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急に腰を折ったスモーカーが、なまえに何かを言った後に姿勢を正す。滑るように視線がこちらに向いた。にやりと笑う様にゾワリ――胸が騒つく。
視線をなまえに向けると、完全に固まっていた。その顔は首元まで不自然なくらいに赤くなっている。……大丈夫なのか? 心配になり、声をかけた。
「……少尉? 大丈夫か」
「…………あっ、はい……大丈、夫……です」
両の手の平で頬を覆って、何やらぶつぶつ言っている。そんな彼女にスモーカーが言う。
「ハッ、そんなんじゃ先が思いやられるな」
「お、……お言葉ですが、人前でやるべきことではありません!」
「じゃあ、人の気がなければやっていいのか?」
「っ、~~~~」
喉を詰まらせ、猫が毛を逆立てるように、なまえがスモーカーを睨みつけている。
「あぁ……そうだ。これも渡しておく」
スモーカーが差し出したのは電伝虫だった。不思議そうに首を傾げつつ、彼女が受け取る。
「個人用だ。声が聞きたくなったら使え」
「え……」
「いつでもかけろ」
「は……はい……」
なまえが俯く。その頬にスモーカーの手が伸びて、落ちてきた横髪を耳にかけながら言った。
「そんな顔すんな。会えなくても、俺はいつでもお前の傍にいる」
「っ、」
「…………おいおいおい。頼むから、泣くなよ」
まるでそれが引き金になったように、ぽろぽろとなまえの両眼から涙が落ちていく。反射的に伸びた腕は空振りし、彼女の体はスモーカーの腕の中に納まった。
「…………ありがとうございます。大切にします」
「あぁ……」
ぎゅうと抱き締め合いながらも、スモーカーの視線は俺を見ていた。その目はまるで敵を見る『それ』で、胸が締め付けられる。
「…………で? モモンガ、てめぇは、俺のなまえに何の用だ?」
疑惑が確証に変わった瞬間だった。
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本当は、今晩、なまえを食事に誘う予定だった。――が、この状況でそんなことができる訳がない。
「そうでした! モモンガ中将は用があって来られたのでは? お伺いするのが遅くなってすみません!」
慌てたなまえがスモーカーの腕の中から出てくる。肩に置かれた手が、それ以上前に出るなと、なまえを制していた。
「…………モモンガ、てめェ……ちゃんと話をしたのか」
スモーカーの静かな一言が胸に刺さる。何度も、何度も、伝えようとした。……でも、出来なかった。どうして出来ないのか、分からない……いや、違うな。それは言い訳だ。…………怖いのだ。俺は、なまえに罵倒され、見放されるのが怖くてたまらないのだ。
首を捻って瞬くなまえは状況を掴めていない。
「今日、話す」
「…………今日、か。今まで何してたんだよ、てめぇは。そんなだから、こいつは俺のになったんだ。…………分かってんのかァ?」
「…………」
「話すなら、執務室でしろ。それ以外は、俺は許さねぇからな」
「…………スモーカー、中将……?」
ぽんっと、なまえの旋毛の上にスモーカーの手の平が乗る。
「なまえ、俺がいるとき以外、酒は飲むな」
「え゛……」
「分かったな……」
「はいぃ…………」

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