灰色の世界。それが私が育った世界。
灰色の煉瓦が囲われた入り組んだ迷路。それが私たちの生きる場所。通りを曲がって進んだ先、そこに私たちはいる。私たちはこの灰色を真っ赤に染め上げる朱色の中で必死に生きている。今も――
「っ、ふ――」
乱れた呼吸に乱れた服。ズレかかった肩のストラップを戻しながらゆっくりと体を起こした。一張羅のタイトで真っ白なワンピース。裾は腰下20cmぐらいだろうか。これぐらいじゃないと客は取れないから。1年前の私が今の姿を見たらなんて言うかな。信じられない、汚い――かな。
「はは……」
たぶんそうだろう。だって今の私だってそう思うんだから。信じられない、汚い。こんな世界で生きていくなんて信じたくなんてない。少し前はまだ神様はいるって、そう信じていたのに。もう……信じられなくなっていた。
カサッ――
手の内に押し込まれたぐしゃぐしゃの紙。それを握りしめる。ぼ――っ、と俯いたまま、握りしめた拳を目の前で開いた。2枚。こんなんじゃ足りない。汗や油や血。そういったものが染み込んだ札は綺麗なものじゃない。誰が好き好んでこんなものを手にしたがるものか。でも、これがないと私は生きていけない。
未だに自分の運命には納得できていなかった。でもずいぶん自分を騙せるようにはなった。納得した振りをして自分を騙して、毎日毎日、何度も何度も客を取る。上がった金を渡して――また繰り返す。そしてこんなの何になるんだって思いそうになる自分を握り潰すのだ。
パン、パン、パァ――ンッ
銃声が鳴った。
「…………あーぁ。また客が減った」
そんな日常だった。

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