私は、不老だ――
生まれつきじゃない。私が売られた研究所で行われていた研究。そこの被検体のうちの1人。そして、唯一成功した完成体、それが私だった。それは私が21歳の時のできごとだった。
月日は過ぎ、その研究所も廃れていった。それ以降完成体が生まれることはなく。不老ではあるが、不死ではない私は怪我をしてしまえば他の者のように死んでいく。そのため大切な完成例として、それはそれは丁寧に扱われていた。ただ何年も成果が上がらなかったその研究所は見放され、いつしかそこには私一人が住むようになっていた。気がつけば、周りのみんなはもういなかった。
それから何年がたっただろう? 一日がとても早かった。目を瞑って、開けば一日が過ぎていた。そうやってただただぼぅ――っと過ごしていたある日のこと。空中を一匹の青い鳥が飛んでいた。木の上でだらしなく口を開いて見ていた。ふと、目があった気がした。いや、気のせいだろう。ただの鳥だ。そう首を横に振った。その鳥は島全体を見て回るように何度か周回した後に去っていった。生き物を見たのは何年ぶりだろうな。そう思いながら目を閉じた。
「おい」
次に目を開けた時、まだ一日は経っていなかった。声? 人の声? あれ、声ってなんだっけ? 人って? ふわふわする頭でぼんやりと考える。ゆっくりと体を動かすと、ずっと動かしていなかった体の筋肉はうまく動いてくれず、私は木の上からズレ落ちるようにして落ちた。
ストン――
暖かかった。正直、あ、私死んだかもと思った。頭から落ちれば一瞬であの世へだ。そう思っても体は動かなかった。無気力。それが今の私にはぴったり当てはまる言葉だった。でも違った。落ちた私の体は地面にぶつかることはなく、ふわりと大きな、とても大きな腕の中へ収まっていた。
「…………」
しばらく発していなかった私の喉はうまく声を発することができなかった。
「……名は?」
私を静かに見つめるその人の目は優しかった。小さく首を振る。
「しゃべれないのか?」
「……っ、ぁ……」
掠れ掠れに発せられたとても言葉とは言えないものが出る。なんて耳障りな音なのだろう、と自分で思った。
「……そうか」
なぜか優しく頭を撫でられた。首を小さく傾ければ、ニッと笑ってくれた。あ、綺麗。そんな笑顔を見たのは初めてだったと思う。
「親父」
「……なんだ?」
視界の端に別の人が映った。その人は私を見てどうするつもりだよいと言う。親父……? この人はこの男の人のお父さんなのか?
グラララララッ!!
急なことで慌ててしまう。目をまん丸と開いてその声の主を見れば、あぁ悪いなと謝ってくれた。笑い声さえも大きかった。この人の笑い声はなんか心を揺らす。
「マルコ、行くぞ」
「……よい」
え?
その人は私を連れたまま歩きだした。

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