カランカラン――
甲板の上を高さのある下駄が行く。歩く度になる音が朝の静けさによく栄える。それもまた私の好きなことだった。この音に耳を傾けながらゆっくり歩くのが好き。
先ほどつらつらと怒っていたその人、名はさあさん。もちろんあだ名。おそらく本名が「さ」から始まるのだろうなと思う。けれど、この世界にとってあだ名は名前も同然。従って、本名を聞くと言うことはこの世界での名前を認めないということ。とても失礼なことなのだ。故に私は聞かないでいる。加えて、そのおかげで私も本名を聞かれることはない。結果的に、自分の名前を知らないことを周りに知られることがないので、このしきたりには感謝さえ覚えている。
さあさんはこれを着ておくんなしと薄着の着物の上に、厚手の着物を羽織らせてくれる。羽織をかけるのは慣れたもの。それは、私がよくこうしているので、かける回数が必然的に多いのと、私自身の背がとても低いことが理由だろう。周りに言ったことはない。が、たぶん、みんな気づいていると思う……。私が背にコンプレックスを持っていることを。実際に計ってみれば案外大きいのかもしれないからと自分に言い聞かせて計って、絶対的な数字によって絶望した。こんなの覆せませんから。
145cm。この新世界では小さすぎるという話である。まぁ、その通りで、私は新世界出身ではない……らしい。そもそも故郷の記憶なんてものがないから、聞いた話によると……なんだけれども……ん? なぜ、それを知っているかって? それはね、私を育ててくれた人が教えてくれたから。その人はとても変わった人だったけれど、私はその人に出会えて、今でも本当によかったと思っている。その人の話はまた別の機会にしよう。きっと私が話し出すと長くなるだろうから。

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