03 変わっていくようで変わらないもの

最近よく見る顔がいる。一度も話したことはないし、一度も顔を合わせたこともない。ただこちらが一方的に知っているだけの相手だ。その人は男で、すごく背が高い。そして真っ白なスーツを着ている。灰色の世界じゃ白は目立つ。だからその人がいるときはすぐに分かった。

ついさっきもその人を見かけた。その人の隣には女がいた。女を買ったのだろうか。……だとしたらいつか顔を合わせるときがくるかもしれない。そんな日が来て欲しいような、来て欲しくなような。そんな複雑な感情が胸に渦巻いた。…………なんだろう、これ。2、3回深呼吸をしたら治まった胸の苦しみは何のせいだったのか。結局、答えは分からないまま次の客を迎え入れた。迎え入れるといっても数メートル歩いて路地裏に入る、それだけ。

声を押し殺して相手の行為が終わるのをただジッと耐えるようにして待つ。初めは苦しかった。穴から抜き取られどろりと溢れだした白い液体が太股を伝って落ちていく。カチャカチャとベルトを締める音が後ろから聞こえ、その数秒後にはもうその男は消えていた。壁に寄りかかり俯くとひらひらと地面に落ちていく紙が視界に入った。

じんわりと滲む灰色の世界。

あーあ。もうすっかり忘れていると思っていたのにな。

「っ、」

たまにあった。ふいに不安に苛まれ、何を機会にしたのか自分でも分からないまま涙が溢れ出す、そんな現象。これはなんていう現象なのだろうか。

「…………悔しい、かな」

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