04 転機かどうか、それ決めるのはあくまで私

通りの隅っこ。暗い影。暗黙の了解で客待ちをしてもいいとされている場所で通りを歩いていく人をぼ――っと眺めていた。

「ねぇそこの君。相手してよ」

明るい声色だった。私は珍しいものを見るような目でその声のした方に顔を向けた。

大抵の客は何も言わない。ふいに現れて隣に並んで視線を送ってくる。それだけで交渉は成立する。だからわざわざ声を出したその男がとても珍しかったのだ。

「あ…………」

「え、何よ。まさか君も? なんかみんな気味悪がっちゃってさァ」

確かに。普通ならいつもと違う雰囲気の客とは関わろうとはしない。もしかしたら何かいわく付きの人かもしれないし、そんな人と一緒にいて殺されでもしたら困る。だからまず関わろうとはしない。私だって、先ほどの一声を聞いた直後は”関わらない”と決めていたのだ。

でも――

そこに立っていたのは”あの男”だった。長身の真っ白なスーツを着た男だった。だからその選択肢を捨てた。

「お~ようやくまともにこっちを見てくれる子がいたよ。いや、ほんと助かる。ついでと言っちゃなんだけど、話もしてくれる?」

――が、その選択肢を捨てて良かったものか、とその後、数秒経たずに悩んでいた。娼婦と話をするというのか。館の女ならまだしも、ここ一帯を取り仕切るファミリーの傘下の女に会話を求めるなんて。この人、馬鹿?

「する気がないならあっちへ行って」

きびすを返してその男から離れようとしたときだった。

「見つけた!! あの野郎だ!!」

バタバタバタ――何人もの人が石畳を走る足音が聞こえた。振り返ると辺りに立っていた人影がなくなっていて、その瞬間自分が逃げ遅れたということに気づいた。

案の定、それから数秒足らずで足音の男たちが現れ、私の前に立つ例の男とその後ろに立つ私を見た。これはまずい。この立ち位置じゃこの男の仲間だと勘違いされてしまう。離れないと!

「チッ――逃げるぞ!」

「はっ!!?」

男は何を思ったのか、私の手首を掴んでそのまま走り出したのだ。当然力では勝てない私は引かれるがまま走るしかない。なんなのこれ。これじゃあまるでこの男の仲間じゃない。

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