狼まであと何秒?

イライラ。

「どうしたのですか、スモーカー大佐?」

イライラ。

あきらかに不機嫌なスモーカーがたしぎをギロリと睨みつけた。

「…………」

返事はない。スモーカーは視線を先ほどの位置に戻す。たしぎもその視線の先をたどった。2階から1階に視線を落とすと、そこには最近G-5に入ってきた新人のなまえがいた。

「なまえちゃんありがとう!」
「いいえ! いつもお世話になっていますから」

そう言ってなまえは周りの男たちに可愛らしい笑顔を振りまいている。

「あ、クザンさん!」

なまえの視線の先には偶然通りかかったクザンがいて、なまえの呼びかけにその足が止まる。

「ん、なんだい?」

振り向いたクザンにいつもありがとうございます! となまえはラッピングされた小さな包みを渡した。

「これは~?」
「バレンタインですので」

えへへ、となまえが笑うと、たしぎの横からピキ……という嫌な音が鳴った。

「あ、のスモーカー大佐?」
「あぁ゛!!?」

やばい。切れてる。悟ったたしぎがそれ以上話しかけることはなかった。再び視線を1階に戻す。

「まじで!? もしかして、本命!?」
「え、あぁーー…………内緒です」
「いやいや内緒って……じゃあ本命になるように襲ってもいい?」
「え、いや、それはパワハラですよ。ちょっ、ちょっとクザンさん!」

軽く肩を抱き寄せるクザンをなまえはうまくかわす。逃すものかとからみ続けるクザンと楽しそうに笑うなまえ。その様子を見たスモーカーの額にどんどん皺が寄っていった。そろそろ離れた方がいいかもしれないと感じたたしぎがその場を離れようとしたとき、たしぎぃッ!! とスモーカーが怒鳴った。

「は、はい!」
「青雉に書類渡しとけ」

たしぎは乱暴に投げられた分厚い書類を受け取ると、分かりましたと逃げるようにして1階に降りた。

「あ! 大佐~~!!」

スモーカーの怒鳴り声で大佐の存在を知ったなまえが2階へ向かってへらへらと手を振り、それを見たスモーカーがチッと舌打ちをする。

「まったく、隙がないなぁ~」

その後すぐに「お願いします……!」とたしぎに分厚い書類の束を差し出されたたクザン。「まったく、隙がないなぁ~」と、スモーカーとなまえの様子を横目に流し見て呟いた。その退場は半ば強引にたしぎに押されながらとなった。

クザンとたしぎが部屋を出たのを見届けたあと、スモーカーはコートを翻し、1階への階段を降りていく。

「大佐?」

1階に着くと、先ほどまでにまにまと笑っていたなまえの表情が曇っていた。なんでそんなに機嫌が悪いのですか? と言いたげななまえの表情を見たスモーカーも表情を曇らせ視線を逸らす。スモーカーはお前のせいだよと言って八つ当たりしたい衝動に駆られたが、口に挟んでいた葉巻の煙を吸って吐くことでなんとか感情を制御した。

「…………」

それでもイライラは完全に取れないらしい。スモーカーは仁王立ちしたまま無言でなまえを見つめ続けた。そんな大佐に戸惑いつつもなまえは自身の鞄を探ってお目当てのものを探し当てると彼の前に差し出した。

「大佐! これ、プレゼントです」

えへへと笑うその笑顔はスモーカーの大好きな笑顔。

「気にいらねぇ……」
「え?」

大股で数歩歩いたスモーカーがあっという間に二人の距離を詰めてなまえの顎に手を添える。なまえが瞬く暇もないうちにスモーカーの顔が目の前にあった。

「俺以外に見せるんじゃねぇよ。なまえは俺のだろ?」

今までにないくらい低い声を出して囁くように甘えるように彼はそう言った。

「なぁ…………なまえ」

手袋をはめた彼の手が頬を這う。もう片方の手は腰に伸びてグッと体を拘束した。なまえは言葉が出なかった。彼のあまりの勢いに押されて、その甘い囁きに惚けてしまって、言葉が喉を通らない。ごくり――唾を飲み込んだ。

彼の唇がなまえの唇に重なる。少しささくれている彼の唇を感じた。それもすぐに互いの唾液でしっとりと濡れて、息継ぎの度にいやらしい音が鳴る。それすらもなまえの頭を溶かしていった。

「っ、…………ん」

スモーカーが目を開くと、目を閉じて必死にその口付けに答えようとするなまえの姿が目に映る。

「んっ…………」

息苦しそうに眉を寄せて、それでもなまえは答えようと必死だった。…………いいのか。そんな顔をして。…………俺は、逃がさねェぞ。腰元に回るスモーカーの手に力が入る。

「なまえ、お前エロいな……」
「んん…………あ、いや…………あのっ、これは…………!!!」

息を上げながらなまえが抗議すると、今更だな、とスモーカーが小さく笑う。

「なまえのキスしてる顔、すげェ燃える」
「…………はい?」

なまえがこてんと首を傾げるとスモーカーはにやりと口元を吊り上げて、なまえの体をしっかりと抱きかかえた。

「えっ、ちょ……!!」
「行くぞ」
「ど、どこにですか……?」
「さぁな」
「ちょっとお時間頂くとかそういうのは……」
「は? 今ここでやって「……ちょ!! 誰か!! 誰か!! 助けてぇ~~~!!!!」」

今更俺から逃げられると思うなよ、なまえ。

:

(Plan:Valentine)
140214 End.
150216 修正
170129再修正

Afterword

この後、スモーカーにめちゃくちゃにされて愛されればいいよ。もともとはこんなにエロくなかったのに再修正かけたらなんかR18になりかけてしまった。……なんだろう。こういうスモーカーを見たかったのかもしれない…………(^^;;

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