愛おしくて狂おしい

今、俺は俺のベッドでスヤスヤと眠るこいつが憎たらしい――

仕事を終えて帰宅すると部屋に電気が灯っていた。おかしい……鍵はかけたはずだ。使用人に声をかけようと探したが、さすがに深夜2時に出歩いているものはいない。かといって、ビビるようなことでもないと思い、いつも通りに鍵を開けて中に入った。人の気配を感じて寝室へ行くとずいぶん懐かしい奴が気持ちよさそうに寝息をたてていた。

「…………」

…………で、冒頭に戻るわけだ。なんでこいつがここにいる?

確かこいつは――

俺がアルバーナの一件で捕らえられ、インペルダウンに入る前に宮廷で俺の後ろをついてまわって来ていたやつだ。まさか、ここまでついてきたというのか? 考えを整理するために葉巻に火をつけて煙をゆっくりを吸い込む。あの時はまだまだ小さかったが大きくなったものだな。煙を吐き出し、ベッドに腰掛けて少女の顔を覗き込んだ。

「……おまえは俺を覚えていたのか」

優しく前髪を撫でてやると少女は口元を緩め、ぐずるように声を出す。なァ…………お前はどうしてここに来た? サラサラと落ちていく前髪を何度も何度もすくった。その度に現れる幼く小さな額に胸が苦しくなった。あまりに弄び過ぎたせいだろうか。髪を撫でる俺の手を捕まえたその少女が腕を掴み、体を擦り寄らせてくる。一瞬、起きたかと思ったが……そうじゃないらしい。少女は未だ気持ちよさそうに寝息を立てていた。

「…………」

さすがにシャワーぐらいは浴びたい。傍にある温もりから離れるのがなぜだか惜しく感じた。俺とこいつはそんな親しい仲ではなかったというのに。…………なぜだ。なごり惜しみながらも手を払うと目がうっすらと開いた。

「…………ん?」
「……起こしたか?」
「あ、う……ん……クロコダイルさん?」
「あぁ」
「ほん、もの?」
「あぁ」

まだ寝ぼけているようだった。夢だと思っているのか? 疑い深く確かめたあと、体を起こして手を伸ばしてくる。それを無言で見つめた。伸びてきて手は俺の頬を覆う。

「おかえりなさい」
「あぁ……」

そう言うと満足げににこりと笑って、また瞼が落ちていった。

スゥ――

ハァ――

これじゃ動けねぇじゃねェか。葉巻の煙を吐き出しながらどうしたものかと考える。あっという間に一本の葉巻が吸い終わった。

「…………寝るか」

もう…………いいか、とそう思った。もうそう固くなる必要はないとそう思った。一度は選び、失ったものだとしても、今もそうとは限らない。また選べばいいじゃねェか。横になってなまえの肩を抱き寄せながらゆっくりと目を閉じた。

フン――、俺もずいぶん弱くなったものだな。

140503 End.
150216 修正
170129再修正

Afterword

クロコダイルにはちょっと幼い女の子がいいんじゃないでしょうか?(私得)

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