Prologue 3/6

とりあえず、今は心配そうにこちらを見つめるさあさんの言うことを聞こうと思う。後で面倒なので。クスリと笑みが漏れる。扉の前で立ち止まって、今の自分が乗る船を見上げる。とても大きな船。一番高いところはここからじゃ見えない。その先、天辺に私の住むお店はある。

さあさんの後ろについて船内に入る。そこはとても広い空間。船内なのに大きな床の廊下がどこまでの続いている。ここはこの船で言う大通りというところ。迷ったときは、一度この大通りに出れば大丈夫と言われるぐらいで、どの道とも繋がっている。この船の中心。道の両側にはお店があって、まるで島に上陸したかのような気にさせてくれる。これがこの船の売りでもある。ここは船乗りたちの休息所セイラーネスト。この船の上では、海賊も海軍も一般人もすべてが大切なお客様。もちろん、ルールはある。特に海賊の奴らの中には行儀が悪い奴らがいる。そういう奴らにも対応できるようになっている。

安心して、休憩することができると、信頼はどのお客からももらっていて、客足も絶えることはない。そういうわけで、結構儲かっている。その中で売り上げの大多数を閉めている区画がある。それが私のいる遊廓である。そう、あの天辺にある。そこには遊女がたくさんいて、まぁ、男の相手をする場というわけである。かくゆう私もその中の一人。あだ名はなまえ。姉さんとかなまえちゃんとか、まぁ皆さん好き好きに呼んで下さる。

残念ながら、私は売り上げトップではない。……というか、正直相手をするのが面倒だし、仕事にまじめに生きるタイプでもない。多くに好かれなくていいから、なんかいいなと思った人の相手さえできて、生きていければそれでいいじゃないかと思っている。実際、有り難いことに指名してくれる人達がいる。ここではまだ明かせないのだけれども、私もその人たちのことが好きなので、それに答えて過ごしている。

「姉さん、昨日も遅かったんでしょうに」

さあさんは、私に質問するときに私が答えても答えなくてもいいように聞いてくれる。独り言のように言って、私に語りかけてくれる。そういう気遣いも大好きだった。

「うん。ちょっと寝るのが遅かったかなぁ」

そこでようやく口を開く。今日初めて声を出した。

「しばらくはお相手はなしですかねぇ」

コクリと頷き、そのようにお願いと言えば、はいはいと返してくれる。私は自室へ向かい、さあさんは船尾への道に入る。……というもの、私は体が小さいせいか、続けて客の相手をするということができない。毎晩相手している子は一体どういう体をしているんだと思う。私の相手の殆どが肉体派っていうのもあるとは思うけど……。

「はぁ……1週間は安静だな……」

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