それは俺色に染めてという意味ですか? 02

Two

 

:

 

ベックがこうやって連れ戻しに来たのはもう何度目だろうか。最後に会ったのは2年前ぐらいだったと思う。

ガープさんのところに戻って、初めこそ心が揺れていた時期もあったけれど、それもすぐに断ち切って海兵として順調に昇格していった。最初に勤めていたローグタウン。何気なく歩いていた時、ふいに名前を呼ばれて顔を上げたらベックが立っていた。目を見開いていた私にベックが近づいてきて、戻って来いと言った。数秒の間の後に数回首を横に振ればベックが無言でこちらを見つめる。私も何も言葉を発することなくただただベックを見つめた。無言のやりとり。しばらくすると、また来ると言い残して彼は去っていった。完全に気配が消えてようやく力が抜ける。一体どこから私の勤務先を仕入れたのか……

それからも何回かそんなことがあった。いつだって私の答えはNO。それはもう変わることがないことぐらいベックの頭なら分かっていると思う。なのに……どこからともなく現れては顔を出して戻って来いと言う。ただ、今回はいつもとは少し違っていた。彼は一度も接触してくることはなかった。そこが今までとは違うところ。どうしたというのか、痛みで顔を歪めながら後ろに立つ彼に意識を集中させる。

カチャン。器用に煙草に火をつけたベックがフゥ――と煙を吐き出す。香ってくる香りが体に染み着いていく。勧誘だと言って連れ戻しにきたとき、煙草を吸うこともなかった。私が海賊団にいたときは私の前ではあまり吸おうとはしない人で……だから、ベックの吸う煙草の香りもその仕草も凄く懐かしくて、ちょっと泣きそうになってしまった。

「なまえ」

拘束されていた手は上へと上げられる。近くの壁に押さえつけられ、いよいよ逃げられなくなった。軽々と左手で押さえたベックは私が足技を出せないように器用に自分の足で固定する。唯一空いているベックの右手は私の頬に伸びてくる。

「もう我慢できねぇよ」

ボソリと囁くような言葉の後、すぐに噛みつくようなキス降ってくる。望んでいないキスに必死で抵抗する。

「ん、ん――!!」

何度も何度も首を横に振った。けれど、ベックにとってそれは関係ないようで、かまわず口内をかき回し続けた。一度は溺れていた彼のキス。今の私に取ってはその甘い刺激も素直に溺れることができなくて、切なくて、辛くて、ただただ苦しかった。

息継ぎのために離された口。その時に大きな声で叫ぶ。

「やだ……やだ、やだ、やだ!! やだ、ベック、嫌だ。やめて!!」

拒否する――

大声で叫ぶ。

「ッ、なまえ!!」

ベックは切なげに眉を寄せる。愛していた、一度は愛し合ってもいた。そんな大切な人が自分から離れていく。それを受け入れられていない。そんな様子だった。分かってる。酷いことしたって。でも、ベック。あなただって。

「今更そんなこと言われても知らない!この結果はベックが選んだんでしょう! プライドだとか意地だとか、そういうもので私との関係を誤魔化した。だから私は離れた。断言する。私はもう、赤髪海賊団のところにも、ベックのところにも戻る気はない!」

目を見開いた彼は瞳を揺らしていた。きっと当時の自分を思い出しているのだろう。ちゃんと当時のことを覚えているのか怪しいものだ。私が望んだ恋は一般的なことで海賊の人からしたらやはり感覚が違ったのだろう。

「なまえ」
「離して」
「……」

ガチャン――

「え?」

ずっしりとのし掛かる重み。ゆっくりと目線を上げれば、両手にはしっかりと手錠がかかっていた。それもご丁寧に海楼石の手錠。私は能力者じゃないのに……きっと私が余計なおしゃべりをしてしまったから、手持ちのものを使ったんだろう。

「ベック、こんなことしても無駄。それに、そろそろ集合場所に来ない私を心配して、中将が探し始めるよ」
「なら、余計にいい」
「どういう……ちょっ!?」

ニヤリと口元を歪ませたベックが私の上着のボタンを外していく。緩んだ服の隙間からスルスルと手が忍び込んでくる。

「何、してんのっ!?」
「なまえ、感じてんのか?」

コリッと膨らみの先端が弾かれるとピクリと体が勝手に反応してしまう。今はそんな場合ではないと分かっているのに。分かっているのに……

「もうすでに立ってるぞ」
「ッ」

執拗に先端ばかり触られ続ければ、だんだん感覚が麻痺してきて、分からなくなってくる。くらくらする頭を必死で保とうと目を瞬くが、頭はどんどん快感の方へ移行していく。しばらくすると右手がだんだん下がりだし、くびれ、お尻を通り、太股に行き着く。これはかなりやばい状況。

