今ならえいえんを上手に交わせる

小さく返した頷きに、カクさんはとても喜んでくれて、連れ出されるようにして腕を取られてBARを抜け出した。

鳴り止まない心臓の音がやけに五月蠅い。

カクさんは静かに隣を歩いていた。二人はいつの間にか恋人繋ぎをしていて、私はふらつく足を支えてもらっていた。……どうしよう。たった数時間一緒に居ただけなのに、もうこんなことをする関係になってしまっている。……いいの、かな。

「綺麗じゃの」

顔を上げると、少し前は街灯の光で見えなかった星の光がよく見えた。夜はすっかり更け込んで、私の好きな時間がきていた。

「……綺麗ですね」

夢中になって空を見ていた。キラキラと光る星が本当に綺麗で、火照った頬に当たるひんやりとした空気が心地よい。手を引かれた。導かれるがままに水路の脇に置かれていた二人がけのベンチに腰掛ける。カクさんが上着を肩にかけてくれて、また手を繋いで、二人で空を見上げた。綺麗だねって。

しばらくしたらお酒が抜けてきて、頭の中がクリアになってきて、そこでようやく現状に目が向いた。

隣に居るのはカクさんでカクさんと私は恋人繋ぎをして隣に並んで座っている。その事実を再認識した途端に、急に恥ずかしくなってきて、折角落ち着いていた鼓動がまた動き出す。

私の様子が変わったことに違和感を覚えたのか、隣で布の擦れる音がして、顔を向けるとカクさんが首を傾げてこちらを見ていた。まるでどうした? というように。私は恥ずかしさのあまり、顔を横に背けた。なんだか居たたまれなくなってきたのだ。そうしたら、ぎゅっと繋いでいた右手を引かれて、強制的に向かい合わせにさせられた。もう片方の手の平も重ねられて、両手を繋がれて。これじゃあ逃げ場がない。…………でも、不思議と嫌ではなく。顔を俯けながらも前髪の間からカクさんの顔を盗み見た。

視線が合うと、弓なりに瞳が細められて、目尻の皺がぎゅっと寄る。眩しいくらいに優しい笑顔に胸がきゅっと鳴った。うぅ……その笑顔は狡いです。

カクさんの顔がそっと寄せられて、鼻に鼻が寄せられる。間近にある彼の両眼が私を見透かしていた。カクさんが「……いいか?」と小さく言う。私は一度強く目を閉じて、ごくりと喉を鳴らした。ここで頷いたら――彼との関係が始まるのだ。

私はゆっくりと目を開いた。

きちんと返事を待っていてくれる彼の吐息を感じながら、今一度挑戦しようと思った。大丈夫、彼なら後悔しない。眩しい笑顔に裏にある寂しげな姿が目に焼き付いて離れない。例え彼にどんな過去があろうとも、どんな秘密があろうとも、傍にいてあげたい、とそう思った。

小さく返した頷きに彼が何かを言うことはなく。代わりに降ってきた優しい口づけに夢中になった。味なんてないはずなのにおかしなことにその口づけは甘くって、縋るように啄むように繰り返される行為に溶かされていく。気持ちが赴くがままに「相性いいかも……です」と言ったら不意打ちだったらしい。カクさんが両目を見開いて瞬いた。首を傾げると彼が双眸を燦爛さんらんとさせながら、フッ――と。挑戦的な笑みを浮かべながら腕を引かれ、彼の胸の中に納まる。そのまま……私はどっぷりと沼に落ちていった。

:
:

230917 End.

Afterword

久々すぎてぶれぶれかもしれません……大変申し訳ないです。
2年後のカクを見た後なので、昔とちょっと捉え方が変ってしまっているかもしれません。
どうでもいいことなんですけど、カクの鼻って、キスするときどうするんだろ……っていつも思っています(笑

 

:
:

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!