。

「っ――――!!!」
「っ、…………はぁ、はぁ……」

ビクンッと跳ねた体は一気に脱力し、先ほどまで尋常じゃないぐらい激しく動いていたサカズキさんの動きも止まった。あぁ、ようやく終わったと息を吐いた。

安堵したらその感情がぽろりと口からこぼれ出た。

「サカズキさん、結婚します?」
「あァ!?」

心底驚いた顔をしていたその人は私の中から自身を抜き取る途中で体を止めてこちらを見た。

「いいんか?」
「……なんか、サカズキさんならいいかなって、唐突に……」
「分かった」

小さく息を吐き出したサカズキさんはおもむろに上半身を軽くストレッチしだした。自身の腰をトントントンッと数回叩く。あれ? 額を汗が流れていくのはなぜだろうか。

「あの、サカズキさん?」
「じゃあさっそく、子供作るかの」
「…………え?」

「っ、あぁあああ――――!!」

狂いそうな中、あんた本当に何歳なんだよ! と最終的には叫んでしまっていたのは、サカズキさんとの間に壁がなくなった証だと思う。

150927 End.

Afterword

えへへ、あはは~…… としか言えない。ほんっとごめんなさい!

やっちまった感が凄い……笑 でも、モモンガ連載書いたときに「サカズキさんもいいよなぁ~」と。ちょ、ちょっと熱くなっちゃってさ。あるでしょ、そういうことって。勢いで書きました。

言い寄った相手はご想像におまかせします。まぁ私は個人的にモモンガさんを希望したんですが、彼が狙った獲物を逃がすわけがないので、なんとも言えないんですがね! ではではお粗末様でした~(^^)

サカズキ好きだよ~w

 

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