「なまえ!」
「どうしたの、ルフィ?」
甲板で洗濯物を干す私に駆け寄ってくるルフィに手を止めて向き合う。
「俺な、なまえが好きだ!」
「え、あ、ありがと」
はにかみながら言ううちの船長に戸惑いつつもお礼を言った。ルフィはいつも突然だ。何をするにも唐突に言い出す。
「違う!」
「え、何が?」
「ただの好きじゃない、大好きなんだ!」
「う、うん……」
「仲間だから好きとかじゃなくて……なまえが特別に好きなんだ!」
待ってルフィ! 分かったから、そんな大きな声で言わないでー! と慌ててルフィの口を塞いだ。
「ふがっ!? ふがんふが……?」
「なんでって……そんなの恥ずかしいからに決まってるでしょ! ルフィの馬鹿!」
その場から逃げるようにして船内へ入って、キッチンの扉を閉めてふぅーとため息をついた。なんとなく誰かに見られているような? 視線を感じて慌てて周りに目を向ける。
「朝っぱらからあっついね~なまえちゃんとうちの船長は」
「ほんと勘弁して欲しいわ~」
「え、ちょっ! それはこっちの台詞だよ!!」
そこには朝食の準備の最中に手を止めてにやにやとこちらを見ているサンジくんとコーヒーを飲んでリラックスタイム中のナミ。二人とも他人事だと思ってるんだから、まったく。肩を落としながらも二人に抗議する。ルフィは素直過ぎる。こっちの身にもなって…………、
バタバタバタッ――
「あ、やば! 二人とも、ここに私は来なかったってことでよろしく!」
この足音は絶対ルフィだろう。他の二人もそう思ったみたいで呆れ顔で笑いながら二人そろって食料庫の方を見やった。それにつられるように視線を向けて頷く。今は取りあえず避難しないと!
バタンッ――
「ルフィ、何度も言うようだけど、扉は静かに開けて」
「ナミ! そんなことよりなまえこっちに来てないか?」
「来てないわよー。どうしたの?」
「あいつ、まーた俺の告白無視して逃げたんだっ。こっちに来たら教えろよ」
ルフィはそう言うと「あんたね~」とお説教を始めたナミのことを完全無視して慌ただしく走り去って行って、足音が遠のいていく。ほっと胸をなで下ろしたとき、食料庫の扉が開いた。
「なまえちゃん、行ったよ」
サンジくんがにっこりと笑って手を差し出してくれる。その手を握ってゆっくりと足を踏み出した。
「ありがとう。サンジくん」
「なまえ、いい加減答えてあげたら?船内じゃずっと逃げてられないでしょ?」
「……そうなんだけどね。こっちの気持ちも少しは考えて欲しい……なぁ~と」
「はは、まぁ確かにうちの船長はまっすぐすぎて、たまに俺にもこっぱずかしくなるような台詞言ってくるからな」
分からなくはないよとサンジくんが笑う。
「でも、いつかは言わないとね。あんたら2人が両想いなのは船長以外全員知っていることだからね」
「それは言わないで、ナミ」
私の反応を見てクスリと笑ったナミはサンジくんと一度目を合わせて、また笑う。今度は私の目を真っ直ぐに見つめる。柔らかな眼差し。ナミのその優しい微笑みには本当に困らされる。そんな笑顔を向けられたらこっちはもうたじたじ。仰せのままにと逆に頭が上がらない。
それにルフィと私が両想いなのは事実だから、否定することでもなかったし。さっきから火照りっぱなしの頬を両手で包み込みながら軽くパンパンと気合いを入れる。
こんなの恥ずかし過ぎる。でも…………確かにナミの言う通りだとも思う。早く答えてあげないといけないってそう思っている。思ってはいるんだけど、いざ彼を目の前にすると、あのキラキラとした真っ直ぐな瞳に気圧されしてしまってなかなか言い出せなくて。そんな真っ直ぐな彼が好きなのに、今はそのせいで前に進めずにいた。こんな皮肉なことって…………あぁ、もうどうしたらいいんだろ。頭を抱えて「あー……、私って意気地なし!」と吐き出すようにして言った。そうしたら、そんな私を見てられなかったのか、黙って私とナミのやりとりを見ていたサンジくんが口を開いた。
「なまえちゃん、今日が何の日か知ってるかい?」
「え、…………今日?」
「あぁ、今日」
「……何の日?」
「かー!あんたって子は……まったく!!」と言ってナミが立ち上がる。はいこれとサンジくんが差し出したものをナミが受け取って目の前に歩いてくる。
「手を出しなさい」
「えっと?」
首を傾げつつも両手を前に差し出すと、その上に手を突きだしたナミ。ポトン――と何かが手の上に落ちてきた。両手に収まったのは真っ赤な色に黄色いリボンのついた箱。それを見た瞬間、今朝見たカレンダーのことを思い出して、あっ! と声が漏れる。そうだ、今日は…………!!
