61:召使いの誘引

「なので、服脱いで下さ……あ、別にクザンさんは下だけ少し脱げばいいのかな」
「ちょ……ちょっと待って。何言ってんの頭沸いてんじゃない?」
「別に沸いてないですけど、沸いてるって思っててもらって全然いいです。なんで、セックスしましょ、セックス。はい、脱いでっ」

膝の上にあった本を持って立ち上がる。そのままクザンさんが座るテーブル席に向かって、机に本を置いた。目の前にいるやべー女の扱いをどうするべきか迷っているクザンさんはまだ座ったまま。別に座ったままでもできるから、このままでいいんだけど。……問題がひとつ。能力をもらうにはそこそこの愛を育む必要があるってこと。

クザンさんは女性の扱いには慣れている方だと思う。だから、耐性もあるだろう。私が保護対象だから手を出せないっていう制約もあるだろうし。色仕掛け…………効くのかなァ? えぇい……考えたところで仕方がない! やってみなきゃ分からないし! 半ばやけくそになりながら彼の膝の上に手を置く。駄目だったらそのときにまた考えようっと。置いた手の平をそのまま太腿の方に滑らせていった。半分辺りまで進んだところで、クザンさんの手が伸びてくる。やんわりと止められた。

「……ん、いやだった?」

返ってくるのは細められた鋭い眼差し。疑っている目だ。

「それって、君の能力と関係あるの?」
「ん~~」

答えを考えながら真っ直ぐに彼を見る。揺らぎのない瞳が腹の内を探ろうとしているのが分かった。

「あったら……どうします?」

グッとクザンさんの体が寄ってくる。見下ろす彼を怯むことなく見上げた。…………近い。じりじり迫る彼の顔面から目を外す訳にもいかず。じっと耐えた。彼の黒瞳の中に映り込む私が瞬いている。……何度も。大将クラスの無言の圧力ともなれば、…………強いのだ。思ったよりも目力を持っていらっしゃる。……でも、私だって負けない。

試しに少しだけ私の方から顔を寄せてみた。あからさまな拒絶は感じない。嫌ならとっくに逃げているはず。……ということは、OKってことかな。時間が惜しい。手を上げる。ゆっくりと。剃り残した髭のある頬の上を滑らせながら「彼が逃げませんように」と願った。瞬きもしないクザンさんは何を考えているのやら……? ここで肉体関係を持つことの損得を頭の中ではじき出しているのかな。

ぐぐぐぐ、亀のように、首を、背を、伸ばす。鼻の頭が触れて唇が今にもくっつきそうだった。……でも、まだ触れない。まっすぐに彼を見つめる。彼もまた私のことを見ていた。

「ねぇ……返事、ちょーだい。私、嫌がる人とはしないから」

…………それは嘘だ。絶対に氷の能力は欲しい。太腿に置いた手をさらに滑らせていく。柔らかな内腿にまでいこうとしたら、

「君ってさァ。……ほんっといい性格してるよね」
「褒めてくれるの? ありがとう」
「褒めてない。褒めてない」

そうは言うが、彼は楽しげである。

「私、いい性格してるの。ねぇ、早く……」
「………………」

揺れた瞳。視線が逸れた。くるんと動いたクザンさんの瞳が明後日の方向を向いて、瞼が閉じられた。算段は続いているらしい。

「ねぇ……」
「あ”――ほんっと、悪辣過ぎる……俺がこんな見え透いた色仕掛けに引っかかるとでも思ってる?」

おや……。考えているんだろうと思っていたら、ただ単に苦心していただけらしい。彼はそこらの男と同じく、己の煩悩と戦っているらしかった。

「分かんないけどさ」

こんな大男が小娘の色仕掛けで戸惑うなんて。可愛いところもあるじゃない。百戦錬磨というと大袈裟かもしれないけれど、その道じゃぁ私の方が場数を踏んでいるに違いない。それならもっと踏み込んでもいいかも……。

嫌ならこんなまどろっこしいことせずに、私を突き飛ばせばいい。案外この人は優しいのか、それともただ甘いのか……。どちらにせよ、そういう人を篭絡するのは楽しそうでそそる。……時間がないのが本当に惜しい。

