次に目を開いた時、私はベッドの上にいた。ベッドで寝るなんて何年ぶりだろうかと思う。ベッド脇のテーブルには水が置いてあった。わ、水だ! 飛びつくようにして、その水を口に含んだ。
私は実験のせいで年を取らない。そして、食事を取らなくても生きていける。きっと、細胞が死なないから食べる必要がないのだろう。誰かがそんなことを言っていた気がする。回復能力もそれなりにあるらしい。普段生きている時に使わない分、万が一というときは全力で溜めていたエネルギーを使うらしい。よく分かっていないんだけれど。でも、やっぱり……食べれるなら食べたいと思う。口に含んだ水をゴクリ、ゴクリと飲む。
「ふぁ……」
飲み過ぎた、動く度にお腹がたっぷん、たっぷんと音を鳴らす。ふふふ、なんだかおかしくて笑ってしまった。
コンコン――
ノック音で我に返る。素早くベッドに戻り、シーツを強く握った。カチャっと遠慮がちに開かれた扉からはあの男がこちらを見ていた。歩く度にふさふさと揺れるその頭に釘付けになる。あぁこれか? と私の視線に気づいた彼はニコリと笑い、お前も俺の髪型が気になるのかよいとちょっとふてくされたような顔をした。気にならないわけがないだろうと思いつつ、その質問にどうしようかと考えていた時だった。
「あぁ、そうか。しゃべれないんだったな」
「……水飲んだから、しゃべれる……」
え? とコップを片づけていたその男がこちらを見た。それは一大事だと言って部屋か出ていく。
「……どうしたんだろう?」
遠くで親父ぃ! という声が聞こえる。あ、そうか。あの人を呼びに行ったんだ。あの人に会える、そう思うとなんだか暖かくなった。
バタン――
今度は遠慮なく開いた扉に体が跳ねた。
「目が覚めたようだなぁ。どうだ調子は?」
「……まだ、そんなに、でも……声が……出るようになって」
「そうか」
それは良かったと大きな手で頭を撫でてくれた。グララララッと豪快に笑うその人は隣に立つ男に目を向ける。2人は楽しそうに笑ってくれた。
「名前は?」
「なまえ、といいます」
……確か、そうだった、と思う。自分の名前なんて最後に呼ばれたのは何十年も前の話。自分じゃ呼ぶこともないし、たぶん合ってると思いつつ答えた。
「なまえか、じゃあ今日からお前は俺の家族だ」
「……?」
家族? どういう意味だろう? よく分からなくて首を傾げると、親父、たぶんこいつは分かってねぇよいと隣の男が言う。その言葉に強く頷けば、あぁと目を細めるその人。これから分かっていけばいいじゃんねぇか、そう言うとその人は部屋から去って言った。後に残った男は全く親父は……と言葉を吐く。年は同じくらいだろうか?そんなことを考えてぼ――っと顔を見ていた。それからその人は色々なことを話してくれた。自分のこと、親父と言われているその人のこと、この場所……船のこと。海賊のこと。そして、親父が言う家族のこと。
「まぁ、おおざっぱにこんなところだよい」
「……ありがとうございます」
「いいよい、それより疲れただろう?」
今日は寝ろよいっと言って、マルコは私に布団をかぶせる。コクリ、頷いた私はゆっくりと目を閉じた。

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