復帰戦、当日――
エースとルフィは、前日からチームのみんなとバスで会場へ向かっている。私とサボは、当日の早朝に家を出て、高速道路に乗って会場へ向かうことになっていた。
「よし、忘れ物は……ないかな?」
「準備はできたか?」
「うん。差し入れのウィダーは乗せてくれた?」
「あぁ」
よし、準備OK。
「いざゆかん!」
「はいはい。出発するから、シートベルト締めて」
「はーい」
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【グループ:家族】
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今家出たよ
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「エースからRINE入った」
「あいつ起きてんのか」
「そうみたい」
辺りはまだ暗い。車外に目を向けると、街灯の光が一定間隔で通り過ぎていった。
「ちょうどいい。試合順と場所確認よろしく」
「あ、そうだね。アップ? に入る前に聞いた方がいいよね」
専門用語の使い方に自信はなかったけれど、サボからの指摘がなかったから合っているのだろう。
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コートの場所は3番アリーナで合ってる?

:
「試合は1試合目で、場所は3番アリーナ。アップは20分だって」
カチ、カチ、カチ―― 左の角を曲がり終えるとサボが答えた。
「あ~。参加チームが多いもんな。いつもより短い」
「そうなの?」
「了解って返しておいて」
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「エース、なんて?」
「寝たっぽい」
「そうか。なまえも気にせず寝てろ」
「え、でもサボが運転してるし」
「慣れてないんだから寝ておいた方がいい」
「うん……分かった」
当然、すぐに眠りにつくことはできない。その点はサボも承知している。眠気を誘う音楽を流すわけにもいかないので、酔わない程度に軽くスマホを見て微睡みを誘うことにした。画面見ていると目が疲れて眠くなるのだ(私はね)。
車が高速道路の入り口に入った。
「ETCカードは挿入されていますか?」
お決まりの文句が聞こえて、「どうやって来るんですか?」と聞かれたシャンクス先生とのRINEのやり取りが頭に浮かんだ。
エースがバスに乗っているのだ。当然、先生も一緒だろう。寝ているかもしれない。起こしてしまうかもしれない。……でも、何となく、連絡をしたかった。
ブルブルブル――
携帯が震えた。ベックマンからか? 会場への先入りをお願いしていたから、着いたという連絡かもしれない。あと30分ほどで俺たちも着く、と返事をするために画面を見た。
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「っ、」
危うく声を上げてしまうところだった。バスの最前列。隣には誰も座っていないし、何なら、すぐ後ろも斜め後ろも、周囲の席は荷物で埋まっている。それでも、周囲を確かめずにはいられない。きょろきょろと辺りを確認して、視線を画面に戻した。
向こうから見たら既読がついているはず。早めに返してしまいたい……が、打つ手が震える。なまえさんとのRINEは、これで3回目くらいだ。履歴を辿るように、画面を上にフリックする。……あぁ。今日は浮かれている暇なんてねェっていうのに。……まったく。どうしようもなく嬉しくて、気持ちを落ち着けるように深呼吸をした。
なまえさんは、俺よりもかなり年下だ。サボの年から考えても、確実に10歳は離れている。RINEを返すたびに、気持ち悪いおじさんだと思われていないだろうか、そんなことが頭をよぎる。出来るだけ簡潔に、余計なことは書かないように……
:
今、高速道路ですか?
○○を過ぎたところです。
サボが頑張って運転しています
:
サボ……。俺の考え過ぎならいいんだが。嫌な考えを振り払う。少なくとも、なまえさんからはサボに対して兄弟以上の何かを感じているようには見えない。今のところはそれで良しとする。……今のところは。
:
お疲れ様です。
:
ひとつ気になったのは、なまえさんからの返答だ。前回も前々回も、すぐに要件の話に入った。RINEが来るのは聞きたいことがあるときだけ。まぁ、普通はそうか。俺たちの世代は用がなければRINEはしない。……でも、今回は違うような気がする。
:
アップには間に合わないかもしれないんですけど……
開始には絶対!
:
『絶対!』の文字に、今日のなまえさんの熱意が伝わってくる。思わず口元が緩んでしまった。
時計の時間を見てザっと見積もったが、この調子でいけば余裕で間に合う。高速道路の到着予想時間は当てにならない。事故があったり、渋滞があったり。時間は無常に過ぎていく。早朝に出発したのは正解だろう。
それにしても……先ほどから、会話を進めるのはこちら側だ。これは、期待していいってことか? 胸の高鳴りを感じて慌てて深呼吸を繰り返した。ぬか喜びは良くない。期待するだけして、落とされるのは、この年にはちょっときついことだ。立ち直るのに結構時間がかかる。……慎重に。でも、頭を過っていく先日のサボとなまえさんの後ろ姿がそれを邪魔する。
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何か確認したいことがあるのかと思ったので
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しまった――いつもの癖で考えたことをそのまま打ってしまった。慎重にって思っていたのに! 余計なことを打って空気を悪くしてしまったかもしれない! 内心焦る。
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特にはなくって。
ただそちらの様子が気になりまして。
ごめんなさい。
お忙しいですよね!
もう切り上げます!
:
え? あ? え? それって、――え?
:
:
一文。心からの一言をスッ――と滑り込ませるように返した。
すぐに既読がついた。……でも、返信が返って来ない。
彼女は、今、何を考えているのだろう。
私ったら、何をしてしまっているのだろう――両手で抱えたスマホの画面には、
:
:
と、シャンクス先生からのRINE。さいっこうに恥ずかしい思いをしていた。思いつくがままにRINEをしてしまっていた。特に中身もない内容をつらつらと。聞くことなんて、さっきエースに聞いたからもうないっていうのに。
最高に、恥ずかしい。……ん? 恥ずかしい? ――なんで?
とにかく、まずは巻き込んでしまった先生に謝らないと!
:
特にはなくって。
ただそちらの様子が気になりまして。
ごめんなさい。
お忙しいですよね!
もう切り上げます!
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打ち終わって、ふぅ――と息を吐き切るよりも早く、返事が返って来た。
:
:
「っ、」
あぁ、どうしよう――私も、すごく嬉しいです、先生。

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