「早くしないと十分はあっという間だよ。キスが嫌ならすぐに始めよっか」
「――――はっ?」

すんなりと身を引いてクザンさんの目の前に立つ。なんの迷いもなく、Tシャツの裾に手をかけて、ガバッと脱いだ。上裸の女を前にして「ちょ……まっ……!」慌てふためくクザンさん。慌てて伸びてきた彼の片手を掴む。するすると抱き着いて、ブラジャーのホックも外した。大きくはないけれど、形のいい乳房だとレイさんが気に入ってくれた私の自慢の乳だ。つんと上を向いているピンク色の乳首にクザンさんの手の平を置いた。うん、すんなり置けた。反射的に……だろうか。クザンさんの手の平が胸を揉む。数日ぶりの刺激に体が過敏に反応して声が出る。

あっ――――

思っていたよりも大きな声が出てしまった。グッと眉根を寄せたクザンさんが空いている手の平で顔を覆っている。

「っ、まじで悪辣過ぎるって…………」

そのまま距離を詰める。椅子に座るクザンさんの股上に跨ってやった。もうどうにでもなれ状態になったのか、彼が大人しい。引き剝がされる覚悟をしていたんだけど。

「俺だって任務なんかなけりゃァ、喜んで誘いに乗ったさ」
「ふ~~ん。任務だから手を出す気はないって?」
「……当然だろ? 上にどやされるのは目に見えてるし。俺は面倒事は嫌いなんだよ」
「へぇ?」

舐めるように見る。覆う手の下、クザンさんの顔は見えないけれど、未だに私の乳を揉んだまま離さない邪心に笑う。

「そのまま揉んで……?」
「………………」

ぴくりと僅かに動いた手の皮膚が擦れるだけで腰が浮く。声が出るよりも先に「クザン大将大丈夫ですか……?」と控えめな声がした。「……まずい」彼の顔が見えた。

「大丈夫」

努めて冷静に、言ったようだった。今、この状況を誰かに見られでもしたら――大将の威厳とやらは地の底に落ちるだろう。……いいねぇ、そういうの。でも、今はそのときじゃない。私がやりたいのは、彼の能力を奪うこと。

「…………危なかった」

ふぅ~~、長息を吐き出して正面に向くまでのその瞬間、私は彼に口付けた。

「っ、」

舌を入れて上顎を舐めとる。反射的にであろう、ぐっと私の両腕をクザンさんが強く掴んだ。ぎちぎちと骨が軋むほど、強く。それでも私はやめない。彼の方にしがみ付いて、上体が後ろに反れるくらいに唇を、舌を奥へ奥へと入れ込んだ。

「はぁ……ん、」

気持ちいい――脳内が溶けるようだ。逃げる舌を追いかけていたはずが、いつの間にか追われている。息継ぎの合間に舌を抜いたら追いかけて来て、今度は私の咥内の方に攻めてきた。

「ぅ、んうぅ……」

絡め取られていく。クザンさんの指が私の指に絡められて握られる。きゅっきゅっと優しく揉みしだきながら、舌がうねるように動いて……

「はぁ……はぁ……んっ、」

熱い。体が燃えるように。ぽたり――額から汗が落ちた。雫は重力に従って下に向かう。一粒が鎖骨を伝ったところでクザンさんが動いた。無心で続けられていた口付けが止まる。解かれた指の先が雫を追いかけるように動いた。肌の上をクザンさんが人差し指が這って行く。

「ん……」

…………熱い。吐き出す吐息も、彼の視線も、熱くって、心地いい。

「声、出したら駄目だよ」

柔らかな声に気が散ったその瞬間――

「ぅんんっ!?」

バッと私の口を彼の手が覆ったと思ったら、ズボンの中に何かが滑り込んで来た。丸い何かがパンツの中にまで入り込んできて――ブブブブ、音を立てる。

自分の意志とは関係のない快感が容赦なく私を襲った。股に手を置いて異物を取り出そうとしたら、手首を捻り上げられる。

「悪い子にはお仕置きしなきゃね……」

にたりと笑う姿を見て理解する。この男……演技してやがった! と。

「んーー! んーー!」

じわりと目尻に涙が滲む。彼の手の平の内側で、私は悲鳴とも取れる喘ぎ声を上げていた。

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”んんっ」

「悪いけど、誘ったのは君だからね」

そのままベッドに放り投げられてズボンを脱がされる。パンツの中で動き続ける異物からどうにか逃れようともじもじしていたら、両足を掴んで開脚させられた。むわっと匂い立つ独特な香りが自分でも感じられた。頭がくらくらする。

