愛すればするほど

かかえる・かがやかす・かがやく

 ― SECTION 2 < 鷹と思い出 > ―  「用は済んだか」「あぁ」ピシャリと扉を閉めた鷹の目がゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。壁に預けていた体を浮かし、相対するように体を向けた。「こ…

おぼしめす・おぼれる・おもう

その夜、夢を見た。今日行った市場でミホークと出会う夢。誰かに追いかけられて走って逃げていた私は曲がり角でうまく曲がることができずにころんでしまう。両手で抱えていた果物が周囲に散らばる。そのうちの一つが、ある剣士の黒いブーツにあたった。鮮やか…

おいかける・おくる・おちつく

「出かけるの?」「あぁ、そろそろ食料が切れる」「うん、分かった」すぐ戻ると言って大きな扉から出ていく彼の背中を見送る。だんだん遠くへ行ってしまう背中を見続けることができなかった。はっきりと離れていくことを目で実感したくなかったんだと思う。ダ…

うたう・えがく・えみこぼれる

当たり前だった日常がいつの間にかなくなっていて、怖くて私は光を探した。だけど、どこにも差し込む光はなくて。私はただただ待つことしかできなかった。いつか、光が射し込むことを信じて小さな、小さな声で歌を歌った。「」その声に振り返る。どうやら目を…

いすわる・いなじむ・うずめる

ここは崖。散歩の果てについたのは四方の海がよく見える崖の上だった。そこに座り込んだ彼女はもう数時間、ここから動こうとしなかった。別に急ぐ必要がなかった俺は彼女の隣に居続けた。時たま彼女は顔を俯ける。そうしてしばらくした顔を上げて水平線を見つ…

あずける・あまえる・あゆむ

「、お前は古書が好きか?」「え、と……はい、とても好きです」まぁ知っていたがなと思いながら、一冊の本を前へ差し出す。「……これは?」受け取るべきかどうするべきか、と迷っている彼女に苦笑する。まだ距離が遠いようだ。早く受け取れと言わんばかりに…

あかめる・ あからむ・あがる

再会から数ヶ月が過ぎた。しかしまだ彼女に触れることができずにいた。タイミングは山ほどあった。……だが、どうしても手が出なかった。彼女を傷つけてしまうような気がして怖かった。「ミホーク、さん」彼女が珍しく俺の名を呼んだ。足を止める。久々のこと…

あいする ・ あいせっする ・ あう

 ― SECTION 1 < 鷹と再会 > ―  香るこの香りには代わりはいない。そして、かつてのものと変わりない。久々に会えた彼女は腕の中で号泣していた。あの日別れた時より、より細くなった腕。やつ…