「もしかしてバレンタインの?」
「そうよ!感謝しなさい。サンジくん監修の元、麦わら海賊団で作ったチョコレートよ!」
「うそ……」
「みんなで協力したんだから!」
「あ、ありがと?」
嬉しいんだけど、どうしてまた急にプレゼントなんて……? と首を傾げる。そうしたらナミが言った。
「勘違いしないでよ?それは私たちからなまえとルフィの二人にあげるものだからね」
「それって、つまり……?」
「つ・ま・り、それはね、なまえからルフィに渡すものなの。それがあれば言いやすいでしょう?」
「っ、ナミ!!!」
ナミの名前を呼んだら、「まったく、世話の焼けるカップルなんだから……」とため息ひとつ吐き出されてしまった。あははは……すみません、と頭を下げる。俯けた目元は少し湿っていた。ナミ達の気遣いが嬉しくて。みんなから祝福されてるんだって、そう実感して、すごく嬉しかった。
「これでルフィを喜ばせてあげて」
ね? っというナミにコクコクと何度も頷いた。何度も何度も頷いていたら、「ほらさっさと行きなさい!」とせっかちなナミと「頑張って!」と励ましてくれるサンジくんに背中を押される。
「うん! 行ってきます!」
キッチンの扉を開いて、肩越しに後ろの二人を見る。グッと親指を立てた二人に頬を緩ましながら部屋を出た。バタン――扉が閉まった音を合図に私の足は走り出す。
彼はきっとあそこにいる。そう確信していた。だから、私の足は迷わず一点に向かって進んでいった。
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見つけたのはサニーの頭の上。ルフィの特等席。
「ルフィ……」
「おぅっなまえ!」
ニシシシと笑うルフィに安堵する。
「さっきは逃げてごめんね」
「んや、俺も悪かった!」
「え?」
「ウソップにもっとなまえの気持ちも考えろって言われたんだ」
「あぁ……そうなんだ」
その様子を想像して笑みがこぼれる。ありがとう、ウソップ。
「それで、どうしたんだ?」
なまえの方から話しかけてくるの珍しいよな?とルフィがサニーの頭の上から降りて来てくれた。
「これ……」
「ん?なんだ?」
箱を前に突き出すとルフィがそっと両手で受け取る。
「……バレンタインだから……ね。ルフィにチョコをあげようと思って……」
「これを、俺に?」
「……うん」
「ありがとう!なまえ!」
本当にうれしそうに笑ってくれるルフィを見ていたら胸が暖かくなってきた。
「後ね、これ……」
差し出した小さなメッセージカード。ルフィは受け取るとゆっくりと開いて目を通す。
「なまえ…………」
「あの、その……こんな私でよかったら……」
「なまえっ!!」
名前を呼ばれて顔を上げると同時に体に衝撃があって、すぐ横にはルフィの顔があって、抱きつかれたんだって気づくまでに少し時間がかかってしまった。
「なまえ、ありがとな……」
「ううん。私こそルフィにありがとってずっと言いたかったんだよ」
「……そうか」
ぎゅうっと抱きしめる力を強めたルフィは大好きだと耳元で何度も言ってくれた。私は恥ずかしくて1回しか言えなかったけど、それでもルフィは幸せだと笑ってくれた。
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ルフィへ
私はルフィみたいに自分の気持ちをまっすぐに表現できないところがあるから、ルフィにずっと伝えられなかったことがあります。私もルフィのことがずっと好きでした。大好きでした。ルフィと同じで特別な好きです。
ずっと言えなくてごめんね。
ルフィが大好きななまえより
:
:
サニー号のテラス。洗濯物を干したところからはよく様子が見えていた。そこに立って見守る2人。
「ようやくね」
「あぁ、そうだな」
カチャンとたばこに火をつけながらサンジが答える。
「あら、うまくいったの?」
ナミとサンジがのぞき込んでいるところへロビンも合流する。
「みたいね」
ほんと良かったわとナミが微笑みながら呟く。
「これでしばらくは落ち着くかしら?」
「それはどうかな?」
クスクスとサンジが笑う。
「ナミどうしたんだー?」
3人が集まっているところを見たチョッパーが下から駆け寄ってくる。
「あら、チョッパーいいところに!」
ロビンが大げさに言う。
「後ろで見てる野郎どもに伝えてくれ、今夜はお祝いだってな」
さー準備するぞーと行ってサンジはキッチンへ向かっていった。
「お祝い?何のだ?」
通り過ぎていくサンジに聞くが答えてくれない。ナミに理由はいいから行ってきなさいと強めに言われて、チョッパーは押されながら返事をした。
「お、おぅ! 分かった!」
チョッパーを見送ったあとナミとロビンも準備するために足早にキッチンへ向かうのだった。
(Plan:Valentine)
150217 End.
Afterword
ルフィがみんなを好きなように、みんなもルフィのことが好きなんだ。ルフィは気づいてないかもしれないけど、そんな見返りを求めないルフィの仲間愛が痛いほど伝わってきてほんといつも泣きそうになります。ちなみにサンジくんはナミさんのものです(*^^*)
ルフィに乾杯ー!

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