「っ、こりゃァ……確かに、………………クるねぇ…………」

ニタリと笑う彼の目が細まるのが見える。くらくらする感覚に耐えるように頭を左右に振りながら、彼は丁寧に残りの服のすべてを取り払った。これで私の身を包むものは何もない。

「こんな場所じゃなければ一日このまま置いておくのに」
「はっ、このヘンタ…………っ、ん”ん”ッ」
「変態はどっちよ。口には気を付けなよ。主導権は俺の方にあるんだからさ」

未だ震える玩具を陰核に当てながらクザンさんが楽し気に言った。

「はっ? 主導権ですって。何言って……あっ♡ ちょ、んん”っ♡」
「俺さ、指が長いからうまいんだよ。君のいいところ見つけてぐちゃぐちゃにしてあげるからさ。その口、閉じなよ?」

「こんな玩具なんかじゃ満足できないでしょう?」ぐっと腰を折ったクザンさんが耳元で言う。

「あっ、ちょっ!」

ズボッと入った彼の人差し指が膣の中をぐりゅぐりゅ回る。右に回ってぐりゅぐりゅ。左に回ってぐりゅぐりゅ。「君のいいところはどーこだっ」太くて甘い悪魔の囁き声が溶けた脳みそを揺らす。はぁーーもうすでに何回もイッた後だから頭が回んない。

「ん、っ、――ハッ♡ あっ、あっ、そ、こっ。だめっ! っ、~~~~~はぁんっ♡♡♡」

長い指の先が腹の内側の良いところを優しく撫でていく。それが何とも言えない力加減で、もっと強くこすってくれたらイけるのに、そんなんじゃ足りないっていうのに。

「っ、意地悪っ!」
「え、なに? だって、だめって言うじゃん? だから、優し~く、優し~く。愛撫してあげてるでしょ?」

「クザン大将…………その、大丈夫でしょうか?」

扉の向こう側から声がして、ひゅっと身が固まる。忘れてた……!

「あーダイジョブ、ダイジョブ。ごめんねぇ。ちょっとお仕置きしてるだけだから。聞き流しておいて」

扉に向かって平然とそう言ってのけたクザンさんに「分かりました」と返してくる部下。さっきまでのは本当に演技だったってわけ?‌ ……彼も部下も随分手慣れた対応じゃないの。

「この性悪男。手慣れてんじゃないの」
「……当然。俺は海軍大将だよ? 拷問も、懐柔も、なんだってやるさ。綺麗ごとだけじゃ守れない正義ってあるんだよ、知ってた?」
「っ、はぁ?ㅤんっ!?」

