明日にでも、目的の島に着きそうだ――というところで、船長の友人らしい別の海賊団に遭遇した。
その海賊団の船はとても変わった形をしていた。
「…………え? 海にもぐ……潜れるの?」
「あぁ、そうなんだ! すげぇだろう?」
「うん、それはすごい……」
船から現れたのは、お揃いの『ツナギ』服を来た船員の面々――と、
「おいてめぇら、はしゃぎすぎだ!」
明らかに別格という風体の、もふもふ帽子を被って、でっかい刀身の刀を背負った細身の男。目つきが悪過ぎて近付きがたい感じがしたので、一歩後ろに下がる。
遅れて部屋から出てきたゾロが私の隣に並んで「その対応で正解だ」と言った。「えっと……つまり?」首を傾げる。
「彼奴があの船の船長だ」
おぉ……私の勘もだいぶ鋭くなったのではなかろうか。それはこれまでの経験から為し得たわざなのか、はたまた、気付いて当然のことだったのか。……うん、深く考えるのはよしておこう。
「おい、なまえ!」
「はい、船長!」
ルフィ船長がにっこにこでご機嫌だ。
「今日は宴をするぞ! なまえも、トラ男に挨拶しろよっ!!」
「え? あ……え? あ、はいっ!」
え? これって強制ですか? と目をぱちくりさせながら隣を見上げた。そっと視線を逸らされた。
「っ、ゾロ!」
「わりぃ、俺じゃあ、ルフィには勝てねェ……」
そりゃァそうでしょうね。ほんの少し前に出会ったばかりの女と己の命を捧げると誓った程の相手。どちらの言葉を優先するか、そんなことは考えるまでもない。……はい。でもさ、でもさ! 別にここはそんなたいそうな場面じゃないからさぁっ! 私、必要なくない? ぜぇ~~ったいに、やっちまうと確信しているのにさ、それはなくない?
「なまえちゃん……」と哀れむように見てくるサンジさんを悲壮感たっぷりの目で見つめる。あぁ……サンジさんまで。彼までもが諦めてしまっている。絶望だ……。
はぁ……深いため息を吐き出す。
彼等がこんな顔をするのも無理はない。私の能力はここ数週間でものすごく進化した。おかげさまで、ほぼほぼ能力を使いこなせるようになった、と感じている。能力が開花しちゃったのだ。
開花した能力の何がすごいか、えぇ言ってやりましょう。実はこの能力は、主を選ぶことができる。……そう、自分で選ぶことができるのだ。ずっと私は勘違いをしていた。私は選ばれる側なんだと。それは勘違いだった。……思い込みって恐ろしいね。
実際は、私が相手に選ばれたうえで選び返すのではなく、私の方から一方的に相手を選ぶことができる能力だった。選んだ上で、ことに至れば、能力はより強固に相手を縛ることができる。えぇ……そう、お気付きのとおり。ゾロも、サンジさんも、私の能力に引きずり込まれてしまった前例なのである。
それに気が付いたのはほんの数日前で、この能力がいかに恐ろしいものであるか、その時、はじめて私は気付いた。二人は盲目的に私に接してきていた。……あまりに献身的で、それはもう知り合い程度の接し方ではなかった。まるで愛する人を囲い込むように接してくるのだ。……これは何かがおかしい。強い違和感を覚えた。
私はそれをそのまま二人に話した。――で、二人とも腑に落ちた……というか、よく分からない感情に振り回されていた自分自身とようやく向き合うことができ、我に返ることができた。能力を理解した上であれば、多少抗うことはできるらしい。それも二人から学んだことだ。
私はそんな人の気持ちを操る能力なんて使いたくない。能力で得た人間関係などは願い下げだ。二人に伝えたところ、彼等は私よりも冷静で、落ち着いた様子で言い放つ。
でも衝動はあるんだろう?――と。
……あぁ、そうだ。その通りだ。
問題は、『性欲の衝動はなくならないらしい』ということだった。
これは恐らく、能力が強力すぎるがゆえの反動……足枷のようなものだと思われる。大きな力には代償が伴う。はぁ……こんな力、望んで得たわけでもないのに。…………どうして。それくらい強い能力なのだ。衝動のせいで、私は定期的に誰かを相手にしなければならない。…………仕方がない。
でも、私だって馬鹿じゃない。その衝動がいつ来るのか分からない状態で待つよりも、先に行動して相手を見つけた方が良い。そういうわけで、ゾロとサンジには変わらずお相手を続けてもらっていた。二人にはのめり込み過ぎないようにと毎回釘を刺すようにしていたけれど、本当に聞いてくれているのか、……ちょっと怪しい。
そして、今日、本当なら私は、ゾロとサンジと一緒に、能力の検証実験と命名した『行為』を行うこととなっていた。欲望の衝動が起こる限界ぎりぎりのところまで耐えたあとだと、今までとどのように違ってくるのか、それを調べるために二人に協力を仰いでいたのだ。衝動の限界を越えて意識を飛ばしたことはあった。でも、その直前での『行為』はしたことがなかったからどうなるのか、知っておきたかった。
……だというのに。
「…………えぇ」

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