意識を取り戻したなまえは、それまでの態度が嘘のようで、この船に来たときのように利発で礼儀正しい女の子に戻っていた。いや……正直、信じられない。
マルコとサッチは裸のまま顔を見合わせていた。
「なまえ、体は?」
すかさずシャンクスが聞く。
「あ……うん。おかげさまですっかりすっきりしています」
「……そうか」
それは何よりだ――そう言って、シャンクスはベッドの上に深く腰掛けた。
「……ごめん、シャンクス。また無理させたんでしょ、私。……腰、大丈夫?」
いやいやいや、それは普通男が女に言う台詞だろ、とサッチが喉まで出かかった声をなんとか飲む込む。
「あ~、しばらくは無理。だからもう俺に振るなよ」
シャンクスが念を押すと、それを受けたなまえがからからと笑っていた。
「副船長……いや、ベックマンも。……わざわざ来てくれてありがとう。本当に、助かりました」
「いいや。このくらいは問題ない。おかげでしばらくは性欲は戻って来なさそうだ」
……確かに。残りの三人が胸中で頷く。
「ごめんごめん。でも、こんなに酷くなるのは主じゃない人とするからだよ。ちゃんと定期的に主のを補充していればこんなことには…………あ、っというか、どうして主を移してくれていなかったの!」
ようやく気が付いたらしい、このお姫様は……。
「俺はちゃんと移したつもりだったんだって。だいたい、ミホークから俺に移すときは電話口で良かったのに、一体どうして……」
シャンクスが首を捻る。今回のこの4人組での時は何ら問題なく、すんなりと口頭で主を変えることが出来た。あまりにあっさりとし過ぎていて混乱しているくらいだ。
「……もしかしたら、その場になまえがいないといけないのかもしれない……」
ふと、マルコが言った。
「あ……」
確かに。なまえは思い浮かべていた。シャンクスに主を移したとき、私は電話口のミホークさんの声を聞いていた。今回も意識は飛んでいたけど、その場に居合わせていた。
「それは十分あり得るな……」
真剣に眉を顰めながら、ベックマンも頷く。その様子を横目に見ながら、なまえはようやく現状に目が向いた。
女一人に男が四人。かつ、全員が一糸まとっておらず……やだ、何これ、羞恥心過ぎやしませんか……!
「…………あのう」
「どうした、なまえ」
「取り敢えず、服着ませんか」
「…………そうだな。話は着替えた後にするか」
苦笑するシャンクスに共鳴して他の3人も苦笑する。
いや、ほんと……凄い光景……と思いながら、なまえはシャワーを浴びることを告げて部屋を出たのだった。
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……気怠い。物凄く、気怠い。でも、体はすっきりとしていて痛いところもなかった。シャワーを浴びながら、次の主の宣言を聞き忘れたことを思い出す。次の主の移行は絶対に立ち会う。忘れないようにしないと――心に誓いながら、次……誰にするんだろうか、と考えていた。
マルコとサッチは疲労困憊という感じだったので、おそらく別の誰かになるだろう。
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服を着替えた後に再集合をした。その場には先ほどまでいなかった『火拳のエース』が立っていて、あぁ次の主は彼なのか、と察した。
じゃあ、宣言するぞ――とシャンクスが言った後に予想していた通りに主はエースに移された。
「よろしく、エース」
「こちらこそ、よろしく!」
相変わらず礼儀正しい人だ。
「俺たちの役目はここまでだな」
シャンクスとベックマンが迎えに来たレッドフォース号に戻っていく。
「シャンクス、ありがとう!」
お礼を込めて手を振った。――そのとき、
「あ、そうだった! ミホークから伝言を預かったんだった。お前を海軍本部で拾うって言っていたぞ」
「……え”! 海軍本部ッ!?」
……なぜそんなことになったのですか、ミホークさん! 海賊に預けられているというのに、どうして海賊の最大の敵である海軍の本拠地で回収するということになるのですか……。彼の頭の中を本気で覗いてみたい。
「最終的にたどり着けばいいだろうから、マルコ達に近くまで送ってもらったらいいさ。シャボンディ諸島くらいなら送って行けるだろ?」
「それくらいなら大丈夫だな」
シャンクスの問いにマルコが頷いて答える。……良かった。先の道が途切れてしまうことはなくなったようなので、ほっとした。……でも、シャボンディ諸島ってどこなんだろう。この船にいる間に色々と教えてもらっておいた方がよさそうだ。
……にしても、当然の如く、ミホークの元に向かう自分自身に違和感が……。捨てられたっていうのに、へーこら付いていって行っちゃってさァ……あぁ、むかつくけど、すごく会いたいんだよね。……あぁ、もう……やっぱりむかつく。
「……よし、それじゃァな!」
大きく手を振ってくれるシャンクスに、私も大きく手を振り返す。彼等の船が遠ざかっていく姿をぼーっと見送った。また少し、自分の能力のことを知ることができた。あれだけ巻き込んでしまったのに……、巻き込まれた側の彼等は私を責め立てることもなく受け入れてくれた。なんだか調子が狂ってしまう。今はその優しさに有り難く乗っかるしかできない、自分が不甲斐ない。いつか……いつか恩返しでも出来ればいいんだけど。でもそれはいつか……であって、今ではない。
気持ちを切り替えないと――、隣に立つエースを見上げた。
「エース」
「ん?」
「今日は休む予定だけど、明日以降はいつでも出来るから、したくなったら声をかけてね。私も、必要なときは言うから」
仕事の連絡事項を伝えるようにして、あっけらかんと伝える。副船長……ベックマン曰く、こういうのは開き直った者が勝ち、だそうだ。教えてもらったことを早速、実践する。
「…………」
「……あれ、エースさ~~ん?」
エースが固まってしまった。
「なまえ……、こいつ、そういうのに耐性がないから。お手柔らかに頼む」
むふふっ――と笑ったサッチが、ここぞとばかりにエースの顔を覗き込みながら言った。「うるせぇ……!」顔を振ったエースの横顔、耳が真っ赤っかだ。
「…………か、可愛い!」
「っ、可愛いっていうな、可愛いって!」
やだ何この子、可愛すぎるんですけど……!

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