クイッと曲がった指先が触れたところ。私の一番気持ちいいところ。レイさんが「ここがポルチオっていうんだよ」と教えてくれたところだ。

「あ~やっぱり、ここ? 女はみんなここが好きだよねぇ?」

ニタリと笑った彼がもう一方の指を腹の上に置いた。その恰好には覚えがある。咄嗟に――

「やっ、やぁっ! だめ! それだめぇッ!!!!」
「とんとんしてあげるからねぇ……」

内側から丁寧にこすり上げられて、外側からとんとんとんと落とされて、間に挟まれたところが悲鳴を上げる。

「ぅむんっ、ん”ん”ん”ッッッッ」

腰が浮いて逃げても押さえつけられて、ベッドの弾みでまた浮いて、それの繰り返し。快感が止まらない。

「やだやだやだァ!!!!」
「へぇ、そんなに気持ちい?」
「気持ちいいから! もっ、だめ、これ以上、イけないって! い…………イッ――」
「え? でも今イッたでしょ? まだまだイけるって」
「やっ、やだァ……、ひっぐっ。はぁ……♡ だめ、気持ち良すぎて頭……溶けちゃうぅん♡♡♡」
「溶けちゃっていいよ。面倒は俺が見てあげるから。ほら……もっと聞かせてくれる? ほら、……ねぇ、きっと扉の向こう側のみんなも、君の声聞いて欲情してるよ? ほぉら、ほら。もっと啼いて喚いて聞かせてよ?」
「ふっ、ふっ、ふっ♡ はぁ♡ んっ、はぁ…さいこ、クザンさんっ、指だけじゃ足りなっ、イィィィッ――んんんっ、は……おね、が……クザンさんの、いれて、ぶっといの……欲し……♡」

ぐちゅり、厭らしい音が止まる。

目を開いたクザンさんが私のおねだりに動きを止めていた。ぐったりとした私は口を動かすことしかできない。

「嫌なら別の人でいいから。誰か。私のぐじゅぐじゅの穴に入れて……」
「何言ってんの? 君はお仕置きされてんだよ? 入れたら満足して終わっちゃって、それじゃあお仕置きにならないでしょう?」
「んっ、じゃア……みんなで回してくれたらいいからァ……」
「だーかーらー、それじゃ……って。あーもぅ」

クザンは今更ながらに気が付いた。この女に性的拷問は意味をなさないということに。いやむしろ、逆効果だと。あれだけさんざん啼き声を上げたのだ、部下一同、ほとんどの者が、この女の虜になっただろう。明日から野郎の視線は釘付けだ。本来ならそれが一種の罰となるが、この女はきっとそれを何とも思わない。女の姿を見る度に過る今日のできごとに男たちは頭がいっぱいになる。それは致命的なことだ。ボア・ハンコックがいい例。……まったく、女は怖ぇなァ。

俺ですらこの様。普段なら押し通せる欲求も限界が近い。ズボンの下でぱんぱんに張っている肉棒が痛いくらいだった。少し動いただけでも、なんなら女の声を聴いただけでも、出てしまうんじゃないだろうか。

ベッドの上で荒い呼吸を続ける女……名はなまえと言ったか。

「俺のが欲しいってか」

一糸まとわぬ姿になった後にベッドに上がる。軋む音になまえの視線が動いて、その目の前に反り立つ肉棒をこれ見よがしに置いた。

「っ、」

目を見開いたなまえが恍惚とした表情でそれを見つめている。赤黒い棒に浮き出た血管。どう見たって良い見た目じゃない。だが、不思議なことに女たちはこれが大好きだ。

「……大きい」

いつかに聞いた台詞に心が沸き立つ。大きい? 当然だろう?

「入れるぞ」
「んっ♡」

だらしなく開いた両足の間にあるぐずぐずの穴。どこを触っても、何をしても嬉しそうに啼くなまえの姿が堪らなく可愛い。こういうのを愛玩っていうのか。確かに、傍に置きたくなる気持ちは分かるな。

「早くっ」
「急かすなよ。……一気に入れるからな」

なんせ、俺も結構限界なんで。

ズシンッと奥に突き刺さる。先っぽが子宮の入り口に当たったのがはっきりと分かった。

「あぁぁん”ん”っ!!!!!」

一発でイッたなまえがぐったりとしていたがそのまま律動を続ける。中がどろどろだ。たっぷりある愛液が纏わりついてくる。ぐちゅんっ――、ぐちゅんっ――、音がすげぇな。そんなに速度を出しているわけでもないのに滑る滑る。降りてきている子宮を突く度になまえの腰が震えた。

「ひんっ♡ あっ♡ めっ♡ あ”っ♡ ん”っ♡」

動くたびにイッてるんじゃないだろうなァ……怪しいが。それでも意識を飛ばさないところはすげぇな。パァンッ――、パァンッ――、だんだんと速度を上げていく。それでも啼きながら耐えているなまえの姿を見ていたら胸に湧き上げってきた感情。……これは、なんだ。このクソビッチで頭のぶっ飛んでいるはずの女を、俺は――可愛いと、愛おしいと、思って……いる、のか?

――――一体、どうしてだ?

 

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