その翌日のこと。
「はい、ストップ」
「……なんだよ」
廊下を歩いていた青年の前に立ちはだかる。
「これ、どうしてくれるのよ」そう言って、自分の来ているTシャツの裾をめくる。白い透けるような肌の上に赤い痕がまばらに散っていた。続けて、Tシャツの襟が伸びるのを承知の上で、グィッと襟を下へずらせば、同じく赤いものが散っていた。
「いいじゃねぇか、夫婦なんだろ?」
「それとこれとは別! 少し考えたら分かるでしょう? ロロノアくん、君は自分の師匠が化け物だと知っているはず」
「何言ってんだ。あいつは人間だろうが」
「……君、物の例えっていうやつ知ってる?」
はぁとため息が漏れる。「コーヒーが飲みたい」そう急に呟いた青年が私をキッチンへ連れていく。当然私は、「はぁ? なんで年下の君のためにわざわざコーヒーを入れないといけないのよ」と断ったが、無言で返されちゃあ、どうもこうも……ついていくしかなった。苦手なんだよね、こういう風にすぐに無口になるタイプは。ちらりとミホークの顔が頭をかすめた。
ガチャンとわざと音を立ててテーブルにカップを置く。はい、どうぞとコーヒーを差し出せば、おう……と都合のいい返事。青年は一口、口に含み飲む。カップから口を離すと私の目を見て言った。
「で、なんで俺が責められてんだ?」
「……君が猿芝居したからでしょーがっ!」
「じゃあ、その猿芝居にひっかかったお前は猿か? ヒヒか? あ、どっちも猿か」
クククッと腹を抱えて笑う青年を睨みつける。
「あの後本当に大変だったんだからね! もう二度とごめんよ。絶対ミホークに手を貸さないで」
「は? 夫婦なんだろ、それはないだろ」
なぜ二十歳になったばかりのような青年にこうも言われているのだろうか私は……、とだんだん馬鹿馬鹿しくなってきた。
「じゃあなんで夫婦になったんだ?」
「……え?」
なまえさんは、まるで……世にも不思議な質問をされましたって顔をして、俺の方を呆然と見ていた。
「好きだからに決まっているじゃない」
……ますます訳が分からない人だと思った。

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