「あら、なまえ。早かったわね」
「あーっと、……」
はは、と苦笑いを浮かべるとカリファさんが首を傾げた。
「実はまだ終わっていなくて」
「……どうしたの? 何か問題でも? ……まさかあいつ!!」
部屋に向かおうとするカリファさんの腕を思わず掴む。
「ちがっ」
「え?」
「違うんです。実は彼かなりお疲れのようで、この後予定がないようならそのまま寝かせてあげようと思って……」
「え?」
そう言うとカリファさんは口はポカンと開けたまま固まってしまった。あの……? と何度か言うが応答がない。
「あのっ、カリファさんッ?」
思い切ってもう一度腕を掴んで軽く体を揺らすと意識が戻ってきた。
「え、あぁ、……ごめんなさい。……今、ルッチが寝てるって言った?」
「あ、はい。そうですけど?」
「うそ、あのルッチが? 人前で? あり得ない」
「でも、とても気持ちよさそうに寝てて。……あの、だから」
「えぇ、もちろんよ!」
「はい?」
「だから、もちろん! って」
「じゃあ……」
「なまえ、この後の予約は?」
「あ、そうでした。それを確認に……」
受付に置いてあるパソコンの画面を覗き込んでスケジュールをチェックする。よかった。今日はもう入っていないみたい。ほっ、と息を吐き出して後ろに立っているカリファさんを見る。
「今日はネイルもマツエクもどっちももうないようなので、」
「えぇ、じゃあルッチについていてあげて」
「……はい、」
まるで病人のように扱われる彼の処遇になんとなく違和感を覚える。眠っているのだからずっと一緒にいる必要はないのでは? メモとチャイムを置いておいて、起きたら押してもらうとか。他のお客はそうするのに。じゃあ行くわと歩きだしたカリファさんに思い切って聞いてみることにした。
「カリファさん」
「ん?」
すらりと伸びた綺麗な足が止まり、引き締まったくびれから上がこちらを向く。ブロンドの長く美しい髪が揺れ、その中からはレンズ越しの瞳が私をしっかりと見据えていた。
「ルッチさんって、何者ですか?」
「……え、あれ? 知らないの?」
「知らないって、何を……?」

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