「い、や……」

自然と浮かび上がった涙がポロポロとこぼれ落ちていく。こんな……ベックにこんなことされる日が来るなんて。思わなかった。そんなことするような人だとも思わなかった。小さく首を左右に降り続けた。でも分かっていた。そんなことでやめてくれるわけはないと。

膝上にあるスカートの中に手が忍び込んでくる。生で触れてくるささくれだった手が優しく撫でれば、悔しいがな気持ちよくて身がよじれた。

「っ……」
「気持ちいいか?」
「ん、」
「やっぱりお前じゃないとダメだ」

フルフルと首を振る。涙目の顔を上げれば頬を涙が伝って降りていく。ベックと視線が絡む。

「ちゅう……しょ……」

ベックの目の向こうにあの人の目を思い浮かべた。

「そいつか? なまえを誑かしたのは」
「ち、がう。中将はそんなこと、しない」
「嘘を言え、その目は以前の俺に向けられていたのものと変わらない」
「……」
「そいつが好きなんだろ」
「……」

断固として首は振らない。だって、まだその気持ちは本人に伝えられていないから。いつかは伝える時がくるかもしれないけれど、今はまだその時ではないと思っているから。だから、絶対に反応はしないと決めていた。

「チッ……相変わらず頑固なことで」

チュッと啄むようなキスで唇を刺激される。

「もうやめて。お願いベック。そんな風に優しくしてもらっても私は……その思いに答えてあげることが、できない……っ」

ベック!!――

言い終わる間もなく、苛立った彼がついにショーツに手をかける。力一杯の抵抗は力の入らなくなったこの状態では無意味だった。上から軽く愛撫されれば押さえきれない声が漏れる。

「なまえ、好きだ」
「ん……やめ、て。ベック、っ……」

首を振ることしかできない自分が腹立たしかった。

「本当にやめて欲しいのか? こっちは準備万端みたいだが?」

その言葉にまさかと目を見開けば、ベックがニヤリと口を歪ませた。ぬるりと入って来た指が中をかき回す。ここだろ?とピンポイントに攻めるベックに私は勝てない。

「や、ん……あっ、ベック。だめ!」

堪えきれない。抑えきれない感情が徐々に高まっていく。

「んんっ……、んはっ」
「ん、そろそろか?」

小さく震えだした私の体をベックが確かめるように抱きしめる。引き抜かれた指を見せつけるように舐める。カチャン。ベルトの音で一瞬で我に返った。

「え、ベック? 何するの?」
「何って、いつもやってただろ?」
「え、何言って……」

両手を拘束されているせいで真下を見ることができない私は今どうなっているか想像する。冗談じゃない!ふざけるな! と声を上げれば、あぁそうだった……お前は感情が高ぶったら口が悪くなるんだったなとベックが嬉しそうに笑っていた。懐かしいと言いたいのか。

「ふざけてねぇよ」

至近距離にある彼の目は真剣そのもので私を今まさに食そうとしていう獣の目だった。そうなれば、私は食われる側ということか。どうあっても、逃げられない。

「っ……」

重ねられた唇に一瞬、意識が移ったその時、中に突き刺さるように入ってきた。

「ひゃっ」
「なんて声出してんだ……」

根本までしっかり入ったその具合を確かめるようにベックがジッとそのままの状態を保っていた。その間も続けられたキス。舌が絡む度に中にあるそれが大きく脈打つのが伝わってくる。

「ベック……」

彼は私を求めている。解放された口で小さく名を呼べばベックが嬉しそうに目を細めながこちらを見る。

「またこうやって抱けるとは思わなかった」
「こんな状況、抱いているうちに入れないで。こんなの強姦でしょ……いいから、抜いて」
「すぐにその減らず口を叩けねぇようにしてやるよ」
「ちょっ……、ん、んんっ!!」

器用に立ったまま腰を動かす彼は私の口に指を突っ込んでくる。声は我慢するなよ、と町中の路地裏に立つ私に向かって喘げと言う。指のせいで中途半端に開いたままの口からは、艶めかしい声が小さく漏れる。飲み込みきれない涎は口の端からだらしなく垂れていき、ポタポタと地面にシミを作っていった。

「綺麗だ、なまえ」

囁かれる甘い言葉に胸が締め付けられる。あんなに愛し合っていたのに、なんで……なんでこんなことになったのかな。同時に頬を涙が伝っていった。

徐々に息を荒げるようになったベックにだんだん余裕がなくなってくると、より力強く打ちつけられるようになる。その度に反り返る体。逃すものかと追いかけてくるベックの腕で苦しいぐらいに抱きしめられれば、果てが近づいてくるのが分かった。

ちょうど、その時だった。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!