いついかなる時もさみしいひとのために

「あのう……」と声を出すとほぼ同時に、カクさんの指が頬に触れた。視界にはゆっくりと瞬いて頬を緩めるカクさんの姿があって、私は驚きのあまりに瞬きも出来なかった。カクさんの指が横髪を優しく梳いていく。「さらさらじゃのう」またカクさんが独り言のように呟いた。彼は私を殺す気なのだろうかと本気でそう思うくらいに、私の心臓はばくばくと波打っていた。顔なんて真っ赤で、なんなら耳も、首も真っ赤だと思う。それは彼から見ても分かるはずだ。あぁ――恥ずかしい。そう思うのに、目を逸らせない。

「わし、なまえのことが気になっとるみたいじゃ」
「っ、」

うわ……この人、本当に深く考えない直感タイプだ。それも質が悪いことに思ったことをそのまま口に出すタイプだ。

すぐ傍で見守ってくれているはずのマスターの気配はいつの間にか消えていて、待ってこれって空気読んで消えていますってやつですか。この人を止めてくれる人、いないのっ!?

「なまえはわしのこと、どう思うとる?」
「…………」

い、言えないよ。こんなの。こんな公開処刑みたいなの、無理……。

「ん……? わしのこと、嫌いか?」
「え、あ、いえそんなとんでもないです。カクさんはとても素敵な方だと……」
「それは光栄じゃの」

慌てて訂正すると、くすくすとした笑い声が返ってくる。カクさんが嬉しそうに笑っていた。帽子を取ったカクさんの髪はへなりと押しつぶされている。それを右手で掻上げるように撫で付けながら彼が言った。

「わし、素直な子がタイプでの」
「え……」
「付き合おうとまではまだ言わん。でも、」
「……でも?」
「先に相性を確かめたい、とは思うとる」
「…………相性」

相性って。…………え?

「この後、時間あるか?」
「っ、~~~~」

なぁ――と、恋心を抱いている相手に、こんなにもストレートなお誘いを受けて断れる人がいるでしょうか。――いいえ、いませんよね……きっと。

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